TORJA × WELLNESS KIZUNA 気になる「乳がんについて」

最近、日本のメディアでよく目にする乳がんの話題。比較的年齢の若い芸能人が乳がんを患い治療を行っているというニュースがやはり気になる。そして、多くの女性がインターネットに向かい、自分は大丈夫か?と「乳がん 早期 検診」などというワードで検索するのである。
そうして検索に引っかかる記事の内容はこんなものが多い。「あなたの乳がんリスクをチェック」、「リスクを把握して対策を!」などリスク因子を紹介するものや、「がんの死亡率」、「がんの罹患数」などの様々な統計である。カナダ保健省のサイトを見ても、下記のようなことが書かれている。

●2014年のカナダにおける乳がんの罹患数は24,400、死亡数は5,000と予想される。
●全がんによる死亡数の内14%が乳がんである。
●生涯で9人に1人が乳がんを患い、30人に1人が乳がんで死亡する。

また、リスク因子として、年齢や家族歴、初経年齢、ホルモン補充療法や経口避妊薬服用の経験など、様々なリスクがあげられている。当てはまる項目が多ければ不安は倍増し、全く当てはまらない場合でも、もしや自分は統計外か・・・と安心することはできない。
オンタリオ州における乳がん検診(家族歴などからリスクが低いとされる場合)は50歳から74歳、2年に1度のマンモグラフィ検査と決められており、プライベートクリニックなどで自費で健康診断を行ったところで、リスク因子が特にない場合は30歳代女性が検診目的で乳腺・乳房の画像検査を希望しても断られることがほどんどである。でも、多くの女性はこう思う。統計は統計、私は私。年齢やその他のリスク因子に当てはまらなくても、○○さんはがんになったじゃない。私も心配・・・
そして、カナダに長期で滞在・居住している人は、日本に帰国の際にレディースドックなどの人間ドックを受けよう、という流れになる。しかし、中には確立されていない検診手段を売りにしているクリニックもあるので気を付けたいところだ。

医学の進歩は臨床データを基に発展してきた。各国の検診規定も統計を基に様々な基準が決められている。各種検診は、危険因子の有無を確かめる健康診断と違い、特定の病気を早期に発見し治療することで、死亡率を下げることを目的としている。乳がんは発見の遅れ、ステージ(病期)が進行するにつれて生存率が低下するがん。その為、定期的な画像検診とセルフチェックが有効とされている。セルフチェックと言っても、自分の視触診スキルを信じている一般の女性は少なく、多くの女性が頻繁に検査を行う必要があると感じているのではないだろうか?

実際にマンモグラフィ検査の頻度を上げれば、より早期で乳がんを発見できるかもしれない。しかし、検診には偽陰性・偽陽性の可能性もあり、頻度を上げる=生存率を上げるということでもない。また、公費での検診は、病気の早期発見により病気の治療費を大幅に削減できる為、経済的な効果も期待しているもの。各検診はそのような様々な観点から有効であるように考慮し設計されており、若いうちから検診をたくさん受けていれば見つかるというものではない。

乳がんは2㎝以内のしこりでリンパ節への転移がないと思われるものがステージⅠ期。その場合又はそれ以前での治療の場合、10年生存率は90%以上だ。もちろん、自分は残りの10%かもと考えると不安になってしまう。

そこで自分のため、家族のために出来ることは、ファミリードクターに任せているので大丈夫、2年に1回検診しているので大丈夫ではなく、普段から自身の身体に敏感になり、症状や必要に応じて検査を受け、それに加えて各種検診・健康診断を実施、普段の生活パターンを見直し、適度の運動や健康的な食生活を送ることがまずは第一優先である。

しこりばかりを気にしていませんか?
他にも注意したいセルフチェックのポイント!

●しこりがないか
●えくぼのような凹みがないか
●乳房の変形がないか
●左右に大きな差がないか
●出血や分泌液がないか
●皮膚のただれやひきつれがないか

☆両腕を下げた姿勢で、乳房や乳頭をチェック
☆両腕を上げた姿勢で、様々な角度からチェック
☆乳頭からの分泌液をチェック(強くつままないこと)
☆シャワー時など石鹸を付けた状態で、乳房表面を渦を巻くようにしこりをチェック
☆わきの下のリンパ節の腫れをチェック

本記事はPrince Margaret Cancer Centreの名取亜希奈先生に監修頂きました。



wellness-kizuna160701鶴 慶子さん
(RN-日本、RPN-オンタリオ州)
日本で8年看護師経験を積んだ後、渡加。ジョージブラウンカレッジナーシングコースを卒業後、オンタリオ州看護師免許を取得。現在はトロント市内の医療機関で看護師として勤務する傍ら、日系コミュニティー向けの医療サポート会社WELLNESS KIZUNAのクリニカルディレクターとして活躍中。