カナダ・トロントで美の仕事にのめり込む二人の女性起業家『Chons Naturals』オーナー 松尾千佳さん × 『Nail Salon From M -tokyo-』オーナー 木澤マリカさん 対談|Two of Us 二人の関係 | 特集「 カナダで美を操る」

初対面ながら共通点が多かった二人がそれぞれ語った「美を仕事にする」ということ。


アロマセラピーと自然派化粧品のブランド『Chons Naturals』のオーナー松尾千佳さんと、ネイルサロン『Nail Salon From M -tokyo-』のオーナー木澤マリカさん。日本では松尾さんは花王、木澤さんはカネボウ化粧品という同業界に新卒入社をし、さらに二人とも2年で大企業を飛び出したという共通点を持つ。その後、ここトロントで松尾さんは自然派化粧品、木澤さんは日本製とジャパン・クオリティにこだわったネイルアートという美容ビジネスを立ち上げた二人に、初対面ながら起業家として、また美の職人として、そして女性としての生き方について語り合ってもらった。

美容業界を志したきっかけ

松尾:自分の肌が弱かったということもあり、肌や美に対するメカニズムに強い関心があり、中学校時代の作文には、いつか自分で化粧品を開発する仕事をすると書いてあったくらいです。

木澤:高校生の時に初めてネイルをしてもらった時に、ネイルでこんなにテンションが上がるのかと衝撃を受けたのがきっかけです。さらに大学時代にニューヨークへネイルを学びに留学をした際に、日本のネイル文化を海外で広めることが自分の使命だと気づきました。

二人とも就職した会社を2年で辞めることに…

松尾:就職してからマーケティングやリサーチ関連の業務についたのですが、会社の中では自分が歯車の一人に過ぎないことや、社会人として、強いて言えば女性として自分がどのようになっていきたいかを考えたとき、私の場合は、自然派化粧品という、自分が本当に追求していきたいものを突き詰めるほうが充実感を得られると思ったからです。ちょうどその頃国際アロマセラピスト連盟(IFA)の会長がトロントで講座を開くということをリサーチし、彼女のもとで本格的なアロマテラピーを学ぶために、退職に踏み切りました。

木澤:すごく分かります。私は、カネボウ化粧品にはネイル事業があり且つニューヨーク支社もあったので、夢であった海外で日本のネイル文化広める事が叶えられると思い入社を決めました。ただとにかく数字重視という社内の雰囲気が、もともと自分のやりたいこととは違うと感じていたのですが、ニューヨーク支社に行きたいという目標があったので頑張りました。しかし、ある日、上司からニューヨークに行ってもいいけど、ネイルは無理だよと…ニューヨークに行ければなんでもいいんでしょ…という風に聞こえた時に、辞めようと。

周囲の反応は?

松尾:意外に誰からも反対されませんでした。親も、私が海外で無事で過ごせるならそれでいいって…笑。

木澤:両親に対して申し訳ない気持ちはありましたが、次にやる事を決めていたので、大きな反対はありませんでした。

ちゃんとした次の目標があったからこそ、みんなが応援してくれる

その後、木澤さんは東京の有名ネイルサロンで腕を磨き、トロントに。

木澤:アメリカですぐに就労ビザを取るのが難しかったので、日本で経験を積んでアーティストビザを申請することを考えました。そのためにテレビや雑誌の仕事も多く抱えていたネイルサロンで働き、経験を積みました。でも結局アーティストビザもなかなか難しいとなって、ニューヨークに近いトロントで働こうと、ワーホリで来ました。

ニューヨークのネイルは世界の先端?

木澤:実はそうでもないです。ネイルの発祥はアメリカなので、ニューヨークでネイルを学びたかったのですが、留学当時は、初日から自分がしていたネイルアートがみんなからすごく注目されて…笑。ネイルアートは先端やトレンドを作り出しているのは日本なのだなと気づきました。

松尾さんはトロント留学を決めて退社。講座終了後は?

松尾:クリニックやスパでアロ マセラピストとしての経験を積みながら、自分で化粧品を作る ことに関してリサーチをして、 実際に作ったものを少しずつ売り始めました。そして自分の商品に固定客がつき、売れ行きも伸びて多忙になったところで、化粧品開発と販売に絞ろうと思いました。その頃、

30歳の誕生日の時に私が一番欲しいものって何だろうと考えた

のです。その時、 「会社が欲しい !」と。それで起業を決意しました。

松尾さんのオフィスの地下室にあるラボ

女性だからこそ…出産や育児と向き合える自分に一番合った起業スタイルを考えた

好きなこと・やりたいことへの追求心は二人ともすごく良く似ているのですが、どのような姿勢でビジネスに取り組んで来た?

松尾:起業した時にはすでに結婚をしていて、当時は将来のこと、出産・育児のことを考えた時にいかに事業の継続をしていくかを一番に考えました。そこで自分のお店は持たずに商品をサロン等に販売したり、オンライン販売を展開したりしました。はじめはローリスクで長期的に事業を続けることに重点を置いていました。ですが今では子どもも大きくなってきたので、ちょっとリスクを負ってでも何かにチャレンジしたいと考えています。マリカさんはどうしてご自身の店舗を持つ決心がついたんですか?

800色以上の日本のジェルカラーと2000種類以上のネイルパーツ

木澤:ネイルサロンは店舗がない限りできないので。きちんとした店舗を持って、衛生環境も整えて正式にライセンスのもとでビジネスをすることが私のやりたかったことでした。そうであれば、堂々と日本のネイル文化を主張できるじゃないですか。それに自分の今後のキャリアプランを考えると、自分一人では出来ることに限界があると思ったので、店舗を持って人を雇って、例えば子どもができたときなど、自分がいなくても日本のネイルを発信し続けられる場所を作っておきたかったのです。

松尾さんが開発したナチュラルにこだわった化粧品の数々

アロマセラピーの理論を化粧品開発に取り入れる

松尾:アロマセラピーは植物の芳香成分を凝縮したエッセンスを使うのですが、様々な効能があるエッセンスをうまく活用することで、自分が求めている製品ができるのです。私の製品はナチュラルにこだわっており、突き詰めれば昔からある自然の良いものを活用したアロマセラピーでもあるのです。

多種多様の植物成分がある中で特定の成分がブームになったりするきっかけはどのようなことに起因している?

松尾:最近だとArgan Oilが流行ったと思うのですが、世界各地で、昔から良いと言い伝えられているような植物の成分などは無数にあると思います。そういった植物の成分について医学博士などの社会的地位の高い方が効果を検証し論文にまとめて発表したりすると、化粧品会社や医薬品会社がその成分を使った商品を開発しようと動き、それをきっかけにブームが起きるということが多々あると思います。

海外に広めたい、日本のネイルのクオリティと素晴らしさ

木澤:日本のネイルは本当に一番だと信じています。ネイル好きな人は国籍問わず日本のネイルが好きなんです。だから私はあえてジャパン・クオリティのネイルを強みとしています。ご存知のようにトロントにもネイルサロンはありますが、日々のケアのためにぱっと終わらせるサロンが主流です。しかし、日本のネイルサロンは、一人一人のために時間をかけてアートのようなネイルを仕上げる、顧客にとってもその場所が充実感ある特別な空間になるところになります。私はそんなネイルサロンを世界に広めていきたいのです。

やりたいことを仕事にしているお二人ですが、ズバリ売り上げにもこだわる?

松尾:数字にとらわれすぎると良いものはできないと思っています。とりあえず、とにかくいい成分を探し、製品化することに集中します。まったく妥協しないものに全精力をかけて作ると、それを支持してくれる人が現れて、結果的にビジネスもうまくいくのです。まずは、良いものをつくることだけに専念するという、職人精神ですね。

木澤:私も全く同意です。せっかく自分で始めたビジネスなのでこだわりを持って、コストも余計にかかりますが、日本のジェルは高くて品質が良いのは紛れもない事実です。

モノも技術も良いものを求めてくれる人に、自分たちが持っている最高のものを提供したい

ですね。

先ずは良いものをつくることだけに専念するという、職人魂

日本のネイルアートのサンプル

木澤さんは年2回、松尾さんも最近日本に出張に行かれていますが、何を学びに?

木澤:日本には半年に一回大きなネイルエキスポがあって、メーカーやネイリストがいっせいに集まり、新しい技術やトレンドを見つけることができます。それをいかにゲットしてカナダに広められるかが勝負ですね。

松尾:私は、国際化粧品展という化粧品業界で仕事をしている業界向けイベントで、新しい成分や新しい商品、ボトルデザインを勉強しに行きました。日本ではお国柄というかボトルの性能がとても良いことに気づかされました。押したら最後の一滴まで出るとか、細かい気配りが本当にすごいです。

今年1月に日本で開催された国際化粧品展に参加

昨年11月にはWhole Life Expoへ出展

カナダでビジネスを始めてみて思うこと

木澤:日本にも良さはあるけど、

カナダではユニークでいられるし、あえて日本人というのが強み

になります。日本では普通のものでも、カナダではあえてそういうのが欲しいというお客さんも多いので、お客さまの反応に毎日喜びを感じられています。

松尾:化粧品の法律が厳しい日本では、手作り化粧品の販売は 禁止されています。カナダにも法律はありますが比較的認可を取りやすく、断然やりやすいで す。ただ、何か起きた時は開発者である自分の責任になります。

始めるのは簡単でも、リスクは実は大きい

のです。

昨今よく話題にあがる女性の社会進出についてどう思う?

木澤:カナダでは共働きが普通の感覚だから、仕事をやってる側からするとありがたいですね。自分が仕事をしていてもいいんだって思えるし、子育てでもデイケアなどのサポートシステムも充実していると思います。

松尾:日本でも会社内での女性の扱いは男性と同等になってきている風潮があると思います。ですが、家庭内では必ずしもそうではない気がします。外で対等に仕事をしていても、家に帰って家事育児をメインでするのは女性の場合が多いですよね。だから結果としては女性の負担は増えていると思う時もあります。ですので私は男性と対等に仕事をしようと頑張るより、うまく両立していけそうな仕事の仕方をしたいと思いました。

カナダは自分が仕事をしていてもいいんだって思える環境がある

起業歴こそ違えど、共通点が多い二人。何かお互いに聞きたいことは?

松尾:同じ美容業界でも私はサイエンティストで、マリカさんはアーティスト。マリカさんから見て美しい人ってどういう人なのかをお聞きしたいですね。

木澤:んー、やりたいことをやっていて、

自信を持って生き生きしている人はやっぱりきれい

だと思います。いつもそういう方のお話を聞きたいと思っていますね。松尾さんはどうですか?

松尾:なるほど。私は10代の頃は単に外見がきれいな子がきれいだと思っていましたけど、20代になるとファッションセンスが良かったり、自分をきれいに見せることができる人がきれいだと思うようになりました。そして

今では自己管理ができる人がきれい

だと思います。

 規則正しい生 活とかエクササ イズとか、栄養バランスが取れているかどうかが肌や体形に出ますよね。マリカさんも言って いたように、自信を持っていて心にゆとりがある人はそれが表情に出るし、目が輝いています。今、私の周囲には 、本当にきれいで輝いている50代、60の方がたくさんいます。そういう方々を見ていると、私も歳を重ねるに連れて輝きを増せるような生き方をしたいと感じます。

木澤:松尾さんはビジネスをやめたいと思ったことはないのですか?

松尾:それが一度もないんですね。

木澤:すごいですね。心が折れるときとかもないのですか?

松尾:忙しすぎて睡眠時間が少なくなると、肌がボロボロになったりと美容の世界にいるのにって自己嫌悪に陥りますね。日々過ごす中で優先順位をつけなきゃいけないけど仕事はやめたくないです。

女性として、起業家としての今後

木澤:サロンはずっと続けていきたいです。日本のネイルアートといえばあそこだよね、という不動の店にしたいです。私がいなくてもサロンが回る状態を作って、仕事と家庭と両立したいと考えています。仕事をしてる自分が好きなので、仕事ありきのカナダでのライフスタイルですね。

松尾:先ほども言ったように内面のケアができて輝いている人になりたいです。そのために自己管理をして、子どもとの有意義な時間を作って、うまくバランスがとれた生活を目指したいです。仕事に関しては、10年前に起業して以来、着々と目標を達成してきているという手ごたえを感じています。次は質を上げながらも、増えてきている仕事量をこなすための工夫が必要だと思っています。

インタビューを終えて

木澤:松尾さんとご一緒できてすごく嬉しかったです。松尾さんはお子さんもいらっしゃる中でビジネスをされているので、私もそこをこれから経験したいですね。

松尾:やっぱりビジネスだけでなく、家庭や子育てなどとどう両立できるかが女性の頑張りどころですね。私は木澤さんとバックグラウンドだったり、志だったり、経緯が似ていると分かって、なんだか嬉しかったですし、ぜひ頑張って欲しいと思いました。