「震災遺構」を解体するか保存するか | 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第64回】

東日本大震災では多くの建物が地震や津波で被災しました。被災した建物の残りは、今でもそのままその場所にあるか、撤去されてきれいに無くなっているか、どちらかになります。

しかし、この建物、つまりは「震災遺構」をどう扱うか、それでもめる例も出てきています。

普通なら、取り壊し、となるのですが、状況によっては、「後世に震災の恐ろしさを伝える遺構」として残したらどうか、というものもあります。

その中の1つに、岩手県で地震と津波で大きな被害を受けた大槌町の旧役場庁舎があります。この庁舎では、震災当時の町長をはじめ、職員の方々40名が津波に襲われたことにより、庁舎内で亡くなりました。そういった関係から、この庁舎の解体に関しては、町を二分する議論になりました。

庁舎で亡くなった方々の遺族は、庁舎があり続けることで悲しみを毎日思い出さなければいけなく、大変つらい思いをしています。そういった事から、解体をしてほしい、と願う方々もいます。

また、別の考えでは、大きな被害を受けた大槌町の震災遺構として、後世に震災の恐ろしさを伝えるために保存するべきだ、という意見もあります。

私にはどちらの意見が正しいかを言う権利はありません。しかし、いつかは残すか、壊すかを決断しなければいけません。


現在の平野町長は、庁舎の解体を公約に選挙に臨み、当選をしました。選挙という民意では解体を選んだことになります。

しかし、選挙だけでこういった何十年も後に影響の出る問題を決めてしまうのも少し違うと思います。選挙で勝った、負けた、ではなく、こういった大切な問題は、もっと丁寧に扱ってほしいと思います。

そしてたくさんの思いを受け止め、解体するか、保存するか、とことん町で議論をして、多数決とかではなく、だれもが議論の果てに理解してどちらかに決められるような、徹底した話し合いを持ってほしいです。

この問題に関して、明るいニュースもありました。なんと、大槌高校の生徒が、堂々と自らの意見を町長に述べた事です。

今の時代を生きる人たちの意見もとても大切ですが、大槌の未来を担う若手の意見も取り入れてほしい。未来の大槌を担っていく若者はどのように考えているのか。今も未来も全て含めた総合的な議論の結果、どうなるかはわかりませんが、私は同じ岩手県人として、そういった議論の果ての結果をとても尊重したいと思います。

勇気をもって行動した素晴らしい高校生のいる町、大槌。私は誇りに思います。


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本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授

久慈 浩介