被災した大槌町旧庁舎 | 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第71回】


 東日本大震災で岩手県でも特に大きな被害を受けた大槌町。当時の町長はじめ、多くの町職員が犠牲になった建物が旧大槌庁舎です。
 その旧庁舎に関して、今大槌町では町を二分する議論が続いています。それは、この旧庁舎を震災遺構として残すか、取り壊すかです。

 震災後の選挙で当選した現在の大槌町長は、この旧庁舎を「取り壊す」という選挙公約で当選しました。しかし、当選後、まだ震災から日が浅かったこともあり、取り壊しを延期してきました。その間、大槌町では旧庁舎を取り壊すか、震災遺構として残すか議論がされてきました。

 震災遺構として残したい方々は、未来に向けて東日本大震災の大災害を伝え、津波から避難する事の重要性を伝え続けられるという考えがあります。その反面、取り壊したい方々は、旧庁舎で亡くなったご遺族や関係者の中には、悲劇の現場をずっと見ながら生活するのはとてもつらい、という考えがあります。

被災した大槌町旧庁舎


 私は大槌町民ではありませんので、どちらが正しいとは言えません。本当にこの問題は難しいですし、私は時間をかけて、町民理解をしっかりと深めてからどちらかの方向性を出すのがいいのかと思っています。
 しかし、2018年3月になり、大槌町議会は旧庁舎の解体予算を可決しました。議長を除く議員12名の採決で、可否同数となり、議長採決で決しました。可否同数ということは、まだ町民の理解は進んでいないのではないかと私は思います。それなのに、多数決という選択で大事な問題を決めてしまって、後世にしこりが残らないか心配です。

 さらに、可否同数なら、議長判断で採決を延期する事も出来たのではないかと思っています。まだ議論する時間が足りないからこのような結果になるのであって、もう少し時間をかけてしっかりと議論しても良かったように思えます。

 確かに、悲劇の現場を見て暮らす事に悲しみ感じる人に寄り添うべきだ、という町長のご意見はもっともだと思いますし、間違っていません。でも保存して残そう、という町民の考えにも寄り添う時間はもう少しあっても良かったのかと思います。

 町は旧庁舎跡地を災害時に車を乗り捨てる防災空地とする方針だそうです。町長は保存派の皆さんのご意見も取り入れて進めていくとコメントしていますが、ぜひそのようにしていただきたいと思います。

 おそらくこの震災遺構の取り扱いについては、大槌町だけではなく津波被害にあった場所では多かれ少なかれ議論になっているのだと思います。

 残して未来に遺産として渡すのか、今の苦しみからの解放か・・・
 どちらも間違っていない分だけ、判断が難しいです。出来る事ならどの町も十分な議論を重ねて判断をしてほしいと願います。


オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc

現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。

南部美人 / http://www.nanbubijin.co.jp



本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授

久慈 浩介