福島の「奥の松」がチャンピオン・サケを受賞 | 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第77回】

 東北もすっかりと紅葉に染まり、とてもきれいな秋を迎えています。秋になると、岩手県の沿岸部では漁業が盛んになり、サンマがたくさんとれます。しかし、このサンマ、東日本大震災以降、数がとても少なくなったそうです。もちろん地球温暖化などの影響もあるのでしょうが、津波に流された瓦礫などが潮の流れを変えたという話もあります。

 また、鮭も岩手のとても大事な漁業の1つなのですが、こちらはふ化をする施設が震災で流されてしまい、数年間鮭の稚魚を放流できなかった影響もあり、川に戻ってくる鮭の数も減少しています。このように東日本大震災の影響を最も色濃く、そして大きく受けているのはまさに津波被害のあった沿岸部です。津波被害だけでも大変なのに、その後数年にわたって、生業の再生が難しく、特に海の資源はすぐには回復しないため、待たなければいけません。

 待っているだけならいいのですが、その間に産地間競争にさらされ、お客さんを他の地域や国に奪われ、生業はどんどん復興するのが難しくなります。これも商売だから仕方ないのかもしれませんが、自然相手の商売は何か1つ歯車が狂うと大きな影響を受けてしまいますが、沿岸部の皆さんは元気です。つらいことも苦しいことも表に出さずに、今もおいしいサンマや魚介類をとりつづけ、私たちの食卓に運んでくれます。見えない努力に感謝です。

 東日本大震災から7年以上も経過して、まだこのように苦しんでいる人がいます。岩手以上に福島は今でも原発の影響で家に帰れない人もたくさんいます。さらに、原発の影響で衰退していく産業も多いのです。


 そして、福島も負けていません。お酒の世界では福島は今まさに最盛期。日本のナショナルコンテストである全国新酒鑑評会において、8年連続で金賞受賞率日本一を受賞。さらには、県をあげて、海外での販路拡大も力を入れており、海外では福島の酒は安全、というイメージを植え付けるのに成功しています。

 福島県の酒米の栽培も増え、福島は日本酒が東日本大震災以降引っ張る県になりました。世界最大のワインコンテストで、日本酒の世界一を決める「インターナショナルワインチャレンジ日本酒部門」においても2018年は福島の「奥の松」がチャンピオン・サケを受賞して、2015年の「会津ほまれ」に続き、2つ目の世界一が生まれました。

 日本酒は人々の心を癒し、地域の誇りを前面に出す産業です。これからも東日本大震災のマイナスに負けないように頑張っていきたいと思います。


オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc

現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。

南部美人 / http://www.nanbubijin.co.jp



本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授

久慈 浩介