紀行家 石原牧子の思い切って『旅』 #11 アルバータ州 恐竜公園

第11回 
世界自然遺産 州立恐竜公園(Dinosaur Provincial Park)

恐竜の眠る地にふさわしく、州立恐竜公園に住所はない。カルガリーを出て延々と続くトウモロコシ畑や菜種畑を東へ走ることおよそ2時間。途中建物は見当たらない。あるのはカマキリ型恐竜のような大きな放水機。ギラギラと照りつける太陽のもとでシュルシュルと音を発しながら平坦な黄緑色の大農作地に水を吐き散らしていた。

世界最大級の恐竜化石層を誇るこの公園に行くにはBrooksから北へ11㎞、そこから東へPatricia方向に14㎞などと情報に従って小さな集落の名前を頼りに行くほかない。GPSでは緯度50・75度、経度マイナス111・52度なのだそうだ。住所の無い目的地は初めてだ。映画「ジユラシックパーク」にでてきたヴェロキラプトルみたいな小振りの恐竜が飛び出て車の前を横切りそうな気配。到着までに一軒のガソリンスタンドがある。ここで給油しておかないとアトがない。

恐竜園内のハイキングトレイル

浸食のあと。バッドランド特有の砂と泥の造形


1979年に世界自然遺産に登録されてはいるが目立つ看板もなく比較的地味な入口。が、突如として現れる抹茶色の異様なハゲ山や渓谷。これが恐竜公園だ。この広大な敷地のなかに白亜紀の全ての恐竜の化石と言ってもいい程多くの化石が見つかったという。人類以前の大昔、溶けた氷河が大洪水を起こし陸が繰り返し浸食されるうちに7500万年前の地層がむき出しになったのがここ。おかげで私達未来人は今日、当時の生物の化石を発掘して気の遠くなるような地球の歴史を探ることができるのだ。

私は恐竜の親子が濁流に流されて生き別れになってしまう、あるアニメ映画の場面を思い出していた。そんな場面が事実であることを証明する恐竜公園。トリケラトプスの前身といわれる化石もここで発掘され、アルバータにちなんでアルバータサウルスと名づけられた。それも2000年代と比較的新しい。

犬もあるけば棒にあたる、とまでは行かなくてもそれくらいここで化石の骨の一つや二つ見つけ易いそうだ。ただし保護地区なので勝手に発掘はできない。恐竜マニアに大人気の化石探し、恐竜サファリ、バスツアー等々有料プログラムは豊富に有る。5月下旬から10月中旬までの実施で予約はネットで早めにした方がいい。
https://atms.alberta.ca/dpp/default.aspx

左:人間の匂いがする…恐竜公園でお出迎えか? 右:カマキリ型放水機。水まきはこれに限るアルバータの畑


無料ハイキングトレイルは300mから1.5㎞まであるほか、車で巡れる3.2㎞のコースがある。木陰のない夏の炎天下のハイキングは要注意。十分な身支度と水分の補給、虫除けなしには絶対に歩けない。私達は車の砂利道コースをゆっくり走行。時々下りてミニハイキングを楽しんだ。発掘現場のサンプルとして保護された小さな建物がいくつかあり、化石が発掘当時のまま横たわっているのがガラス越しに観察できる。周囲はバッドランド(Badland)といわれ、極度の浸食によってできた砂と泥の渓谷。今は多少の緑の生殖が見られるが1800年代に初めて発掘が開始されたときは恐らく茶色一色の不気味な様相をなしていたに違いない。

州立恐竜公園付近に宿泊施設はないが、園内にキャンプ場がありレストラン、トイレ、キャンプに必要な簡単な食料品を売っている店がある。公園から約2時間程北にはロイヤル・テイレル古生物博物館(Royal Tyrrell Museum of Palaeontology)があるが、園内にも博物館の分室を兼ねたビジターセンターがある。肉食の小型ドロメオザウルスが集団で草食の大型ランベオザウルスを襲う復元が骨でありながら生々しい。

ドロメオザウルスの攻撃を受けるランペオザウルス

最高の保存状態で発掘された化石


発掘された化石は ロイヤル・テイレル古生物博物館に運ばれクリーニングされてから展示される。2011年にミレニアム鉱の作業員が偶然発見したといわれるミイラ化した一億一千万年前の恐竜ノドザウルス科の化石もここで6年という歳月をかけたクリーニングのあと、2017年に世界に発表され人々を驚かせた。博物館には多くの実物化石の展示と体験プログラムがあり、近隣のドラムヘラー(Drumheller)村は宿泊施設もある観光地だ。恐竜公園とロイヤル・テイレル博物館は距離的に離れているので一日では両方見学しきれない。プランは慎重に。



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石原牧子

オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daugher (CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”は全国巡回上映中。PPOC正会員、日本FP協会会員。
www.nagatsurahomewithoutland.com

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