TORJA読者旅行記#41

#041 ボルガ河畔の10日間

今月のレポーター Hideo Maruki さん

readers-traveller-41-01

1 歩行者天国 2 クルシャリーフ・モスク 3 イワン雷帝(アイバン・ザ・テリブル) 4 バルチック(ロシアの生ビール)

readers-traveller-41-02

5 クレムリン 6 クレムリン内庭園 7 タタール人居住地区 8 ブラゴヴェシチェーンスキー聖堂 9 選手村

水泳世界選手権大会とマスターズ水泳選手権大会が史上初めて同時開催されるタタールスタンの首都カザニに到着したのは午前3時、空港には写真撮影禁止の掲示が至る所にあるにも拘らず、デジカメやスマホを持ち出して忠告や逮捕されてる人々の列を尻目に、僕達選手団は入国通関検査免除のゲートから選手村行きのバスに案内された。コンシュラーフィー無料のヒューマニタリアンビザの為、競技会開催中の滞在のみ許可され、最終日の翌日までしかロシアには居れない。

選手村の宿舎に入居出来たのは夜明け前で、チェックインを済ませ宿泊費に含まれてる6時半からの朝食食堂のある道路の向かいにあるテニスアカデミーに入った。マリア・シャナトバ等世界有数のプレーヤーを輩出してる国策テニス学校は豪華な設備で、さすがにスポーツキャピタル・オブ・ロシアだけある。

初日にレースの無い僕は、かるく2,000メートルほどウオームアップしてトロントの同じ水泳クラブの同僚と市内観光バスに乗った。ボルガ河畔の美しいカザニの街は、まるでお花畑の様な都会で塵1つなく清潔な印象を受けた。東京も1964年のオリンピックの頃から塵だらけだった街が見違えるようになったから、世界選手権誘致に成功したので街の浄化を図ったのかも知れない。モスク(回教寺院)とロシア正教の教会の多い街並には、レーニンやトルストイも在学したカザニ大学のキャンパスに銅像が建っていた、偶然にも二人共に卒業出来ず中退したそうです。

観光バスは先ずクレムリンで停まり、1時間の散策にバスガイドが案内してくれた。大統領官邸や市庁舎もこの辺りにあり、農業省の偉容な建築物が他を圧してるのは農業国であるからか。13世紀にはモンゴルの来襲もあり、16世紀にはロシアのイワン雷帝(アイバン・ザ・テリブル)の支配下に入り革命後はソ連領になったりしたが原住民はタタール族で回教国であり、西暦でなくモスレムカレンダーを使用してる。

選手村の警備は厳重で多数の出入り口周辺にはガードマンの他に警官や兵隊も整列して24時間の警護体制で治安には問題なかったが、年齢別マスターズ競技の前に開催されてたオリンピック選手達の出場する世界選手権大会最終日を観た帰りの選手村行きバス乗り場に入れず、香港から来てたイギリス人の遠泳選手と困り果ててたら、コンパニオンらしき美人が門衛にかけあって事なきを得た。

彼も僕も選手証を首にぶら下げてるのだから市内の交通機関は無料で、地下鉄で帰れば良かったのだ。2日目に銅メダルを、3日目には銀メダルを受賞した僕は4日目のリレーには出場予定が無いので、ブラジル代表選手の宝田さんと街の散策に出掛けた。

マスターズ選手は選手村でも従業員と同じ食堂で一般の家庭料理で味もなかなか良くて安価なのが何より、3ドルか4ドル相当でボルシチスープにビタミンサラダ(わかめ)に肉料理と魚料理にキャベツ料理で満腹になる。オリンピック選手の多い世界選手権出場選手は選手村本館の豪勢なレストランで無料でたらふく高級料理を食べており、差をつけられた。あの連中にはアディダスやコカコーラやヤクルト等のスポンサーがついてるから当然か。勿論旅費もスポンサー持ちか各国の水連や後援会が払ってる。マスターズの選手達も元オリンピック選手の同窓会みたいなもので、昔はただ乗りしてたやつが多い。

readers-traveller-41-03

表彰台の僕(世界第2位)

5日目のレースでは泳法違反で失格したので、宝田さんの力泳ぶりをスマホでビデオに撮りユーチューブにした。お互い、翌日の最終日は出場種目が無いので夜の街へと繰り出した。オペラハウスの当たりには夜の街の趣があって着飾った老若男女が右往左往してた。先ずは酒場に入ってテーブル席に座っても誰も注文を取りに来ないしメニューを見てもロシア語はチンプンカンプン。勿論、言葉は通じない。仕方なく、僕はカウンターに行ってバーテンダーにウオッカの便を指差し、ようやくロシア入国1週間たって待望のウオッカにありつけた。駆けつけ3杯、五臓六腑に染み渡る美味い本場のウオッカ、1杯たったの80セント相当の値段。キャビアも食べたかったけれど高過ぎて手が出せなかった。選手村のスーパーマーケットで瓶詰のキャビアを売ってたけれど、選手村は禁酒禁煙、麻薬も厳禁なのでしらふでキャビアでもなかろうと辛抱し、帰りの空港内ラウンジでウオッカもキャビアも堪能した。

日本へ行けば真っ先に歌声喫茶、東京では「ともしび」、大阪では「ピープルズ」に行く僕は、ロシア民謡の本場で唄いたく、歌声喫茶を探したが見つからず言葉が通じないのであきらめ、ドミノと言う名のカラオケ店に入った。高級ナイトクラブの様な玄関でバウンスマンらしき男が数人でにらんでおり僕達のトレパントレシャツ姿の服装を値踏みしてる様子。支配人らしき男が出て来てゴーサインが出てボックス席に案内された。ここでもウオッカは1ドル程度でがぶ飲みしてもおつりが来るぐらい安い。カラオケは1曲5ドル相当だから割高、その上ロシア語の画面は読めないので新宿ともしびの歌集を見ながらメロデーに会わせて唄った。カチューシャは難なく唄えたが、ステンカラージンはメロデーも調子も日本で唄いなれた曲とはずれており立ち往生してもた。まぁ、それでもボルガ河の畔でボルガの舟歌を歌い、本場のウオッカに酔いしれたのでロシアに来た甲斐があったとしよう。

石油価格の暴落でロシアの通貨の対ドル為替レートが下落し、120ドルで予約してた宿泊費が朝食込みで49ドルにまで下がってたのも自費で競技会に参加する身には有り難かった。80歳を超えても未だ現役の水泳選手の僕を同窓、同僚、友人、知人達は、凄いと申しますが、もうこの歳になれば、やけくそで泳いでる様なもんで、これでもやらんと酒浸りになってポテトカウチになるのがわかってるので、家内も金のかかる遠征を大目に見てくれるのが助かります。内助の功とは良く云ったものです。



トラベルレポーター募集中!
トロントに在住の方でカナダ国内・国外問わず旅行に行かれた方、TORJAでレポートを書きませんか?ご応募、お問い合わせはこちらから → shiohara@torja.ca