遠藤 翼選手インタビュー

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年1月に開催されたメジャーリーグサッカー(MLS)のスーパードラフトで、トロントFC から1位指名されたメリーランド大学所属の日本人MF遠藤翼選手。日本人がMLSのドラフトで指名されるのは2007年にコロラド・ラピッズに指名されたDF木村光佑選手以来で、1位指名は日本人初の快挙だ。

JFAアカデミー福島に第一期生として在籍していた遠藤選手は、U-12、U-13、U-14、U-15、U-17と世代別の日本代表を経験しており、JFAアカデミー卒業後はアメリカ・メリーランド大学へ進学。メリーランド大学では1年次からレギュラーをつかみ取り、2年次の時には全米選手権準優勝に大きく貢献した。トップ下や右サイドでプレーし、4年次には背番号10を付けるほどの実力を身につけ、2015年のビッグ・テン・カンファレンス(アメリカの大学スポーツのカンファレンスの1つ)のサッカー競技において、攻撃的な選手のMVPに選ばれている。4年間での記録は85試合出場、12得点16アシストだ。

メリーランド大学は研究成果や論文の質に評価の重点が置かれる世界大学学術ランキングでも上位に入るアメリカの名門大学でサッカーやアメリカンフットボールなどスポーツでも強豪として有名だ。そんなアメリカ留学を経て、トロントFC入りを果たした遠藤選手。TORJA編集部は1月25日に行われた公開練習に参加し、日本人初となるドラフト1位指名を受けた時の感想やメリーランド大学で学んだこと、MSLについてなど遠藤選手にこれからの展望を伺った。

■ ドラフト1位指名おめでとうございます。その時の感想とスタートラインに立たれた意気込みをお願いします。

一巡目で指名されるとは思っていなかったので、とても驚きましたが選んでくれたトロントFCに感謝しています。ただ、スタートラインに立ったという感じはまだあまりしていません。経験のある選手がたくさんいるので、オンとオフを切り替えながらいろいろなことを学んでいくつもりです。またしっかりと自己主張をしなければいけないなと思っています。

■ まず始めにアメリカ留学のきっかけはなんでしたか?

僕がメリーランド大学への留学を決めたきっかけは6年間在籍したJFAアカデミーの海外研修プログラムです。それに参加したのは16歳の時で、フランスやスペイン、ドイツ、オランダなどの選択肢もあったのですが、英語が喋れるようになりたかったのでアメリカを選びました。そこでメリーランド大学のキャンプに参加し、Sasho Cirovski監督に気に入られ、強く招待されたこともあり入学を決めました。

■ メリーランド大学でやってきて、MLSで通用する自分の強みは何だと思いますか?また、日本で学んだこととの違いはありますか?

持久力はチームの中でも負けないものを持っていると思うので、試合に生かしていきたいです。アカデミーで学んだ技術や判断の早さ、常に意識するよう求められていたポジション取りなど、日本で培ってきたものは間違っていないと思います。ただ、メリーランドでは日本と異なり、縦に速く自ら積極的に仕掛ける米国のサッカースタイルへも順応することができました。4年間通して培った体力や1対1での仕掛け、シュート力は打開の局面で役に立つと思います。

 

■ 日本からアメリカに渡りサッカーをする上で、MLSのドラフトに関わることを目標にされていたのでしょうか、それとも日本に帰ることを意識されていたのでしょうか。

日本に帰ることは全く考えていなかったです。ただメリーランドに行くと決めた時はまだぼんやりとしたイメージしか持っていませんでした。だんだんとアメリカの環境に慣れてきた頃、チームメイトにもMLSの選手たちがいたこともあって、自分も北米でサッカーを続けていくという明確な目標を持てるようになりました。プロになるという目標を、アメリカに住んでより具体的に持つことが出来ました。

■ MLSを視野に入れる中で、トロントFCというチームをどういう風に見ていましたか?

大学4年生になってからトロントFCのことは見始めました。イタリア代表FWセバスティアン・ジョビンコや、アメリカ代表MFマイケル・ブラッドリー、同じくアメリカ代表FWジョジー・アルティドールがいたので見ていましたし、いいチームだとは聞いていました。

■ 昨年から特に様々な選手の活躍が目立ちますがMLSというリーグ自体はどうですか?

いろいろなスター選手がMLSにくる中で、こういう風に知名度も上がってきているので、レベルはどうかまだわかりませんが、自分としてはJリーグよりも、MLSの方が注目されてきていると思います。最近も強い選手がヨーロッパからきているようなので、そういう部分では日本と同様、MLSもレベルや注目度が上がってきているのだと思います。

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©Tommy Gilligan-USA TODAY Sports

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©Tommy Gilligan-USA TODAY Sports

■ 今シーズンの目標を教えてください。

一番近い目標は、やはりチームメイトや監督に実力を見せて契約を勝ち取ることです。ただ選手の層は厚いと思うので、中期的な目標としては自分の強みである持久力や打開力でまずベンチに入って、コンスタントに試合に出られるように頑張りたいです。

■ 遠藤選手はJFAアカデミーご出身ということですが、福島のことや震災のことを改めて考えられたりしますか?

はい、もちろんです。5年間過ごしたので、日本では第二の故郷だと思っています。アメリカにいましたが、いろいろ経過を見てきました。僕たちが拠点としてきたJヴィレッジのグラウンドには、仮設住宅ができてサッカーができなかったのですが、今はそれが取り払われてまたサッカーがちゃんとできるようになったみたいで、嬉しいですね。大分進展はしていると思うので、できるだけ多くの人が戻ってくればいいなと思います。

■ トロントの街並みの印象はいかがですか。

今はまだダウンタウンのホテルに滞在しているのですが、とても良いと思います。それほどアメリカと変わりはないのかなと感じているのですが、カナダは初めてなのでいろいろと順応しないといけないことがあるだろうな、と思っています。まだ全然街を散策できていませんが、雰囲気的にはいい感じだなと思いましたし、みんなにトロントは良いところだと聞いているので時間をかけていろいろ見ていきたいです。

■ トロントにいる日本人の間ではすでに遠藤選手のことが話題になっています。

いきなりポンとトロントFCに入りましたけど、試合に出られるように頑張るので、その時にはテレビやスタジアムで応援してもらえたら嬉しいですね。

■ メリーランド大学在学中には、学業とスポーツの両面で好成績を残した選手のみが選ばれる“All Big 10 Academic List”を受賞されるなど、サッカーだけでなく学業にも力を注がれたようですが、文武両道のコツはありますか?

何でしょう…。僕は一生懸命に真面目に頑張りました!!ただ、もちろん始めはとても大変でした。新しい環境の中で新しい文化に触れ、新しい人たちに出会い、さらに新しい言語を学ぶ。特に始めは英語がネックでしたが、積極的にコミュニケーションをとるようにしていました。自分が知っている限りの知識を使い、自分から話しかけるようにすることで助けてくれたチームメイトもたくさんいます。サッカーをプレイしている時もコミュニケーション能力が低いとピッチでも影響が出てしまいますし、チームメートからも信頼されなくなってしまいます。それではパスが回ってこないし、ボールが来ないと何も始まらない。ですので、海外で失うものは何もないからと自分に言い聞かせ、積極的に自分の能力を伝え、信頼を勝ち取っていけたと思います。そういう些細なことの積み重ねが成績に繋がったと思います。特別なコツというのはないですが、ちゃんと卒業したいという目標を持ってアメリカに来たので、サッカーだけでなく勉強も頑張れました。

■ トロントには、留学やワーキングホリデーでやって来た遠藤選手と同世代の若者がたくさんいます。それぞれの夢に向かって頑張る彼らに、メッセージをお願いします。

留学している皆さんはすでに身を投げ出して親元を離れていますよね。そういうところに自分で身を置くことは凄いことだと思います。ただ日本人は日本人同士で集まってしまう傾向があると思います。そういう中でも本当に英語を喋りたいと思うのなら、きちんと独立した時間を持つことが大切です。違う文化を学んだり、自分の目標をしっかり持てば、自分のやりたいことが叶うのではないかと思います。


遠藤 翼
1993年生まれ、東京都出身。12歳から18歳までFJAアカデミー福島に在籍し、卒業後アメリカ・メリーランド大学に入学。スポーツ強豪校で4年次には背番号10を背負い、2015年のビッグ・テン・カンファレンスではMost Valuable Offensive Playerに選ばれている。2016年1月のドラフトでトロントFCから一位指名を受け、入団。

MLS(メジャーリーグサッカー)とは?
mlssoccer.com
1994年にアメリカでサッカーワールドカップが開催されたことにより、アメリカ国内でサッカー人気に火がつき、2年後の1996年に発足されたのが現在のMLSだ。MLS発足当時は12チームのみだったが、現在はアメリカに17、カナダに3チームが存在し、計20のクラブチームで構成されている。レギュラーシーズンは3月から10月までで、11月には上位12チームでプレイオフが行われ、12月にチャンピオンカップが開催され、シーズン優勝が決まる。

Toronto FC 
torontofc.ca
12007年からMLSにアメリカ国外初、カナダ初チームとして新規参入。ホームスタジアムはエキシビジョン・プレイス内にあるBMOフィールドで、カナダ国内のサッカー専用スタジアムでは最大規模の収容人数2万500人を誇る。

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