トロント大学が東大より大学ランキングで上位なワケ|特集「カナダの“なぜ”に迫る」


 毎年11月ごろに公表され、公表されるや否や世界中の教育機関や大学受験を控える学生から多くの注目を浴びる世界大学ランキング。今年もアメリカ・・イギリスなどの大学が上位を占めた。カナダのトップ校であるトロント大学は今年もまた、複数の大学ランキングでトップ20に入るか入らないかの地位を保っている。一方で、日本の大学の中で常にトップの地位を保っている東京大学はTimes Higher Education2019年の世界大学ランキングで42位、U.S. Newsの世界大学ランキングで62位タイなど、いまひとつ順位が伸びないのが現状だ。どちらも先進国のトップ校であるにも関わらず、ここまで差が開いている理由はどこにあるのか。そして果たしてトロント大学はそこまで東大より優れているのか。ランキングを一つ一つ紐解いていきたい。

Times Higher Education

Times Higher Education(通称THE)はイギリスのタイムズ誌から独立した教育情報誌。収集した膨大なデータをもとに世界大学ランキングをはじめとした様々なランキングを毎年発表している。大学ランキングの中でも知名度は特に高く、世界中の学生や教育機関から注目されている。また、ベネッセと協力し日本の大学のみを対象にしたランキングも発表。その結果は日本でも毎年注目されている。

五つの評価基準

今回注目する2019年度世界大学ランキングは主に五つの基準により点数が導き出されている。一つ目は教育環境(Teaching)で、教員対学生の比率やアンケート結果をもとに計算されている。二つ目は生産性などを含む研究(Research)。三つ目は学術的文献における引用数(Citations)で、四つ目は研究の応用性(Industry Income)。五つ目は留学生の割合や外国人教員の割合をもとにした国際性(International Outlook)だ。その中でも特に重視されているのは教育環境・研究・引用数の三つである。

実は東大の方がランクが上?

最新の2019年度のランキングではトロント大学が21位、東大が42位という結果になった。過去5年のランキングを見てみると、トロント大学は20位あたりを彷徨っているのに対し、東大は2015年の23位を最後にトップ30から降格。2018年には46位と順位を下げている。それではここでランキングの内容を詳しく見てみよう。


まず注目していただきたいのは論文の被引用数と国際性だ。両基準においてトロント大学が30点以上の大差で東大を上回っている。被引用数とは他の論文でその大学の研究が引用されている数を意味するので、研究の影響力とも捉えることが出来る。実際、歴史的にも有名なインスリンの発見を始めトロント大学で行われた研究の多くは世界的にも影響力が高い。現在でもAIの研究の最先端を行くなどそのスピードは衰えることを知らない。国際性に関してはどうだろう。トロント大学はここ数年、特に多くの留学生から人気を集めている。2017年度には留学生が学部生のおよそ23%を占めるなど、その割合は北米の大学でも高い。また、カナダの多国籍文化もあり、一口に「カナダ人」と言ってもその民族属性は様々だ。故に、国際色豊かなキャンパスが特徴的だ。一方で、東大は留学生の割合が11%とトロント大学の半分である。教員に至っては6%とほんの小さな一部に過ぎない。国際的と呼ぶにはもう少し時間がかかるかもしれない。

しかし、この表を見て首を傾げる方も多いのではないか。そう、五つの評価基準のうち三つにおいて東大がトロント大学の上をいっているのだ。中でも注目して欲しいのは教育環境の点数だ。トロント大学に10点近くの差をつけている東大。教育環境とは、先述にもあるように教員と学生の比率などが求められる。この数字はよく教師と学生の間の距離を知るために重視される指数だ。これにおいて東大は教員一人当たり学生が7.6名なのに対し、トロント大学では教員一人当たり学生が19・0名とかなり教員の数が少ないことがうかがえる。様々な意見があることは確かだが、大学を選ぶ学生にとって教員との距離は重要な項目の一つではないだろうか。その点では東大の方がトロント大学よりも学生にとって好ましい環境と言えるかもしれない。

U.S. News & World Report

トロント大学が大差をつけて上位に

U.S. News & World Reportはその名の通り、アメリカのメディア会社で大学・教育関係の他にも国、車、病院など様々なランキングを公表している。こちらの大学ランキングはTimes Higher Educationに比べると評価基準が10以上と多い。中でも注目したいのは論文の出版数(Publications)、研究の影響力(Citation Impact)、被引用数(Total Citations)など六つの基準。こちらのランキングではTimes Higher Education以上に差が広がり、トロント大学が20位なのに対し東大は62位タイと出遅れている。


今回のランキングでは大半の基準でトロント大学が東京大学を上回る結果になった。中でもその差が著しいのは出版数、研究の影響力、そして引用数だ。研究の影響力においては400ランク以上の差をつけているのがわかる。しかしながら、Times Higher Educationのランキング同様、東大がトロント大学を上回る項目もある。中でもその差が歴然としているのは国際的な共同研究(International Collaboration)で、なんと200ランク以上の差がある。

評価基準の違い

二つのランキングを見てみると、同じ大学ランキングでも評価基準が違うことがよくわかる。それにより、特に東大のランキングが大きく違うことも明らかだ。ここで特に注目してもらいたいのは、U.S. Newsのランキングにおいて学生の評価を含めた教育環境の基準がないということだ。つまり、U.S. Newsの大きな判断基準は大学の研究の結果と影響力、ということになる。一方でTimes Higher Educationのランキングを見てみると、教育環境も大きな判断基準の一つになっていて、こちらのランキングでは東大とトロント大学の差が大きく縮まっていることがわかる。

学生の満足度

評価基準の違いとして見られた教育環境だが、これは大学を選ぶ際に学生が重視したい項目なのではないか。有名度や研究成果ももちろんだが、大学に実際通うのは学生だ。学生がいかに学生生活を楽しんでいるかをないがしろにすることはできない。そこで、トロント大学の学生満足度を見てみると意外な結果が見えてきた。

カナダ専門の大学ランキングを公表しているMacleansは昨年10月に最新の「学生満足度ランキング」を公開。順位は次の通りだ。

そう、トップ10にさえもトロント大学は入っていないのだ。それどころか、ブリティッシュコロンビア大学とマギル大学も含むカナダのトップ3が一つも入っていないから驚きだ。つまり、学校の知名度や研究成果と学生の満足度は比例しないとも言えるのではないか。

一方の東大はどうだろう。東洋経済が公表したランキングによれば、教育満足度ランキングでは国際基督教大学(ICU)にこそ越されたものの、2位とトロント大学に比べれば高い。

世界のレベルは高かった!

しかし、東大のみならず日本の大学が世界のトップ校のレベルに達するにはまだ時間がかかるのかもしれない。Times Higher Educationのランキングでもあるように、国際性においてはトロント大学が82・8点なのに対し、東大は35・9点と50点近くもの差がある。それもそのはず。世界ランキングにおいて日本のトップ校はまだまだ出遅れているのが現状だ。日本とカナダのトップ3を比べてみよう。

カナダのトップ3の大学は世界でもトップ50以内の順位を保っているのに対し、日本のトップ3の大学は最上位の東京大学のみトップ50以内だ。これから先、国際化が進むにつれ日本の大学にも海外からの留学生や教員が増えることだろう。それに伴い、日本の大学の教育システムも変わってくるのか、これからも注目していきたい。


参照:
THE: timeshighereducation.com
US News: usnews.com/education/best-global-universities/rankings
Macleans: macleans.ca/education/university-rankings
東洋経済: toyokeizai.net/articles/-/165818?page=2