トロントで独演会を開催!“むかつくということは、痛いところを突かれているということ” ウーマンラッシュアワー村本大輔さん

 沖縄基地問題、被災地復興の課題、政治、原発問題、大麻についてなど度々ツイッターでの発言が多くの賛否両論を呼び、ネットニュースでも毎日と言っていいほど話題になる村本さん。

 今回トロントで行う独演会の合間に時間を作ってもらい「なんでも聞いてください」ということだったので、ハーバーフロントにある素敵なカフェレストランでジントニックを一緒に飲みながら村本さんにストレートに色々伺ってみた。

 爽やかな青空とは対照的に、独演会やツイッターの発言に込められた真意はかなり深遠な思考から生まれている印象を受けた。

「日本は何事に対しても『こうであれ』という空気が強くある」

ー初日のトークショー後にトロント在住の日本人からトロントの素晴らしさを聞いたとSNSでつぶやいていました。どのような受け止め方をされましたか?

 日本人というカナダでは外国人という立場からの意見ではあると思いますが、「受け入れられている」と感じました。ある女性は、スカートの話をしてくれて、日本だと30歳超えて短いスカートを履くと、いい歳をして…なんて言われることもありますが、トロントでは、何歳だろうが自由に、どんな服を着てもいいという空気だと教えてくれました。というのも、日本は何事に対しても「こうであれ」という空気が強くあると思いますが、カナダでは「自分らしくあれ」という空気があると感じます。

 トロントにいると今まで「規則、規律、こうしろ、ああしろ」など日本という牢獄にいたんだなと感じますよね。とくに、東京なんかはグローバルに見えて、ローカル部分がありますよね。実際に、原宿で「LGBTQ+」のパレードが行われましたが、そういった話題が上がるのはそういう特別な日やそれに関心がある人の間でしか、まだまだトピックとして上がっていない現実があります。

 だけどトロントでは、ウーバーからスターバックス、横断歩道などにレインボーが取り入れられていて、そういったマークを見ることで、「LGBTQ+」に関して考えさせられるきっかけになると思います。そういったところから、ひとりひとりのパーソナリティを尊重する街だなと感じました。

「さすが、移民が集まる街だなと感じますよ」

 昨日、今日にジョギング中に声をかけてもらったり、コーヒーを買って「Have a good day」と当たり前に声をかけ合って、夜、ホテルのエレベーターに乗ると一緒に乗っていた人が降りるときに、「Good night」とかを普通に言ってくれたりするんですよ。もしこれ日本だったら、急に知らない人が「おやすみ」なんて言ったら、ちょっと動揺しますよね。日本人は内向的になりがちですけど、本当は「おやすみ」とかさりげない会話で声をかけ合うことってとても良いことですけど、それがここでは当たり前のことなんですよね。もしこれを日本でやると「どうした急に、やばいやつなんじゃないか」ってなりますよね。

 こうやってみるとカナダという国は、内向的な僕の心のウェンディーを連れ出してくれるピーターパンみたいな世界ですよ。常にポジティブな気持ちになれます。でも、不幸が餌の芸人にとっては向いていない街かもしれませんね。

 例えば僕の場合、昔の彼女でむかつく女性ほどデートの後に話題がたくさん出るんですが、楽しく過ごせた女性のときは、その後とくに話題もなく、ただただ楽しかったという感じなんですよね。それでカナダって、そんな最高の女性の感じがしますね。だから逆に今のところなんの面白い話もないです。芸人としてはここにいたら失業してしまうなと感じます(笑)。

ーアメリカに留学をされたり、独演会も海外で行うなど積極的に日本国外にも目を向けていますよね。

 お笑い芸人を目指して、福井県から大阪に上京したときに、今まで福井の中で周囲の人たちに作られた常識とかけ離れたものを体感して驚きを得ました。

 学生時代、芸人を目指すというと、出来るわけがないだろうと鼻で笑う人がいましたが、高校も途中で辞めて、地元で働くところは、パチンコ屋や工場などと決められていたなかで、テレビに映る芸人を見てなってみたいなと思い大阪に行きました。大阪で色々な人に会って、今まで思っていた価値観が、福井だったら5つぐらいしかパターンを持ち合わせていなかったのに、30個ぐらいに膨らみました。そこからまた東京に行ったら、その数がまた膨らんで、仕事先も、考え方、物事も全然違う色を見ることができました。

 そして今度は海外行ったら全然また違う。そこに住む様々な人種の数だけ街の数があると肌で感じました。なんかそういった違いや個性を実感できることが面白いと感じています。

「むかつかせたい」

ー村本さんの賛否両論の議論が巻き起こるツイートを見ていると、右とか左とかというより生活の当事者である我々に問題提起をしているように感じます。何を思いながら発信しているのですか?

 「むかつかせたい」というのはあります。むかつくということは、痛いところを突かれているということですからね。日本社会を挑発してそれに対しての反応、また怒っているところを見るのが好きですね。

 最近だと大麻を合法化するべきだと呟いたらものすごく炎上して、凄い数のクレームが僕がトークショーを予定している劇場に届きました。それを見て面白いなと感じましたね。

 自分のなかで挑発して何がしたいのかというと、僕は芸人なので「ネタ」がやりたいわけで、「ネタ」というのは結局表現であり、僕はアートだと思っているんですよね。そのアートとしての絵を描くにしろ対象が必要ですよね。僕は自分で見たいわけですよ、この日本の不寛容な社会を自分が発言することでみんなが怒る、そしてその模様を見てスケッチしてしゃべりにするわけです。

ジャーナリスト堀潤さんとの出会い

ー社会や政治を風刺した漫才を積極的に行うようになったのはどうしてですか?

 当時30歳を過ぎても衆議院も参議院も知らなかった僕は、ニュース番組でご一緒した堀潤さんに、基礎知識や時事問題を教えて欲しいとお願いしました。快諾してくれた堀さんは翌日早朝5時から仕事があるのに、朝の4時まで僕の疑問に真剣に面白おかしくずっと答えてくれました。今まで否定されることの多かった人生だったので、堀さんが受け入れてくれているということに本当に感動しました。

 沖縄の基地問題もその一つです。堀さんの後輩に沖縄の方がいて沖縄の問題を自分のことのように感じていました。僕に伝えることで、また僕にも誰かに伝えて欲しい…親切に教えてくれる堀さんは僕にそう言葉をかけてくれました。

今まで体感したことがないほどの腹の底から飛び出してくるような勢いの笑い

 実際に沖縄や被災地でその地域が抱えている問題で漫才をやったときに、みんなが抑えていた蓋がパンッと飛び跳ねたような、体の内側からくる笑いを感じました。あんな勢いの笑いは今まで感じたことがないほどの衝撃を受けました。

 その時からです。社会や政治を風刺した漫才をやることで、今度は僕が誰かに少しでも伝えることができればと思うようになったのは。

村本さんはテレビ業界から干されているんですか?

ー政治の話をしたらテレビに出られなくなったと以前インタビューで答えていました。日本のマスメディアについてどう感じていらっしゃるのですか?

 干されていると時々言われますが、まだ少しメディアに出ているので、言うんだったら〝生乾き状態〟ですかね。

 漫才で優勝してテレビによく出させてもらうようになりました。そこでは、いかにいい切り口で話せるか、コメンテーターとしての需要をいかに増やそうとかそういう思いしかなかったです。

 また日本のメディアから感じ取れる日本人の価値観が面白いなと思います。テレビ番組の制作者から聞いた話ですが、昔は日本をバカにしているような番組があったりしてそれなりに人気でしたが、今は日本を褒める番組でないと続けることができないらしいです。多分それって、中国や韓国など日本と近くの国々が成長してきて、そのことに対して余裕がなくなってきたことのあらわれだと思うんですよね。

 他にも日本とアメリカを比べたとき、アメリカの方が民主主義のカウンターがあるなと思います。例えばトランプ大統領をネタにしているアメリカの芸人にブームが来ていますが、日本はそもそも政治ネタは去勢されていて、だから何があってもテレビでは芸能人のゴッシプネタばかりフォーカスされがちですからね。今、日本中で起こっている本当に大切なことに向き合おうとしないですからね。

ー日本は女性の社会進出が課題と言われていますが、芸人の世界ではいかがですか?

 女性の芸人というのは、自分はブサイクだとかモテないとか、そういうことを武器に前に出ざるをえない環境にずっといました。でもアメリカの女性コメディアンを見ると、男に中指立てて痛烈な笑いを取っています。でも日本では女性芸人として日本の女性としてのキャラを偽りながらじゃないとそのコミュニティでやっていけない感じがしますし、その空気を作っているは男性たちであるという現実が僕の見るお笑い界の中にはありますね。

「ローカルを大切にする日本人の姿は美しい」

ー日本の社会を理不尽に思っている村本さんからみて、あえて日本の良さとはどういうところですか?

 生まれてこのかた嫌いなものしか見てこなかったので…難しい質問ですね。だけど、東北の被災地に行ったときに、津波がまた来る可能性があるのにそこに住み続けている人と出会ったときには、すごいというか感動を覚えました。いつまた津波が来るか分からないのに、自分の両親、祖父母が大切にしてきた景色を見続けたいためにそこに住み続けることって中々できませんよね。なんというか、合理的なことだけ求めるのではなく、ローカルを大切にする姿って美しいですよね。

ー日本社会がより寛容性を持っていくために必要だと思うことはなんでしょうか?

 自分たちの恥をさらけだすことと世の中をもっとカジュアルにとらえることですかね。物事をあまりにもシリアスに考えている人が多すぎだと思います。それって世の中の多くの人が、余裕がなくなってきていることだと思うんですよね。

「自分の呼吸しやすい場所を見つけて欲しい」

ーカナダにはこれから就職活動をして社会に出ていく若者がたくさんいます。ぜひメッセージをお願いします。

 就活をいかに成功させるかにフォーカスした若者が増えているなんて聞きました。世の中には色んな価値観があると思うんですね。高学歴が良いと思っている人、大手企業で働くことが良いと思っている人。

 実際、仕事柄色々な方とお会いする機会がありまして、ハーバード大卒や東大卒、超有名企業で働いている人、そういう人が今自分の一番呼吸のしやすい環境にいるかといわれると、僕から見るとそうではない人もたくさんいるなと思いますね。

 どんな仕事、会社で働こうが、そこの環境で常に感動し続けられることが幸せなのではないかと思います。お金や名誉にフォーカスせずに、自分の呼吸しやすい場所を見つけられることがいいんじゃないかなと思いますね。