大好評!「うんちく好きシェフのかんたんレシピ」でお馴染みの 橋本シェフが語る、食材としての鶏の魅力

本誌連載コラム「うんちく好きシェフのかんたんレシピ」でお馴染みのシェフ・橋本渚さんに、自身のこれまでのフランス・イタリア料理を中心に培ってきた調理経験を元に、鶏の食材としての魅力を語っていただきました。
「高級感」よりも「親近感」、食材としての鶏の魅力
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シェフ・橋本渚さん

鶏は多くの料理でベースとして使われている食材です。フランチレストランにおいて鶏肉はメイン料理として弱い食材であるとされているのが正直なところなのですが、これは鶏肉にメインほどの魅力がないということではなく、料理のベース、影の立役者として料理を作る上で欠かせない存在としてあります。また、鶏は宗教上のことも含めて世界中で食べられており、特別身近な食材で、家庭料理としてのイメージが強いですね。旨味がわかりやすく、その旨味も多く含まれているので、家庭料理で使いやすいのです。日本人にとっても鶏のから揚げや照り焼き、チキンカレーといった家庭料理がポピュラーですよね。さらに、他の肉でもいえることですが、鶏は捨てる部分なく、丸ごと食べることができるということも大きな魅力だと思います。

先ほど「フランチレストランでは鶏肉料理はメイン料理として弱いとされている」とお話しましたが、鶏肉には「ソリ(※ソリレス。骨盤の内側にあるピンポン玉大の筋肉)」という、フランス語で「愚か者はそれを残す」という意味を持つ最も高級な部位があり、このソリだけを集めて作られたフランス料理の一皿は、星付きレストランでもきちんとした値段で提供されています。また、鶏の種類としてはフランス・ブレス地方の「ブレス鶏」が最も高級で美味しい鶏肉であるとされています。

すべての料理の旨味の源泉となる鶏ガラスープ

フランス料理では鶏ガラスープをアスパラガスを温めるときに使うなど、旨味の源泉として水の代わりに使われるほど、いたるところで使われています。フランス料理だけでなく、中華やイタリア料理などその他多くの料理でもベースとして使われており、いわば日本料理でいうダシのような存在ですね。

私の料理教室では、最初の方で鶏ガラスープの取り方を学びます。「鶏ガラスープを取る」というとみなさん手間がかかるものだと思いがちなのですが実は簡単。教室ではまず鶏のから揚げを作り、その余った鶏ガラでスープを取ることでより自分で身近に感じてもらえるようにしています。

西洋料理には豚骨を使ったものはないため、料理教室でらーめんを作った時に初めて豚骨スープを取ったのですが、鳥ガラからはパッとわかりやすい旨味が出て、豚骨や牛骨といった脊髄などの大きな骨からはコクが出ます。この二つのスープを合わせることでより味に深みが出ます。個人的には豚骨らーめんにも鳥ガラスープを加えるとさらに美味しくなるのではと思います。

文化で異なる部位ごとの調理法

西洋料理では、鶏は丸ごと使うというイメージが強く、前述のソリなどを除き、あまり部位などを気にして調理するということはありません。こういった部位に対し敏感なのは、焼き鳥などの日本料理特有の感覚だと思います。また、丸ごと食べるといっても西洋ではホルモン部分をそのままの形で食べるという習慣がなく、レバーなどはテリーヌなどに加工して使われ、そのテリーヌにも砂肝を入れてコリコリとした食感を楽しむなどといった使われ方がなされます。

ムネ肉やモモ肉といった家庭料理に使われる部位の調理法は日本と同様で、ムネ肉は白身で淡泊なので、わりとパサつきやすく、あまり煮込んだりはせず、蒸しものに適しています。モモ肉はジューシーなので煮込み、その他調理法でも美味しく食べられます。料理法としては全体的に骨付きで大きい方がしっとりと仕上がって、骨から旨味も広がって、さらに鶏の旨味を感じることができます。

料理に合わせるワインは色に注目!

著名な日本人ソムリエである田崎真也さんも仰っているのですが、ワインは食べ物の色と合わせると合わせやすいです。もちろん好みもありますが、一般的にはムネ肉には白ワイン、モモ肉は赤身だけれどあまり色が濃くないので、ライトボディの赤ワインと合わせるのが良いとされています。ですが、鶏肉の赤ワイン煮にはフルボディのワインを合わせることもできますし、モモ肉に白ワインソースを添えるといったことも多いですから、一概にどのワインでなければということはありません。

鶏肉を使ったカナディアン料理「ローストチキン」

鶏肉を使ったカナディアン料理といえば、ローストチキン。ローストチキンは簡単に作れるのですが、みなさん難しいと思ってあまり作らないようで、料理教室でもよく扱うようにしています。実際に調理してみた生徒さんからも「意外と簡単!」といった反応が返ってきますから、ぜひみなさんにも作ってみてほしいですね。新婚家庭や少人数でのパーティなど鶏丸々一匹では量が多すぎるという場合には、幼鶏のローストチキンもおすすめです。幼鶏は多くのスーパーで取り扱われています。

変幻自在!卵という食材の魅力

そして鶏といえば、卵も料理にとって大切な食材です。卵はそれだけでも料理になりますし、ハンバーグや肉団子など、料理の「つなぎ」としても利用されます。卵白を泡立てたメレンゲにもふわっとさせる効果もありますし、卵は主役だけでなく脇役も務める、変幻自在の食材だと言えますね。
「カナダでも卵かけご飯を食べたいのだけれど」という相談をよく受けるのですが、多くの日本人の人が考えているようにカナダの卵は衛生的に日本よりも菌が多いというわけではなく、日本の卵が特別殺菌加工されていて生食も一般的であるというだけなのです。オンタリオの保健所は殺菌のためにも74度以上の熱を通すことをガイドラインとして定めていますが(※詰め物を除く)、実際にはエッグベネディクトなど半熟玉子が食べられています。ですから、あくまでもこういった料理は個人で責任を持って食べることが必要だと思います。

橋本 渚(はしもと なぎさ)
フレンチ、イタリアンレストランで17年以上の経験を持ち、トロントミッドタウンにて、料理教室を主催。「分かりやすく、楽しい」をモットーに、家庭でできるおもてなし料理を教える。プライベートシェフとしてケータリングも行う。
料理教室『Coo Cooking Studio』Facebookページ : www.facebook.com/CooCookingSutdio