日本とカナダのさらなる発展を目指す「Walk in Canada, Talk on Japan」フォーラム / Japan Society・日本総領事館共催


 10月5日、日加関係のさらなる発展のために2016年より毎年行われている「Walk in Canada, Talk on Japan」が開催された。トロントでの二度目の開催となった今回は、国際経済研究所の理事長でもあり「歩こうカナダ、語ろう日本」プロジェクトの代表でもある大島正太郎氏を始め、高橋美都子氏、リック・リュー氏、そして佐藤理瑛氏の四名が講演者として参加。それぞれが独自の視点から日本の文化、そして日本がこれから目指すべき姿について語った。

日本とカナダの関係は貿易と外交のみでは語ることは出来ない

 始めに登壇したのは大島代表。主催者と参加者へ謝辞を述べた後、「歩こうカナダ、語ろう日本」プロジェクトの重要性を指摘した。2016年に始動して以来、このプロジェクトを通して様々なバックグラウンドからやってきた人々が日本とカナダの関係について意見を交換してきたという。これをきっかけに二国間の関係がより深く強いものになればと願いを込めた。続いて、ここ数年の日加関係について言及。両国の首相の協力により二国の関係は最近さらなる発展を遂げてきたと述べた。G7会談において両首相は貿易、成長、そして平等を基盤とした関係をこれからも引き続き築いていくと発表。大島代表はこれに大きな希望を寄せている。

 経済的にも日本とカナダは常にその関係を強化してきたと大島代表は加えた。日本はカナダにとって世界で4番目、そしてアジア最大の貿易相手国であり、日本がカナダへ投資した額は2017年の時点で300億カナダドルに上る。これらの数字からも見えるように、二国の経済的関係性は間違いなく強いものであると強調した。また、現在500社近い日本企業がカナダに拠点を置き、現地でも積極的に雇用していると加えた。この先は、反対にさらに多くのカナダの企業が日本へ来ることを期待していると語った。

 そんな中、日本とカナダの関係は貿易と外交のみでは語ることは出来ないと大島代表は指摘。二国の関係の基礎となっているのは人と文化の交流であると述べた。90年という長い歴史の中、カナダに住む日本人は常にカナダの多国籍な文化に貢献してきたと大島代表は日系コミュニティの重要性を強調した。それを踏まえ、2020年に東京五輪を控えた日本はこれからさらに多くの外国人観光客の来日を見込んでいると大島代表は加え、カナダの皆さんにも日本を訪れてほしいと述べた。そして、「Walk in Canada, Talk on Japan」のようなイベントがそのきっかけを作る場面となってくれれば本望であると結んだ。

日本で変わりつつある女性の役割
高橋美都子氏

 最初のゲストスピーカーとして登壇したのは高橋美都子氏。インド、フランス、ロシアなど様々な国で働いた経験のある彼女は2016年に自身のコンサルティング会社を起業。主に海外展開を計画する日本の中小企業を支援している。高橋氏は日本における女性の役割の変化について言及。自身の経験を交えながら、日本がこれから改善していかなければいけない点について語った。

 高橋氏は始めに日本が世界に遅れをとっている男女格差を指摘。世界男女格差指数によると、日本は140カ国中114位と驚くほど低い。一方でカナダは16位とはるかに先を進んでいる。その理由の一つとして、彼女がかつて勤務していた企業での経験を語った。

 1990年代後半のこと、当時はまだ女性社員が男性社員にお茶を注ぎ、湯呑みを洗うなどということが当たり前の時代だった。女性社員もそれに疑問を抱くことなく行なっていたという。アメリカと日本のジョイントベンチャーということもあり、活躍が認められアメリカ人のマネージャーに昇進を言い渡されたものの、その一方で日本人の上司には怪訝な顔をされたという。会議においても自分の提案や企画は無視されることが多かったが、このような状況は最近ようやく変わり始めたと高橋氏は語った。

 現在、日本人の女性の活躍は徐々に伸びつつあると指摘。MBAを取得すべく大学へ通った高橋氏。そこで出会った女性の多くは現在、各々の会社で重要な役割を担っている。さらに、男女が平等に働くことが可能な環境を作ることは経済的にも好ましいというアンケート結果もあるそうだ。日本の政策にもその動きは見られる。その一例として、厚生労働省が抱える「女性活躍推進法」は女性の社会での活躍を後押ししていると高橋氏は語った。やがて企業をやめ、起業へ踏み切った高橋氏。始めた当初は男性の友人たちから「無謀だ」と言われたことも少なくなかったという。苦労したことも多々あったが、二年経った今、ようやく自信を持てるようになったと述べた。

 日本は未だに男性中心の社会であることは否めない。しかし、高橋氏は日本の行政や社会の態度の変化を前向きに見ている。女性の活躍はこれからさらに伸び、「未来は女性だ」と高橋氏は強調。近い将来、多くの企業を女性が引っ張っていく姿が見れることを願うと結んだ。

外国人から見た日本の魅力
リック・リュー氏

 台湾で生まれ、バンクーバーで育ったリュー氏。彼が日本を初めて訪れたのは2011年のことだった。以来、日本を気に入り現在も日本で勤務しているそうだ。彼は今回、外国人として日本で味わった経験と日本がこれからより多くの外国人を受け入れるべく行っている活動について語った。

 リュー氏は始めに外国人から見た日本の魅力について言及。現在、日本では多くの外国人が暮らしている。彼らが日本を選ぶ理由を一つに絞ることは出来ないものの、リュー氏にとって特に大きな理由の一つとなったのが日本人の親切さである。特に印象に残っている経験として、まだ日本に到着して間もない頃のエピソードを紹介した。

 定食屋で天丼を食べていたリュー氏の隣に現れたのは見ず知らずの日本人のサラリーマン。するとそのサラリーマンは突然リュー氏に古くからの友人かのように話し始めたという。当時、まだ日本語があまり話せなかったリュー氏には彼の話がほとんど理解出来なかった。しかし、そのサラリーマンは去り際にリュー氏に小さな紙を渡した。よく見てみるとその店の割引券だったそうだ。それまで日本人は「仕事しかしないロボット」という印象を抱いていた彼にとって、その経験は彼の日本人に対する考え方を大きく変えたという。以来、七年間日本に住み続けているリュー氏。日本人は恥ずかしがり屋であるものの、周りの人を支えたいという心は皆同じであると語った。

 また、自分が住んでいた地域のボランティアが開催していた無料の日本語クラスにも日本人の親切さが表れていると述べた。当時、大学院でも英語の講義を受けていたリュー氏はいざ社会に出た時に日本語で特に苦労したという。そんな時、ボランティアによる無料の日本語教室が開催されているということを知る。その教室を通じて様々な世代の日本人と触れ合うことが出来たとリュー氏は嬉しそうに当時を振り返った。彼らとの会話を通じて日本の文化について学ぶことも出来たそうだ。

 定食屋でのサラリーマンとの出会いから七年が経過した。それまでに日本の社会に馴染むべく多くの苦労もしたと言う。しかし、そんな中でも日本人の親切さに魅了され続けてきたとリュー氏は加えた。もちろん、日本がこれから改善していかなければならない点はいくつかあるが、日本は今、これまで以上に外国人を受け入れることに積極的であると強調した。そして、それを経験すべくさらに多くの外国人が日本を訪れることを願うと結んだ。

着物は家族との繋がりの象徴
佐藤理瑛氏

 佐藤氏は最近慶應義塾大学を卒業したばかり。大学在学中に一年間、シドニーで交換留学も経験したそうだ。そんな佐藤氏が紹介したのは着物とその文化について。自身の経験をもとに、着物は家族との繋がりを感じさせてくれるものだと主張した。

 佐藤氏はまず、着物を着る機会として成人式を例に挙げた。着物の中でも特に美しいとされている振袖。自身の振袖は30年前、母が着たものだったそうだ。このように次の世代へと受け継がれている着物は佐藤氏にとって家族とのつながりの象徴であると語った。これを着ることにより、母だけでなく、着物を購入した祖父との繋がりも感じると指摘。それにより自分も周りの人々に支えられていると実感すると佐藤氏は述べた。また、外国人観光客が着物を着ることが出来る方法の一つとして、レンタル着物を紹介。一日着物を着用して観光することが可能であり、その着物の種類も豊富であると様々な柄を紹介した。鶴は長生きの象徴、桜は新たな始まりを象徴すると説明した。

 最後に、文化における着物の重要性を指摘。日常生活や社会の中でも良いこと悪いことはある。しかし、着物のような伝統衣装を着ることにより家族との繋がり、そして支えを身を以て感じることが可能になると説明。佐藤氏はそれを自分の原動力にしていると語り、「これが私が着物を着る理由である」と改めて強調した。また、着物を一人でも多くの外国人に着てもらい、そのパワーを実感してほしいと期待を寄せていた。

 スピーチ終了後、参加者から講演者へ様々な質問が聞かれていた。日加修好90周年の今年にまさにふさわしいイベントであった「Walk in Canada, Talk on Japan」。このように日本のこれからをカナダの人々と考える機会を設けることにより、これからもさらに多くの人が日加関係へ貢献すべく対話に参加していくことを願う。