カナダの金利政策が上がっていく!?|白ふくろうのネタ探し【第16回】

先般、イベントの冒頭でカナダやトロントの経済について学生さん向けに10分ほど話す機会がありました。そのイベントが終わった後、教育関係に進みたいという学生さんが、これまで経済ということをあまり意識していなかったが、これからは経済も勉強してみますと言ってくれました。彼女のように、これから社会に出ようという学生さんには、世界経済や、少なくとも自分が生活する国や都市の経済がどうなっているかは知っておいてほしいと思います。

今回はカナダ中央銀行が1月に出した金利政策Monetary Policy Reportについて概略を説明しましょう。

カナダ中央銀行では、3か月毎にこのレポートを出しており、Global Economy、Canadian Economyの2つの側面から経済を見て、金利政策の決定を説明しています。世界経済については、多くの報告が出ているのでここでは詳細は延べませんが、ポイントは米国経済が堅調に成長、先進国では物価上昇がみられ、世界経済の鍵となる原油価格も上昇しているという点。

では、カナダ経済は?

まずはカナダ全体の経済成長率を見てみましょう。

現時点で2017年のGDP国内総生産データが出そろっていませんが、1月の時点でレポートに書かれた各年度成長率は 2017年3.0%、2018年2.2%、2019年1.6%となっています。成長率が鈍化するものの、まずまずの経済成長が予想されていると言ってよいと思います。

GDPの主な構成要素は、最終国内消費と貿易収支です。

最終国内消費では、消費(Consumption)、住宅(Housing)、政府支出(Government)、ビジネス固定資産投資(Business Fixed Investment)に分けられます。

その中でもっとも影響が大きいのは消費。見通しでは、2017年3.0%成長のうち2.1%が一般消費となっており、GDP成長に大きく貢献しています。しかし、2018年には2.5%のうち1.6%、2019年では1.3%のうち0.9%となっており、一般消費の急激な落ち込みが全体成長率を大きく引き下げているように見え、大きな要因は、家計債務と言われています。住宅ローンを含む家計債務は世界的にみても非常に高いレベルにあり、今後カナダ中央銀行が金利を引き上げていくに従い、利払い増などから消費を控えざるを得ない状況になっていくと見られています(これからみてもカナダ中央銀行は金利を引き上げていく姿勢が見えますね)。

貿易収支では、輸出、輸入に分かれており、2017年は-0.8%とマイナス成長要因となっています。輸出は0.3%と堅調ですが、輸入が-1.1%となっており、収支ではマイナスに落ち込んでいます。

ただ、先行き見通しでは、2018年貿易収支均衡0.0%、2019年には輸出0.9%、輸入-0.6%と予測しており、収支では0.3%成長となっています。

こうした見通しの中で、一般庶民が気になるのは、物価、雇用、賃金ですね。

物価CPIについて、カナダを含め先進国では、2%前後が望ましいと言われています。今回のレポートでは2018年1.6%、2018年2.0%、2019年2.1%となっており、ほぼ目標値に近づくとなっています。もちろん、需要と供給によって個々の物価は決まりますので、一律ではありませんし、食料品など多くを輸入に頼るカナダでは、為替の影響などもありますが、概ねいいレベルで推移するということでしょう。

では、雇用と賃金は?

カナダの雇用状況は総じて改善しており、これからは人材不足になっていくかもしれません。カナダの失業率は、6%を割る(アメリカ基準では5%前後)レベルになっており、最低レベルまで落ちています。平均就業時間も徐々に増えており、人材不足が段々と数字に表れています。

賃金については、今年1月からオンタリオ州で最低賃金が時給14ドルまで引き上げられたように、総じて上昇傾向を示しています。平均ではこれまでも2%くらいの上昇を示していましたが、今回の最低賃金引上げが今後どう影響するか注意が必要です。最低賃金引上げがすべての人の賃金に影響するわけではないので、どれだけの賃金上昇圧力になるでしょうか。

今回のレポートでカナダ中央銀行が今後の物価指数リスクとして挙げていることにNAFTA再交渉の行方があります。それに関連して①輸出の成長鈍化、②カナダ経済が予想以上に成長した場合、③米国の経済成長、④一般消費高水準維持と家計債務のさらなる上昇、⑤過熱市場(トロント、バンクバー)での住宅価格の急激な下落などが列記されています。堅調と言われるカナダ経済ですが、今後の動き次第では、大きな変化が起きるかもしれないという危うい状況です。

今回のテーマである金利ですが、カナダ中央銀行は既に1月に昨年夏以来3回目となる利上げを行っています。経済好調なアメリカも今年3回利上げすると言われており、歩調を合わせるカナダは1回分先行した形です。今年あと2回利上げが行われるとすると、1年半で5回、1%以上金利が上がることになります。

この利上げが特に家計債務にどう影響するかが最大の注意点かもしれません。


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白ふくろう

1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。