トロント市の財政ってどうなっているの!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第21回】

 人口270万人以上を有し、北米でメキシコシティ、ニューヨーク、ロスアンジェルスに次いで4番目の規模を誇るトロント市は、現在も新移民や難民認定希望者が増え続けています。

 現在のトロント市は、1998年にダウンタウンコアの旧トロント市とその外郭の5市(スカボロー市、イーストヨーク市、ノースヨーク市、ヨーク市、エトビコ市)が合併し今の規模となりましたが、財政規模も大きくなったことで運営に苦労しているようです。

 市民にとっては、トロント市が行う様々なサービスの料金値上げが気になるところですが、その財政状況について関心を持つことは少ないのではないでしょうか。

 そこで今回は、トロント市の今年の予算を見てみたいと思います。まずは、その予算規模から。

 2018年度一般会計予算は、11.1ビリオン(約1兆円弱相当)。人口1200万人ほどの東京都の今年度一般会計予算案は約5.2兆円ですので、人口一人当たりで比べると、トロント市は東京都より13%ほど低いことになります。

まずは、トロント市の収入。

 固定資産税Property Tax4.1ビリオン、土地譲渡税Land Transfer Tax0.8ビリオン、トロント交通局TTC利用収入1.2ビリオン、市提供サービス手数料・罰金0.8ビリオン、その他収益1.0ビリオンとなっています。

 これ以外に、州政府、連邦政府からの支援が2.36ビリオン、繰り越し金や積立金からの取り崩し0.7ビリオンとなっています。

 最大の収入源は不動産に係る税金収入で全体収入の45%ほどを占めています。近年、住宅が異常な高騰を見せましたが、固定資産税の算出は、市場取引価格ではなく、トロント市の政策率やオンタリオ州の法令などでその上昇率が決められます。2018年度の戸建て住宅に関する固定資産税上昇は2.1%、コンドミニアムなど集合住宅は上昇なしとなっています。ちなみに、今年度の平均住宅評価額は$624,418。

 土地譲渡税Land Transfer Taxは、住宅などを購入する際に、土地の対価にかかる税金です。オンタリオ州で法令化されたものですが、トロント市では市の土地譲渡税を別途制定し収入を得ています。

 TTC利用料収入とその他サービス利用料、罰金の合計が2ビリオンを越え、総収入の20%ほどになっています。決して無視できない収入です。

 この他、一般会計には含まれていませんが、別事業として長期的な投資が必要な水道事業の収入1.3ビリオン、ゴミ収集事業0.4ビリオン、駐車場事業Toronto Parking Authority収入0.17ビリオンがあります。

では、それらのお金はどこに使われているのでしょうか。

 固定資産税収入をベースにして、その使途割合を見ると次のようになるようです。

 トロント市警察運営20%、トロント交通局運営14%、消防署運営9%、公園緑化娯楽6.4%、コミュニティー住宅公社4.9%、トランスポーテーションサービス4.5%、シェルター・住宅サービス4.1%、図書館運営3.6%、雇用・ソーシャルサービス1.8%、幼児サービス1.6%、救急サービス1.4%等となっています。

 大きな項目でまとめてみると、治安消防救急30%、交通関連18.5%、文化生活関連13.4%、住宅関連9%となっているようですね。

 この中で治安消防救急費用が30%というのは、高いのでしょうか。

 予算編成方法が同じではないので単純比較はできませんが、東京都の一般歳出予算では、警察消防の予算構成比は17.5%となっており、感覚的にやはりトロントの構成比は高いと思います。東京と比較した治安の悪さが反映しているのかもしれません。人口がほぼ同じのシカゴ市の予算を見てみましたが、警察消防関連費用はトロント市とほぼ同じくらいの割合でした。北米では、このくらいが標準的なのかもしれません。

では、交通関連費用はどうでしょうか。

 TTC利用料収入は1.2ビリオン。それに対して、TTC運営費用は約2ビリオン。約0.8ビリオンの赤字。それを州政府や連邦政府からのお金でカバーしていると見ることができます。50年以上経過する地下鉄の改修や新規路線建設、路面電車、バスの入れ替えなど大規模な投資が必要な事業で、2018年からの10年計画では、総投資26ビリオンの内72%を交通インフラに振り向ける計画となっています。

最後に、子育て支援。

 東京都の予算案でもっとも多いのが「福祉と保健」という区分で、23.2%を占めています。これは特別養護老人ホーム整備や待機児童解消事業、受動喫煙防止対策などに使われるようです。

 トロント市の予算でそれに相当するシェルター・住宅サービス、雇用・ソーシャルサービス、幼児サービスを合わせると7.5%ほどになりますが、東京都の1/3です。介護、子育て、雇用など環境や慣習が違いますので単純比較はできませんが、もしかしたら東京都が特別なのかもしれません。

 子育て支援について、トロント市はカナダで一番保育料が高い都市ですが、その分野への支出割合はわずか1.6%。オンタリオ州政府の支援策との関連もありますが、東京都の力の入れようとは比較になりませんね。

 こうした予算概要を知ると、トロント市のニュースがより分かりやすくなるのではないでしょうか。


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白ふくろう

1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。