トロントは低所得都市!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第22回】

 トロント市の重要課題は、銃犯罪増加に見られる治安の悪化、交通インフラ、住宅問題など数多くありますが、その根底にあるともいえる貧困について、今回は説明したいと思います。

 2016年国勢調査Censusデータによると、2015年世帯所得中央値Medianはカナダ全土$70,366、オンタリオ州$74,287となっています。ところが、カナダ最大の都市トロント市の世帯所得は$65,829となっており、オンタリオ州の所得レベルより約10%も低くなっています。経済の中心で高所得者層が多いイメージがあるトロントですが、これだけ低いのはなぜでしょうか。

 GTHA(ハミルトンを含む)では、トロント市を含め6地域、26市町村がデータ対象となっており、世帯所得で一番高い地域は、西のHalton$103,009、市町村単位で見た場合に一番高いのは、ヨーク地域のキングタウンシップ$118,309、次いでオークビル市$113,666となっています。10万ドルを超える地域が合計10市町村ありますが、それらはすべてトロントから離れた地域。一方で世帯所得が7万ドルを下回るのは、トロント市とハミルトン市($69,024)のみで、トロント市はGTHAでもっとも世帯所得が低い市町村であることが分かります。

 トロント市内の所得分布をみると、市の中心に高額所得世帯の地域がありますが、それを取り囲むようにU字方に低所得世帯の地域が分布しています。

 個人レベルの所得で見た場合でも、トロントはGTHAで最も低くなっています。15歳以上就労者の所得中央値は、トロント市$30,089に対し、最も高いハルトン地域では$42,577、トロント市の1.4倍です。カナダ全土では$34,204、オンタリオ州でも$33,539となっており、トロント市の所得がいかに低いか分かります。

 トロント市民の4人の内3人は、就労所得で生活しています。このレベルはカナダ全土やオンタリオ州のデータと比較しても大きな違いはありません。しかし、その収入レベルに大きな格差があります。

 カナダ統計局が税引き後低所得指標として所得中央値の半分にあたる金額を低所得ラインとして定め、その所得以下では一般的に貧困にあると定義されます。データ収集年2015年の低所得ラインは、単身世帯$22,133、カップル世帯$31,301、カップル+子供二人世帯$44,266となっています。トロントでは、市民の20.2%にあたる543,390人がこの低所得ライン以下となっており、5人に1人がいわゆる貧困レベルでの生活をしていることになります。

 就労所得を見た場合、年収$20,000以下…35.1%、$20,000以上$40,000以下…31.5%となっており、66.6%すなわち3人に2人は、年収$40,000で雇用されていることになります。

 一方で、$100,000以上の就労所得を得ている人は10.5%。カナダ全土で$100,000以上の就労所得を得ている人の割合は8.7%ですので、トロント市に高額所得者が多いのも事実で、全体としてみると貧富の差が大きい都市と言えるのではないでしょうか。

 貧困の実態を年齢層別にみると、18〜24歳層では27.0%、18歳以下の子供たちでは26.3%とさらに高くなっており、子供の貧困が大きな問題となっています。

 カナダ全土で見た場合、貧困世帯で暮らす人は約480万人(14.2%)、内18歳未満の子供が120万人おり、貧困生活者の4人に1人は子供となっています。18歳未満の子供の数は680万人となっており、6人に1人(17.1%)が貧困生活世帯で暮らしているとのことです。

 日本でも最近になって貧困が取り上げられるようになりましたが、OECDのデータベースには現在2012年のデータしか登録されていないようです。その2012年データによると、国全体の貧困率16.1%、子供の貧困率16.3%となっており、全体の貧困率は最新のカナダのデータより悪く、子供の貧困率は若干いいものの、3年の差を考えるとほぼ同じと見ていいかもしれません。

 トロント市では、貧困対策に長年にわたり取り組んできましたが、まだ十分とは言えないようです。貧困生活にある人は、子供、独身者、一人親世帯、先住民、新移民、障害者、高齢者、若者層、そして非白人系の少数コミュニティと言われています。

 最近の銃犯罪増加の背景には、こうした貧困で暮らす若者や少数コミュニティにいる人たちがその生活から抜けだせないことと関係があるのかもしれません。

 トロントの所得分布で低所得地域がU字となっていることと、トロント市警が発表している犯罪発生マップを重ね合わせると、犯罪の元凶は貧困にあるのではないかという気がします。

 オンタリオ州では最低賃金が大幅に引き上げられ、特に低所得世帯の所得引上げには貢献していると思いますが、トロント市では低賃貸住宅の大幅不足、諸々の物価上昇、そして依然高い若者の失業率など、問題は山積みです。オンタリオ州政府と共同して、特に貧困対策に本腰を入れて欲しいと思います。

 安全な生活環境と教育は、将来を担う子供たちへの社会投資です。そこに税金を使うことに文句を言う人は居ないと思いますが。


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白ふくろう

1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。