電気がない生活って!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第23回】

 日本では、9月上旬に大型台風直撃による大阪での停電、2日後には北海道の震度7の大地震による全道ブラックアウトがありました。これらの災害が発生するたびに思うことは、電気がないと今の生活が成り立たないということ。

 それほど生活に欠かせない電気ですが、オンタリオ州の電気事情をご存知でしょうか。

 2015年のデータでは次のようになっています。原子力発電58%、水力発電23%、天然ガス火力発電10%、その他9%。ご覧の通り、オンタリオ州ではその6割を原子力発電に頼っています
 総発電量は、160テラワット/アワーで、内143テラワット/アワーを消費、17テラワット/アワーを輸出しています。

 2003年の北米東部ブラックアウトのときには、オンタリオ州は電力を輸入しており、そのネットワークの影響もあって大規模なブラックアウトになりましたが、今は輸出するようになっており同じ原因でブラックアウトになる可能性は下がっているのかもしれません。

 カナダ全土で見ると、その電力の主役は水力発電で59%、原子力発電15%、(石炭を除く)天然ガス等火力発電10%、石炭火力発電9%(2016年データ)となっており、オンタリオ州の構成とは大きく異なっています。原子力発電に頼るオンタリオ州が特異な環境にあるようです。
 日本では、東日本大震災時の福島原子力発電所事故の後、原子力発電所はすべて休止され、その再稼働を巡って議論がされていますが、オンタリオ州では原子力発電が生活や経済を支えています。

 オンタリオ州には現在原子力発電所が3箇所あります。政府関連機関Ontario Power Generationが運営するピカリング原子力発電所(トロント市東30キロ。原子炉6基、内5基稼働)とダーリング原子力発電所(トロント市東60キロ。原子炉4基、内3基稼働)。そしてもう一つは、民営会社Bruce Powerが運転するブルース原子力発電所(ヒューロン湖岸。原子炉8基、内7基稼働)。

 白ふくろうは、福島原子力発電所事故の直後、NHKよりピカリング原子力発電所の取材とインタビュー撮影を依頼されたことがあります。発電所地域住民とトロントダウンタウンで道行く人に話を聞きましたが、人々の原子力発電に対するリスクの考え方は日本と大きく違い、原子力発電に対するアレルギーのような意見はまったくありませんでした。原子力発電がないと成り立たないことを知っているからでしょうか。

一人あたりの電力使用量では、カナダは世界一であること、ご存知ですか?

 2014年のデータによると、カナダの一人あたりの電力使用量は15,544キロワット/人・年。2位のアメリカが、12,962キロワット/人・年ですので、ダントツの電力消費量です。日本は7,829キロワット/人・年ですので、カナダの人は日本の人の約2倍の電力を使っていることになります。

なぜカナダの人はこんなに電気を使うのでしょうか。

 それは、電力料金が安いからと言われています。

 電気料金については、国別(2011年OVO Energyデータ・US$ Cents/キロワット)で見ると、ドイツ35、日本26、フランス19、米国12に対し、カナダは10となっており確かに安くなっています。
 しかし、オンタリオ州は電気料金が高いと言われます。それは、カナダ国内で州によって電気料金が大きく異なるためです。

 一般家庭電気料金(1,000キロワット/月・2016年ベース)を比較すると、バンクーバー$114.38、モントリオール$83.08に対し、トロント$201.23となっており、トロントを含むオンタリオ州が飛び抜けて高い料金となっています。

 主な要因はオンタリオ州政府の政策失敗です。

 オンタリオ州では、電力不足を補うために、1980年代から90年代に原子力発電所建設を進めましたが大幅予算超過となり、莫大な赤字費用を繰り越しています。その後プロジェクトをアウトソースしたのですが、その際締結した20年契約で、発電収入に関わりなく一定の利益保証をすることが盛り込まれており、現在の料金設定計算に含まれています。

 さらに、環境に配慮し石炭火力発電所3箇所を廃止、2箇所をバイオマス発電所に転換、天然ガス火力発電や風力発電、太陽光発電の建設を進めたため、それらのインフラ費用が嵩んでいます。

 結果、オンタリオ州の発電能力(2014年データ)は、30,203メガワットとなっています。平均電力需要が15,959メガワット、ピーク時23,000メガワットほどで、能力過剰。カナダでも省電力化や節電が進んでおり、電力需要は低下傾向にある中、こうした過剰設備の費用もすべて電気料金に織り込まれています。2006年〜2014年の間にオンタリオ州民が上乗せ負担させられた総額は37ビリオンと試算されており、今後2032年までにさらに133ビリオンを負担する必要があるそうです。

 これでは、オンタリオ州の電気料金が高いのは当然ですね。月々の電気代を減らすには、電灯、家電や冷暖房を省エネタイプに変え、世界一の電力消費要を減らす必要がありそうです。ただ電力需要が減ると、負担する期間が後ろ倒しになるだけで後世に押し付けることにもなります。さて、どちらがいいのでしょうか。


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白ふくろう

1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。