オンタリオ州の労働基準法がまた変わった!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第26回】

 オンタリオ州では、昨年6月の総選挙で政権が変わりました。新しい政権は、前政権の施策を撤回することを公約にして政権奪取を成し遂げており、その撤回施策が次々と出されています。その中に、雇用労働関係の施策があります。前政権はBill148“Fair Workplaces, Better Jobs Act, 2017”を2017年11月27日に成立させ、3つの法案の改定を行いました。

・Employment Standard Act, 2000
・Labour Relations Act, 1995
・Occupational Health and Safety Act

 これらの法案改定は20年ぶりとなるものでしたが、新政権はその主要な部分で撤回、見直しを行い、2018年11月21日に新しい法案Bill47“Making Ontario Open for Business Act, 2018”を可決、法案化しました。今回は、その再改定の中で多くの皆さんに影響がある部分についてご説明いたします。

まずは、最低賃金。

 最低賃金については、2017年10月より$11.60に上がった直後に、Bill148が法案化された結果、2018年1月$14.00に引き上げ、さらに2019年1月に$15.00、その後は2019年10月以降毎年10月に物価上昇率に応じた改定が行われることになりました。

 しかし今回のBill47では、この引き上げ予定を撤廃。既に施行されている$14.00については撤廃しませんでしたが、2019年1月の$15.00への引き上げ及び2019年10月の物価上昇分引き上げを凍結しました。次回見直しは2020年10月となっています。結果、2018年1月から2020年9月までの33ヶ月、最低賃金は上がらないことになりました。

 ただ、2017年10月に$11.60になって、2020年9月までの3年間で既に20%超上がっていますので、年率上昇率でみると単純平均で6%以上となり、カナダの賃金上昇率が年3%以下であることを考えると決して悪い上昇率では無い気がします。

休暇についてBill148では以下の改定が行われました。

 有給休暇について、5年以上勤続者には3週間の付与と6%の補償。そして新たにPersonal Emergency Leave私的緊急時休暇が設定されました。個人・家族親族の病気怪我など緊急事態を理由として、年間10日の休暇取得権利が認められ、内最初の2日間は有給とされました。この休暇取得については雇用主への通知は必要ですが、雇用主は理由を証明する医師の診断書やノートの要求はできないこととなりました。

 しかしBill47では、このPersonal Emergency Leaveが撤廃され、以下の3種類の休暇に変更されました。

・Sick Leave 病欠休暇 3日間
・Family responsibility Leave 家族病気緊急時休暇 3日間
・Bereavement Leave 親族忌引休暇 2日

 2日間の有給分はなくなり、全て無給の取得権利だけとなりました。また、休暇取得にあたり雇用主による医師の診断書やノートの提出要求も復活しています。

 Bill148施行で社内規定を改定し、2018年にこの2日間の有給休暇を取得した人もいることと思いますが、その人達はラッキーと言えるかもしれません。現時点でEAS上撤廃されていますので法的な権利はなくなっています。あとは社内規定がどう変更されているかでしょうか。

 その他、Bill148では以下の改定が行われましたが、これらはBill47でも変更はありません。

・Parental Leave 育児休暇が35週から61週に延長
・Critical Illness Leave 重篤成人家族介護休暇17週が新設
・Family Medical Leave 家族病気休暇28週に延長
・Domestic and Sexual Violence Leave 家庭内・性的暴力休暇最高10日及び15週(内5日は有給)が新設

 その他Bill148では、2019年1月からの施行予定で、96時間以内に勤務を要請された場合の拒否権、48時間以内の勤務をキャンセルされた場合の補償、通常3時間以上勤務している人が3時間未満で勤務を解かれた場合の3時間最低補償などが定められていました。

 しかし、Bill47では3時間補償はそのまま温存となりましたが、その他は撤廃となり、2019年1月以降も適用になりません。

 Bill 47でもう一つの大きな撤廃は、2018年4月から施行となっているEqual Pay for Equal Work同一労働同一賃金。雇用形態や雇用身分の違いを理由として、同一労働に対して低い賃金を支給することを禁止する条項でしたが撤廃とされました。この撤廃については理解できない部分もありますね。平等公平公正の理念に基づく世界的にも注目されている内容だったと思っていましたが、なぜ撤廃したのでしょうか。

 一方でPay Transparency Act, 2017が、2019年1月から施行になります。その注目点としては

・採用募集広告には、報酬額またはレンジを明記する
・採用主は採用候補者にそれまでの給与レベルを聞いてはいけない
・給与報酬についての苦情申し立てや、他の同僚などに自分の給与報酬を公開した者に対して報復措置をとってはいけない

 この趣旨は、職種に応じた適正な報酬を明示し、その条件を下回って採用することを禁止するものです。これまでは、採用面接時に過去、現在の報酬・所得を聞き、それをベースに低い報酬を提示するということが行われ、職種に見合った報酬を得られないというケースがあったようです。採用の時点から職種職責に応じた報酬を提示することで同一労働(職種)同一賃金を徹底しようという狙いのようです。この方式は雇用主にとっては非常に不安な部分もありますが今後の人材採用の標準になっていくのでしょう。

 これから就職、転職を考えている場合には、こうした雇用法の基礎はしっかりと覚えておいたほうがいいですよ。


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白ふくろう

1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。