世界がアートで満たされていったなら第17章

worldFilledwithArt_title


第17章「Bridge over troubled water アートで架ける『明日への橋』

world-filled-with-art01_10

Bridge over troubled water,
2013, mixed media performance at the disaster affected area of the Great East Japan Earthquake

9月11日。12年、それとも2年半?

日本の被災地では 復興の動きが活発化している。一方、被災地で生活する人々にとってその道程はとても長く感じられている。

出島(いずしま)という 自然豊かな島がある。全島が南三陸金華山国定公園に指定されているこの島は、宮城県女川町に属する人口300人ほど。本土より数百メートルの距離にありながら定期船で数十分、、、島民は橋を架けるという願いと共に生きて来たという。橋が架かるから、、、そう言われてお嫁に来た女性も少なくない。2年半前。漁業を主とする島の産業は壊滅的な打撃を受け、島の小、中学校は閉鎖され、子ども達や若者は皆、本土の仮設住宅へと移り住んでいった。残された島民は海辺から山中の仮設住宅へと移住し、現在では人口70数名にまで減少した。橋を架ける事で通学、通勤できるようにすれば、きっとみんな戻ってくる。「橋を架ける」のは、生き残りをかけた島民の悲願なのだ。

石巻アートリンク参加に際して、ぼくは島に橋を架けようと思った。本物は(まだ)無理なので、こころの橋を。こころの橋とは、人と人とを結ぶ事。島と本土、老人と若者やこどもたち、日本とカナダ、、、。繋いで行く事で先が見えてくる事もあるんだという抽象的な表現。

作品設置会場は町のシンボルだった、元マリンパル跡地近く。3棟の横倒しになった廃墟のビル以外には何もない広大な平地。瓦礫や他の建物は全て撤去されている。元漁師さんからいただいた網を敷いて、その上に女川に流れ着いた流木や使っていなかったキャンバスの支持体や廃材を金色に塗って橋を造った。しかし、完成した橋を見てもらうのではなく、誰かが橋を造り始めた、毎日こつこつと作っているというプロセスを約3週間に渡って見せるというパフォーマンス作品。大地に感謝、亡くなった方達への追悼、鎮魂のために京都からの2人による演劇落語とトロントから滞在制作をしていたカミーラ・シングに「働く人を応援するチアリーディング」を橋の上でしてもらった。観客はほぼ0人。誰もいない、何もない所だからしょうがない。そう思っていたら、実は復興のトラックや漁業関係者、町の人たちの交通の要所であったため、渋滞をも作りつつ、数百人の人々に作品を見てもらえた。「兄ちゃん、暑い中何作ってんだっちゃ?」「橋、出島にかける、あれ、つくってんだっちゃ!」「おー、がんばれっちゃ!」みたいなかけ声の日々。毎日、町の人たちがジュースを持って来たり、話に来てくれるようになった。無事に会期終了して、今ではまた何もないサラ地。アートで少しでも町の人たちに元気出してもらえたんだろうか?

被災地では、同県気仙沼市の大島に橋が架かる事が決まっているらしい。出島への橋は一体いつできるのだろうか。復興への道に彩りを加えながら、引き続き見守っていけたらいいなって思う。明日に向かって橋を架けながら。。。


Todady’s his Work

world-filled-with-art02_10Alice in Fukushima, 2012, digital photography

震災後の福島で撮影された福島大学卒業生のロリータをモデルにした写真作品。
福島の「今」を不思議の国のアリスの「好奇心」と「勇気」を持った体験と照らし合わせる事でアーカイブした作品。


daisuketakeya武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com