令和7年 新年の言葉「国際交流基金トロント日本文化センター 所長 山本 訓子」|特集「令和7年新年の言葉と特別インタビュー」
謹んで新年のお慶びを申し上げます。旧年中はご厚情を賜り、誠にありがとうございました。
2024年は、ウクライナや中東の情勢が混迷を極め、悲しいニュースが続きました。人口の約4分の1を移民が占めるカナダにおいては、国際社会の諸相は国内問題に映し出され、市内の多くの場所で平和を願う人々の切実な声が響きました。文化交流の先に国や民族を超えた人々の相互理解とより良い国際環境が広がっていくことを信じ、日本と諸外国の国際文化交流に携わる者として、今の状況を重く受け止めています。戦後80周年を迎える2025年、平和への祈りが続くことを強く願っています。
2024年は、カナダにおいて日本への関心の高まりを一層実感する年でもありました。カナダからの訪日客数は過去最高値を更新、また、カナダ国内の日本語能力試験でも過去最多の受験者数を記録しました。同時に、多くの文化人が日本から来加し、当センターでもデザイナー、画家、作曲家、漫画家、映画監督、作家、絵本作家、日本語教育専門家、研究者など、様々な分野の第一線で活躍する方々をご紹介する機会に恵まれました。日本とのゆかりの深いアルバータ大学高円宮日本教育・研究センターも20周年を迎え、私も記念式典に出席しました。過去の歳月を振り返りますと、ビジョンを実現するために尽力された多くの人々の存在があることを改めて感じます。価値観を共有する二つの国の信頼関係、そして協力的で実務的なチームワークの良さを多くの場面で目の当たりにしました。長年にわたり力強く歩みを進められている諸機関の皆様、そして新たにご縁を頂いた皆様とともに事業を進められたことに深く感謝申し上げます。
2025年は大阪・関西万博の年であり、歴代多くの日本映画が出品されてきたトロント国際映画祭が50周年を迎え、また2028年には日加修好100周年を迎えます。この大きな節目の年に向けて、文化のマイルストーンの一つ一つを大切にし、日本とカナダの文化交流の一層の発展に寄与するよう努めて参ります。1972年の設立以来、当基金は国際文化交流事業を専門的に推進する機関として、「文化」「言語」「対話」を通じて日本と諸外国との交流を推進して参りました。不透明感、不確実性が増す時代においてこそ、息の長い、長期的な視点の重要性が増しています。文化・日本研究・日本語教育機関における持続可能な基盤形成への支援を続け、人と人のネットワークを一層活性化させていくことを心掛けて参ります。
2025年が皆様にとって平和と繁栄に満ちた素晴らしい年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
国際交流基金トロント日本文化センター
所長 山本 訓子