美脚効果!?|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第91回】
先日、サッカー選手のトリートメント中に起こった出来事です。毎週定期的にコンディショニングをしているため、特に痛いところはありません。このような時は基本に戻って足首から丁寧に調整することにします。
足首の調整ポイント
1.足首の動作確認
足首を上下左右の4方向に動かして可動域や痛みの有無を確かめます。サッカー選手の場合、ダッシュ、ストップ、方向転換など足首に負担がかかる動作が多いので、最近のプレーの傾向から足首の異常を見つけることができます。
痛みなどの自覚症状がないこのタイミングでサインを見つけてあげるのがアスリートを怪我から守る秘訣です。プレーのレベルが向上している現代において、「足首が硬すぎるね!」「もっとストレッチして!」などのアドバイスをする昭和時代の対応では間に合わない状況にあることをアスリート本人、家族、セラピストも十分に理解するべきです。
質の高いコンディショニングをするのに一番大切なことは、問題箇所を正確に把握することです。
本人が訴える痛みなどの違和感は、原因となる問題点が引き起こした結果であることが多いです。すなわち、患者さんが訴える痛いところをいくら揉んでも、気持ちは良いが問題点が解決する可能性は低いのです。
これがマッサージは気持ちいいけど治らないと言われてしまう原因でもあります。
「気持ちいい」もマッサージセラピーの効能の一部なので否定はしませんが、特にアスリートに関しては気持ちいいマッサージは結果的に一時的に問題箇所をマスクしてしまうため、解決が遅れて問題を大きくしてしまう可能性さえあるので注意が必要です。
コンディショニングの観点からすると、痛みがあるからセラピストを訪ねるのでなく、痛みの無い時間の余裕のある時に訪れるのが、問題解決が簡単であり、何か見つけなくてはいけないセラピストにプレッシャーをかけて良いトリートメントを促すことからも効率的です。
2.足の形の確認
疲れの溜まった足や、きつい靴を履いている足は見た目が細くなります。疲れが溜まっている証拠です。足の形を見極めるのは、アスリートの体の疲れを判断するのに重要です。
色々な理由で細くなってしまった足のもたらす問題点は、
❷ 走る、跳ぶなどの動作を生み出すパワーが体に伝わり難い。
❸ 同時に足首が硬い可能性が高い。
などが挙げられます。足裏+足表マッサージなどで足をフニャフニャにしてあげると、上記の問題点が改善されてアスリートのパフォーマンスが上がります。
3.足の冷えの確認
足が冷えていないか、左右の温度差は無いかを観察します。足首の冷えは、下半身の一部で血行を妨げているのが原因であることが多いです。鼠蹊部あたりの緊張が主な原因で、このエリアの緊張は、同時に腰の硬さを意味しています。
無闇に足首ストレッチをする前に、最低限この3ポイントの確認をして自分の足首の何が問題で何をするべきなのか理解してからアクションを起こす事をオススメします。
サッカー選手の話に戻します。
このようなステップで質問しながら足首のメンテナンスを細かく丁寧に進めていると、メンテナンスしている左足の変化に気がつきました。左足が細くなって、綺麗になったように見えるのです。右足と比較すると明らかに細く見えます。
リンパマッサージで足の浮腫などをとるような美脚効果が期待できるアプローチをした覚えはないので不思議に思い、サッカー選手本人に続けて話を聞いてみると、最近ロングシュートを思いっきり蹴ることが多く、若干内腿に張りを感じると話が出てきました。
むりやり今回の美脚効果のストーリーと繋げてみると以下のようになります。
足首の調整ポイント
足裏のアーチに沿って1ポイントずつ深く探って筋っぽい物にあたるまで30秒ずつ押すだけです。
脚全体の疲れが最終的に溜まっているポイントを緩めてあげることにより、このポイントが硬いことが原因で関節的に緊張しているふくらはぎや、腿の筋肉が緊張する必要が無くなるので自然に脚全体の緊張がリリースされます。
ここで知っておいて貰いたいのは、この逆は起こらないということです!
このことからも、最初の見極めは私たちのような経験豊富なセラピストに任せて、実際のコンディショニング作業は自分で行うのが効率的と考えます。
足首の調整ポイント
スッキリ効果が見込まれるコンディショニング方法は血流やリンパ液の流れを良くするのがポイントです。膝や鼠蹊部、腰の緊張によって流れが滞るケースが多いです。
膝周辺のスッキリポイント
1. 膝上3点ポイント(横幅の広い腿の筋肉を満遍なくマッサージ)
膝上5cmくらいの高さ。横一直線上に真ん中・右・左と3ポイント深くセルフマッサージする。
2. 膝裏3点ポイント(膝裏にくっついている、ふくらはぎの筋肉をマッサージ)
膝裏、膝を曲げるラインより5cm下に、真ん中・右・左と3ポイントセルフマッサージする。
腰周辺スッキリポイント
体の中心である腰周辺の緊張を取るのも全身の動きを良くするので体の流れを良くするのに重要です。腰の動きの元となる関節の動きを良くするポイントは、お尻の奥の方の緊張を取ることです。
腰周辺をスッキリさせるのに有効なのが座って4の字ストレッチです。
1. 椅子に座る。
2. 片足を他方の膝の上に4の字に組む。
3. 上半身を真っ直ぐ伸ばしたまま腰から前に倒す。
4. お尻の奥の方が伸びるのを感じる。
5. 足を組み替えて同じ動作を繰り返す。
6. 上半身を前に倒す角度が大きくなるのを目標とします。
腰の関節が緩んで腰周辺がスッキリします。
今回の足首からスタートしたアプローチですが、足首だけでなく関連する部位をグループとして捉えて丁寧にコンディショニングしてあげることにより、問題視していた部位だけでなく体全体に予想外の好影響を及ぼす結果となりました。
コンディショニングにおいて一番大切なのは、いつも安定して良い状態を維持することなので「グループ化+パターン化」したアプローチは、問題点の見逃しを防止して良い結果を生む確率を高くする良い方法です(TAD式コンディショニングのコンセプトです)。
安定した良い状態を維持すると、アスリートの気持ちに余裕が生まれてプレー中のミスが少なくなり、好不調の無い強いアスリートを生み出すことになります。