TORJAビジネスレポート
ジェトロ「ジャパン・ビジネスセミナー」
3月3日 ヒルトンホテル
対日ビジネスの魅力やサポートのアピールと、保険・インフラへの投資を手がける年金基金・IT・自動車部品製造業と異なる4分野のカナダ企業によるケーススタディを通し、対日ビジネス経験や成功するためのポイントをカナダ企業の経営陣が解説。
ジェトロは3月3日、カナダ外務貿易開発省(DFATD)と共催で「ジャパン・ビジネスセミナー」を開催した。このセミナーは対日直接投資促進に向けた取り組みの一環として、カナダ企業に日本への関心を喚起するために開催され、セミナーには135名が参加し、日本市場・ビジネスへの関心の高さがうかがえた。
■対日ビジネスの魅力をアピール
ジェトロの加藤庸之理事が基調講演を行い、日本経済の現状として安倍政権の経済政策や、2020年の東京オリンピック開催に向けた経済展望等について説明した。また、投資環境として各地域の経済規模が国家レベルのGDPを有していることや、日本政府の対日投資促進施策として法人実効税率の引き下げや、構造改革、規制緩和について、データや図を用いて説明し、日本の投資環境をアピールした。
■資金やM&Aに関するサポートについて、実際の外国企業に対する事例を紹介
日本政策投資銀行の淵脇大樹ニューヨーク次席駐在員は、資金面やM&Aに関するサポートについて、実際の外国企業に対するサポート事例を交えながら講演をし、対日投資を検討しているカナダ企業の関心を惹いた。
■カナダ企業が対日ビジネスの経験と成功のポイントを指南
マニュライフ・フィナンシャルのポール・ルーニーCOO(保険)は、同社のカナダ以外からの収入は全体の2/3、そのうちの1/4は日本からの収入であり、現在は日本に120以上の拠点と2,700人以上を従業員がいること、対日ビジネス成功のポイントとして日本での経験豊富な専門家を組織に参加させることが重要だと述べた。
オマーズのジャック・ドゥメアーズ グローバルヘッド・インベストメントパートナーズアンドパートナシップス(年金基金)は、日本政策投資銀行(DBJ)や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と提携してビジネスを展開しており、日本市場への参入を検討する企業は長期的な視点でビジネスを考える必要性を強調した。
レッドニーソリューションズのヴィシャール・コターリCOO(IT)は、当初、同社は日本市場の参入に消極的であったが、日本に多くのビジネスチャンスがあることに気がつき市場参入を決意、拠点設立の準備のためジェトロのビジネスサポートセンターを利用した。対日ビジネスを通じて、日本のソフトウェア製品の販売やサービス提供方法について多くを学ぶと同時に、適切なビジネスパートナーを見つけ良好な関係を構築する重要性を強調した。
ウッドブリッジグループのハムディ・カーリルシニアグローバルディレクター(自動車部品製造業)は、既に日本で30年以上ビジネスを展開しており、パートナーの日本企業と良好な関係を維持していること、日本企業と直接ビジネスを行うことで日本独特の仕様や考え方を理解するのに役立ったと述べた。
■カナダ人にとって身近な企業が対日ビジネスを手掛ける
ジェトロ・トロント事務所の中村所長が、ジェトロが支援した対日投資事例を紹介し、講演会の最後は中村泰則トロント総領事が日本国政府として対日投資の推進と発展を期待するスピーチを行った。ランチを交えたビジネス懇親会で大勢の参加者は、講演者やジェトロ関係者とさらなる発展にむけた話に花を咲かせていた。
中村所長はセミナー後、「このようなセミナーは小規模なものは毎年開催してきましたが、今回のような大きなセミナーは2008年以来です。2020年までに対日投資残高を倍増するという日本政府方針のもと、カナダでも対日投資を行う企業は現在100社を少し超えた程度ですが、これからもっと積極的に活動をしていく予定です。今回のセミナーもこのプロモーションを通して、色々な企業との関わり合いを持てるなど、全体の対日投資活動の一役を担っていると考えています。」と語ってくれた。
カナダのみならず、世界でジェトロは、対日投資の促進を行うワンストップセンターとしての役割を担っている。多くの外国・外資系企業が日本進出や地方でのビジネス展開を行い、新しい技術や地域の雇用拡大の増大につなげてくれれば、されなる日本の発展を期待できることだろう。
本誌人気コラム「カナダでゲーム屋三昧」でもおなじみの中山淳雄氏が登壇
「LET’S PLAY: VIDEO GAME DEVELOPMENT IN JAPAN AND CANADA」
3月10日 ジャパンファウンデーション・トロント
Bandai Namco Studiosのバンクーバー法人のExecutive Vice President として、欧米向けモバイルゲームの開発スタジオ責任者を務める中山淳雄氏が3月10日にトロントのジャパンファウンデーションで開催された、成長著しいグローバル・ゲーム市場について解説する「LET’S PLAY: VIDEO GAME DEVELOPMENT IN JAPAN AND CANADA」に登壇した。
講演会のテーマは、ゲーム産業が昨年グローバルで814億ドルの市場となり、2017年には1029億ドルに達すると予測されており、どのように産業が強く成長し、またスピードの早い業界の中で将来どのような展望や戦略があるのかなどについて語られた。
登壇者は中山氏が日本のゲーム産業の歴史と成長、そしてグローバル市場における日本市場や企業の規模、PCから携帯電話、IPHONEなどのスマートフォンへのデバイスの移り変わりにおける世界のゲーム会社の取り組みや成長度、IPとの融合などをを語るとともに、Sheridan CollegeのDan Epsein氏はカナダのゲームや業界の変遷について講演をした。
中山氏は、「ゲーム業界において日本の位置づけが特異であり(日本から市場がはじまり、世界市場の5割以上を握っている)、毎度、海外市場での弱みがあることなどから、4〜5年のアドバンテージ後に存在感を失い、現在Mobile産業ではそういう状況にあること(日本企業の海外展開は今がラストチャンスです!)」ということを一番伝えたかったのこと。
同講演は、初日トロントでは120名、翌日はモントリオールでも開催され、90名参加した。中山氏は、「予想以上に参加者がいて驚きました。10年以上の歴史があるジャパンファウンデーション・トロントのカンファレンスで最も人が集まった会合となったようです。それだけ日本のゲーム市場というのは人々から期待を集めながら、日本人でこうした場に出てくることが非常に稀(Concordiaで日本人の講演は初みたいな話も・・・)という状況でしたので、とても手ごたえを感じました。日本人はせっかくよいコンテンツをもっているのだからもっと前に出ないと!という感覚を新たにしました。」と感想を述べてくれた。