【第9回】情報があふれる時代だからこそ、判断軸を持つ|カナダ生活の資産設計ノート
前号では、「コツコツ投資の力」をテーマに、無理なく続けられる積み立て投資についてお話ししました。では、投資を始めた後、長く続けるために必要なことは何でしょうか。
投資に関する書籍やSNSなど、以前と比べて手軽に学べる機会が増えました。「初心者でも簡単」「これを買っておけば大丈夫」といった情報も多く、投資を始めるきっかけが増えたことは、とても良い変化だと思います。
一方で、情報があふれる今、「何を信じればいいのか分からない」「みんなが買っているなら始めた方がいいのか」「この選択でいいのか」と迷い続けてしまう方もいます。
私は、投資で最も重要なのは、自分自身の判断軸を持つことだと考えています。例えば、何に投資しているのか、なぜその商品を選ぶのかを十分に理解しないまま始めてしまうと、市場が下落した局面で「やっぱり売却した方がいいのでは」「別の商品に乗り換えた方がいいのでは」と不安になりがちです。そのたびに新しい情報へ飛びついて売買を繰り返してしまうと、本来であれば時間を味方につけられるはずの資産形成が遠回りになってしまうことがあります。
市場は日々変動します。短期的な値動きに焦ったり、気持ちが揺れてしまったりする場合は、ご自身が受け入れられる以上のリスクを取っているサインかもしれません。長く続けるためには、自分の目的やリスク許容度に合った資産配分を考えることも大切です。
2月号でご紹介した生活防衛資金(Emergency Fund)も、この判断軸につながる考え方です。万が一に備えるための資金まで値動きのある資産で運用すると、急に物入りになった際、相場が下落していても資産を取り崩さなければならない可能性があります。生活防衛資金を確保しておくことも、安心して長く資産形成を続けるための戦略の一つです。
投資を始めると、「もっと良い商品や方法があるのでは」と迷ってしまうかもしれません。しかし、重要なのは、常に最適解を探し続けることではありません。
「なぜ自分はこの商品や方法を選ぶのか」を理解し、納得して継続できること。その判断軸こそが迷ったときに立ち返るための拠り所となり、次々と目にする情報に振り回されず長く資産形成を続けていく支えになるはずです。

泉 亜矢子 (Ayako Izumi)
オンタリオ州認定ファイナンシャル・アドバイザー。個人・法人向けに資産形成・保護・継承までを見据えたトータルプランニングを提供している。
Eメール : ayakoizumilin@crius.ca
オフィス : 100 – 175 Commerce Valley Dr W, Markham, ON





