【第10回】投資と保険―優先順位をつける前に考えたいこと|カナダ生活の資産設計ノート
「保険料を払うくらいなら、その分を投資に回したほうがいいですよね?」 こんなご相談をいただくことがあります。「保険は不要」「同じお金を投資に回せば資産は増える」という意見を見かける方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論を先に言いますと、投資と保険、どちらを優先するかを比較すること自体、あまり意味がないのかもしれません。まずは両方を検討の土台に乗せてみる。そのうえで、住宅ローンが完済している、お子さんがすでに独立しているなど、状況によっては不要なものが見えてくることもあるでしょう。

投資は、コツコツ積立て投資など、時間を味方につけて複利の効果を得ながら資産を育てていく運用を前提にお話しします。こうした資産形成は、教育費や老後の生活資金、休暇の費用など、将来の選択肢を広げるために有効な手段の一つです。ただし、いつも右肩上がりに増え続けるわけではありません。市場はこれまでも何度も大きく下落してきましたし、今後も暴落が起こらないとは限りません。それでも、アップダウンを受け入れながら長く続けることで、資産形成は期待できます。
多くの人は、投資で資産が増える未来は信じられても、自分や家族に保険が必要になる出来事は「ずっと先のこと」「起こらないだろう」と考えがちです。もちろん、起こってほしくないことから、目を背けたくなるのも無理はありません。それでも、いつ何が起こるか、それは来年なのか、数十年先かは、誰にも分かりません。保険は、そうした予測できない出来事から、積み上げてきたものや家族を守るための備えです。
もし、数年後に万が一のことがあったとして、今までと同じ収入や生活を維持できますか。その金額は、今の資産で賄えますか。一時的に賄えたとしても、資産を取り崩せば、資産形成計画は大きく狂ってしまう可能性があります。
投資と保険は、そもそも役割が違います。だからこそ、両方をバランスよく組み合わせておくことが、長い目で見ると安心につながります。
投資は「もっと早く始めておけばよかった」と思うもの。保険は「入っていてよかった」「入っていればよかった」と思うもの。どちらも、その価値が分かるのは未来です。
資産を育てることと、万が一に備えること、どちらか一方に偏っていませんか。一度、資産形成と保障のバランスを、家計とあわせて振り返ってみてくださいね。

泉 亜矢子 (Ayako Izumi)
オンタリオ州認定ファイナンシャル・アドバイザー。個人・法人向けに資産形成・保護・継承までを見据えたトータルプランニングを提供している。
Eメール : ayakoizumilin@crius.ca
オフィス : 100 – 175 Commerce Valley Dr W, Markham, ON






