黒葡萄から生まれる白い泡 ―ナパ・CHANDONという時間|食の編集部食べ歩きシリーズ#トロントグルメ部
黒葡萄から、白いスパークリングワインを造る——。そんな少し不思議な発想から生まれるのが、CHANDONの「Blanc de Pinot Noir」だ。
黒葡萄のピノ・ノワールを使いながら、果皮の色を移さず丁寧に搾ることで、透明感のある白へ仕上げていく。赤ワイン用として知られる品種だが、実はシャンパーニュでも欠かせない存在。その繊細な果実味を、ナパの陽光の中で表現した一本が、このCHANDONである。
CHANDONは、フランス・シャンパーニュの名門Moët & Chandonが1970年代にナパバレーへ進出して誕生したワイナリーだ。
ナパには、不思議な豊かさがある。世界的なワイン産地でありながら、どこか空気が穏やかだ。乾いた風。葡萄畑の静けさ。昼下がりでも、誰も急いでいない。その“余白”に、人は惹かれるのかもしれない。
グラスに注ぐと、泡は細かく静か。口に含むと、青リンゴや柑橘の爽やかさ、その奥から柔らかな果実味がゆっくり広がる。シャンパーニュの張り詰めた緊張感というより、カリフォルニアの陽射しを感じる味わいだった。
今回、ナパを訪れる価値を強く感じた理由がもう一つある。現在トロントでは、カリフォルニアワインを以前のように気軽に購入することが難しい。ワイナリーで話を聞くと、カナダからの観光客も以前よりかなり減っているという。だからこそ、現地で飲む一杯には意味があった。
その土地の空気、その場所に流れる時間ごと味わう。そんな“土地の記憶”を、このコラムに残せたことが、少し嬉しい。
















