【第42回】離婚裁判と公的資金援助|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
日本人がカナダで離婚するとき、その法手続の複雑さに驚きます。離婚届の提出で離婚が成立する日本と異なり、正式な離婚が受理されるまでの時間と費用に「カナダが異国であること」をあらためて実感することになります。特に自分や子供の法的権利を守るために必要不可欠である弁護士の費用は決して安いものではありません。
より多くの人が離婚裁判を弁護士に依頼できるよう、オンタリオ州には、リーガルエイド・オンタリオhttps://www.legalaid.on.ca/services/family-legal-issues/という公的機関があります。リーガルエイドについてエキスパート弁護士ケン・ネイソンズに聞いてみました。
裁判費用の公的支援
リーガルエイドとは、離婚裁判の費用が賄えない低所得者のための公的資金援助制度です。したがってその申請は低所得者に限られます。専業主婦であったため所得はなくとも、持ち家や車など、財産を持っている場合は、この制度は利用できません。収入はなくとも、財産を処分して弁護士費用を捻出することを求めらます。
配偶者名義の財産しかない場合や裁判開始時までに処分できる財産がない場合などは、裁判終了後、財産分与が成立した時点で「リーガルエイド支給額と弁護士費用の差額を支払うこと」を条件に、一時的な資金援助が認められるケースもあるようです(冒頭のリンクから詳細をご確認ください)。
収入証明(収入がないことを証明する公的文書)の提出は、リーガルエイド申請の必須条件となります。もっともこの収入証明は、離婚手続きの最初の一歩である「ファイナンシャル・ステートメント」の作成に必要となる書類ですので、収入証明である確定申告書や納税証明書は、リーガルエイド申請の有無によらず必要になります。
そのためには、たとえ収入がなくても確定申告を済ませておかなければなりません。もし確定申告を行なっていなかったなら、過去3年間に遡っての確定申告を行うことになります。
リーガルエイドと弁護士
リーガルエイドの最大の難関は、リーガルエイドを受け入れる弁護士を見つけることです。残念ながら、財産分与の可能性の低いリーガルエイド・クライアントを受け入れる弁護士は稀です。これには次のような理由が挙げられます。
まず、支給されたリーガルエイド・サティフィケートの時間内で裁判が終わらず、裁判を中断せざるを得なくなることを危惧する弁護士がいます。さらに「協議離婚のための代理人費用に充てることのできない」リーガルエイドは、法律に関わる者のポリシーに反すると考える弁護士もいます。
弁護士の最も大切な仕事は、「引き受けた案件が裁判に至ることなく解決するよう導くこと」ですので、「裁判費用以外に充てることのできないリーガルエイドは受け入れない」という弁護士は少なくありません。したがって、リーガルエイド・クライアントの依頼を受ける弁護士は大変少ないのが現状です。
裁判のための公的資金支援
繰り返しになりますが、リーガルエイドは裁判のための公的資金援助ですので、裁判所に支払う費用と裁判に伴う弁護士費用以外に充てることはできません。つまり、リーガルエイドの申請時点で裁判を覚悟する必要があります。協議離婚の際に活躍するミディエーターや低費用でタスクに関わることのできるパラリーガルの費用にリーガルエイドを使うことはできません。
さらに、リーガルエイド・クライアントに対し、弁護士は時間をかけて説明することが難しくなります。リーガルエイド・サティフィケートで与えられた時間は限られており、裁判書類の作成と裁判への出廷に充てなければならないからです。外国語で離婚手続きを経験する日本人にとって「何が何だかわからなくても、とにかく任せるしかない」というのは、たいへんなストレスとなるでしょう。
「裁判ではなく協議離婚を目指したい」「自分の意志をセパレーション・アグリーメントに反映させたい」と考えたとき、リーガルエイドは不向きであると言えるでしょう。
オンタリオ州での離婚(別居)は、一貫して日本語でお手伝いできるネイソンズ・シーゲル法律事務所へご相談ください。事情によっては弁護士費用の支払いを解決までお待ちすることも検討します(裁判の場合はこの限りではありません)。
「婚姻住宅や財産分与」をはじめとする家族の問題は、二名のエキスパート認定弁護士と日本人有資格者(オンタリオ州公認パラリーガル)が在籍する家族法専門法律事務所、ネイソンズ・シーゲルLLPにお任せください。
リモート相談は、次の手順で行っております。
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