【第43回】マリッジ・コントラクトとインディペンデント・リーガル・アドバイス|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
カナダでは、婚姻前にマリッジ・コントラクトと呼ばれる婚姻契約が交わされることが一般的で、再婚や夫婦間の経済力に差がある場合の必須アイテムとしてカナダ社会に浸透しています。
あらかじめ離婚条件に同意しておくことで、万一の離婚時の交渉や裁判に費やす精神的、経済的な負担を軽減しようというのがその目的です。
ところが、家族法弁護士のアドバイスを受けずに作成したマリッジ・コントラクトの有効性をめぐる裁判は後を絶ちません。その理由についてエキスパート弁護士ケン・ネイソンズに聞いてみました。
離婚と経済
離婚時に決定しなければならないお金の問題は二種類あります。サポート・ペイメントと財産分与です。
離婚後、収入の多い配偶者が収入の少ない配偶者の生活を守るため、金銭的なサポートをすることが義務付けられています。子供がいた場合はこれに養育費が加わりますが、養育費についてはマリッジ・コントラクトで決めておくことはできません。
一方、夫婦は結婚後に蓄えたそれぞれの「婚姻財産」を当分しなければなりません。結婚前に所有していた財産は婚姻財産に含まれませんが、夫婦の自宅は、たとえ夫婦のどちらかが結婚前から所有していたとしても婚姻財産とみなされます。
しかし、トロントのように自宅が高額である場合、最大の投資である自宅を婚姻財産とみなすことは、不公平である場合もあるかもしれません。マリッジ・コントラクトでは、それぞれのカップルのそれぞれの事情に沿った条件に合意しておくことができるのです。
自宅への投資
多くの人々にとって、最大の財産は自宅です。マリッジ・コントラクトでは、夫婦の自宅となる不動産が配偶者の一方により結婚前に取得されていた場合、婚姻財産から除くことを取り決めることができます。
しかし若いカップルであっても夫婦のどちらかの家族が自宅購入のために多額の資金を贈与した場合「自宅に関する取り決め」は必要でしょう。
本来は、結婚後に受け取った贈与や相続は婚姻財産には含まれず、離婚時の財産分与の対象にはなりません。ところが、贈与や相続で受け取った資金を自宅のローン返済やリノベーションに投資したとたん、財産分与の対象となるのです。
たとえば、贈与資金を自宅に投資した場合、それが婚姻財産から除かれるよう決めておくことで、家族からの資金援助も受けやすくなるはずです。
インディペンデント・リーガル・アドバイス
せっかくマリッジ・コントラクトを作成したのに、離婚時にそれが無効であるという判決を受けることも少なくありません。なぜそのようなことになるのでしょう。
マリッジ・コントラクトに法的効力を与えるには「署名時、その内容を十分理解できていたかどうか」が問われます。そのためには「当事者双方が別々の家族法弁護士からアドバイスを受けた」と証明するインディペンデント・リーガル・アドバイス(ILA)証明書が必要になります。
弁護士費用を節約するため「ILAを放棄する」という同意書に署名するカップルもあるようですが、この放棄同意書も裁判で撤回される可能性があるため十分な注意が必要です。
また、当事者間で作成したマリッジ・コントラクトには「経済の完全開示」が欠けていることが多いのですが、これこそが、マリッジ・コントラクトが無効になる最大の原因なのです。
経験豊かな家族法弁護士が作成するマリッジ・コントラクトであれば、離婚時にその法的効力が問われることはありません。さらに、英語を母国語としない人のマリッジ・コントラクトには「母国語で説明を受け内容を十分理解した」という証明書も必要となりますので、日本語でのサポートは欠かせません。
「マリッジ・コントラクト」をはじめとする家族の問題は、二名のエキスパート認定弁護士と日本人有資格者(オンタリオ州公認パラリーガル)が在籍する家族法専門法律事務所、ネイソンズ・シーゲルLLPにお任せください。
リモート相談は、次の手順で行っております。
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