カナダメディアが報じたコロナ禍の日本社会と緊急事態宣言後の状況
カナダのメディアCBCの特派員がコロナ禍にある日本の現状をカナダと比較しながらレポートした。4月28日に配信された記事によると日本の人口はカナダのおよそ3倍であり、日本は高齢化社会であるにも関わらず、感染者数はカナダの3分の1にも満たない世界的に見てもまだ少ない状況に注目している。
緊急事態宣言後の日本の現状
記事では、カナダも含め世界各国の政府が新型コロナウイルス感染拡大の速度を軽減させるために比較的厳しい規制を行なっている中、日本では規制に関して法律による強制力はなく要請ベースであることを紹介している。
事実、閉鎖中や立ち入り禁止となっている場所は増えており、政府による外出自粛要請に応えない人々は他から厳しい目で見られたり、ビジネスにおいてはバッシングを受けたりもしているが、国の緊急事態宣言後も罰金が科せられることはなく、人々の生活の変化は急激というよりも少しずつだとしている。
また、普段から長時間労働といった労働文化で日本は知られているが、リモートワーク・テレワークを始める企業も増えており、朝の通勤ラッシュは50~70%程度の減少が見られているとしているが、他方で公共での人々の物理的距離が必ずしも安全に保たれているわけではないと報じた。
少ない感染者数と予防対策
記事によると、日本の人口はカナダの3倍以上で60歳以上の人口は全体の30%以上と高齢化社会であるにも関わらず、感染確認件数は現時点で1万4000強とカナダの件数の3分の1にも及ばず世界的に見ても少ない方であるとしている。また、確認されている死者数は約400人とニューヨークなどの大都市で毎日確認されている死者数よりも圧倒的に少ない。その裏には様々な要因があるが、特に懸念されている事は国がウイルスの感染検査を行っていない・行えていないことだと伝えている。
日本では国内の医療従事者は感染がほぼ確かである患者も検査を受けることができないこともしばしばあると語り、他国と比べてもその検査実施数はかなり限られている。統計調査によるとカナダは今月27日の時点でおよそ73万3千の検査が実施されてきたのに対し日本では約23万3千件であるという。
一方で日本政府は、ウイルスの感染が確認された人と接触したことを通知することができるアプリの普及を近々予定している。これはシンガポール政府が開発したアプリでオーストラリアでも普及が開始されており、イギリスやドイツでも使用が検討されている。このアプリによって国民に対して注意喚起を行うことができ、ウイルスの感染拡大の予防として期待されるとした。しかし、感染が確認された人もその接触者も両者がアプリの利用者であることが前提であるため、個人情報漏洩の防止策や保健当局との連携の確立が必要とされている。
営業自粛要請などによるビジネス面での影響
ビジネス面では、特に中心地にあるレストラン、バー、小売業者などにおいて、引き続き営業を続けている場所がたくさんある。基本的に日雇いが多いため都市全体のロックダウンへの反対が強いと紹介した。
店の開店を続ける東京の寿司屋が紹介され、その中でオーナーは、危機感が比較的低い日本社会でウイルスの怖さももちろんあるが、自分たちが生活していくために必要な費用を稼いだり、従業員も養っていかなければならない心境を語った。
一方でトイレットペーパーなど必需品を輸送するトラックの運転手は、通常以上に長時間労働が続いており体を壊す寸前であると述べた。また、都内の魚市場での需要が急激に減った漁業は大きな影響を受けており、皆が一刻も早く少しでも以前のようなレベルに戻ることを祈っているという。
輸出ベースの産業も他国のロックダウンによって大きな打撃を受けている。ここ何週間か閉店している店舗も多くあるが、もし政府が緊急事態宣言の延長をしても店を閉め続けるかは定かでないビジネスがほとんどだと述べた。政府は経済対策として39兆円の財政支出と事業規模108兆円の緊急経済対策を発表したが、それでもたくさんのビジネスが不安を募らせている現状を紹介している。
日本社会と新型コロナウイルスへの危機感
都会から地方への移動が自粛要請されていることもあり、その結果都会と比べ感染率が低い田舎では人々の生活にそれほど変わりはないとした。しかし最もウイルスの影響を受けやすい高齢者の姿は街中でそこまで多く見かけられないとし、ウイルスによる死者数のおよそ60%が65歳以上の高齢者であることも影響し、多くの人が自宅待機をしていることが考えられるだろうと述べた。
また、若い人も政府の強制力がなくても自ら自宅待機などで物理的距離をおく人々がたくさん増えてきていることは確かだとした。一方でニュースなどでは公園へお花見に出かけたり、ビーチに訪れる人、買い物に家族連れで行く人がまだ多いと報道されており、都内近郊の海岸ではサーフィンを楽しむ人々の姿も見られたと紹介した。
統計では20代の人口が感染率の高いグループの一つであることが明らかになっているが、まだ自身の年齢が若いのでウイルスの脅威は少ないと述べるサーファーもいたという。
特派員によると、COVID-19パンデミックの影響は日本でも確実に出ているものの、政府や人々の危機感や社会全体の雰囲気は世界各国と比べて明らかに異なる場面が多いと見受けられるとレポートは締められた。
本文=TORJA特派員 川田英奈