毎月2000ドルが支給されるカナダの緊急支援金制度CERB、条件を満たさない申請や不正受給の問題と政府の対応
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カナダのCBC NEWSによると、新型コロナウイルスの影響によって失業した人などへのカナダ政府の支援策で、最大4ヶ月・月2000ドルが給付される「Canada emergency response benefit (CERB) 」は、先週の時点で申請者が700万人を超えているが、中には申請条件を満たしていないのに月2000ドルの支給を受けている人も多数いることが報じられた。
長期的に見れば自らに損害をもたらす可能性
カナダ税務局職員によると不正受給はたまに発覚することがあるといい、例えば年金を受け取っているシニアで自分と成人した体の不自由な子供二人、合わせて三人分を申請し支援金を受給しているが、全員がCERBの申請資格は満たしていないという状況を目にしたという。ケベック州の刑務所では受刑者にこの支給が小切手で届き、看守によってそれが途中で捕らえられたという。
条件を満たさない人の中には、それでも申請するよう周りの家族や友人から勧められることも多く、そこまで条件を考慮していなかったり、プロセスの抜け道を探ったりする人もいることが明らかになっている。さらに多くの人がこの手当は課税の対象になることや、受給によって今後の税額控除や所得保証の補正制度など他の手当を受けることができない可能性があることに気が付いていないという。
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報道によると、オンタリオ州在住クレジットカウンセラーのコックバーン氏は、就業不能保険を受け取っており、CERBの条件に満たないもののその手当も受給していた人を例に、すぐに返金をしなければ将来的には、就業不能保険や住宅助成などに影響が出る可能性を述べた。コックバーン氏によると、娯楽のためにCERBを受け取っているという人はほとんどおらず、パンデミックが続く中で食費や公共料金など溜まった生活費などの不安から危機感を募らせ申請をしている人がほとんどだという。しかしその上で、条件を満たさないで給付を受け取る人は長期的に見れば自らに損害をもたらす可能性があることを心配している。
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カナダ政府と税務署の対策
カナダ政府はもともとCERBに関して、一刻も早く給付金が支給がされることに重点を置いたことから、わずかの質問で申請者のほとんどが給付を受領できる簡単なプロセスにしたため、ある程度の詐欺・不正行為の危険性は認知していたと言われている。
雇用・労働力開発・障がい者インクルージョンのカーラ・クワルトロー大臣によれば、普段なら1%以下の詐欺率が見られているが、CERBではその危険性・不正の確率が上がる予測であることも認めている。また、その数は不確かであるものの、実際にこのように申請資格がない人も手当を受け取っているという問題は多数報告を受けており、税務局によって確実に捕らえられるように整備しているとのことだ。
しかし専門家によるとこの大規模なCERBやパンデミックによる他の債務救済措置などもあるため、例えその詐欺率が1%でも何十億にものぼる影響が政府に及ぶと考えられるとし、このような不正行為は今後も増える可能性があると指摘する。
クワルトロー大臣は、システムの乱用がないよう政府も社会保険番号を利用して過度の受給がないか、2つ以上のプログラムから支給がされていないかを管理するなどあらゆる対策を取っていることを明らかにしている。さらに来年、今年度の確定申告を行う際に実際の収入と申告を比較することができるため、不正がある場合はその時に発覚することもあるとしている。
*5月12日アップデート: トルドー首相も詐欺の申請について取り締まることを明言
CBC NEWS: Prime Minister Justin Trudeau says the government will take ‘retroactive action’ to deal with fraudulent COVID-19 benefit claims.