カナダ生まれの紅茶屋さん「DAVIDs TEA」モントリオール発のビジネスモデルに迫る【企業研究】 | カナダ・トロント今年はティーブームの予感。特集「紅茶、飲む?」
2015年ナスダック上場、現在アメリカを合わせて236店舗を展開するモントリオール発のビジネスモデルに迫る。
■DAVIDsTEAとは?
DAVIDsTEAは、フレンドリーかつ最高級のカスタマーサービスと共に様々な種類の茶葉や、ティーカップ、ポットなどのティー製品を取り扱うカナダ内最大規模の茶専門店である。2008年に起業家のデービッド・シーガル氏といとこのハーシェル・シーガル氏によって設立され、本社はケベック州モントリオールに位置する。
同年、トロントのショッピングストリートとして常に活気に溢れているクイーンストリートに一号店をオープン。その後たちまちトロントニアンの人気を呼び、そのコミュニティに欠かせない一部となっていった。現在ではカナダ内のみならずアメリカまで200を超える店舗を構え、北米の各地域・コミュニティに拡大している。
■現在の企業規模
2016年の時点でカナダ全国に193店舗を所持し、トロントやモントリオール、バンクーバーなどの都市だけでなくケベック州リモースキ、ノバスコシア州ハリファックス、ニューファンドランド州コーナーブルックなど国内の比較的小さい町にも注目しながら店舗の拡大を進めている。
さらに、2011年にアメリカへ進出し、現時点では42店舗ビジネス展開している。2017年の時点ではカナダ、アメリカ合わせて236店舗を経営している。
■なぜティー?その魅力とは?
お茶を専門に販売することについてDAVIDsTEAは、そのヘルシーさ、美味しさ、そして楽しさを理由として語っている。DAVIDs TEAによると、お茶は世界中の人々を一つにすることができ、地球上で水の次に最も人気の飲み物である。プレミアムなお茶を全ての人に提供することによって人々を幸せにしたいという思いが込められている。
取り扱う茶葉は驚くことに150種類以上で、世界中から取り寄せた伝統的な紅茶や緑茶だけでなく、例えば人気のRead My Lipsというチョコレート、ペパーミント、唇の形をした赤いキャンディーが散りばめられた甘めのブラックティーなどDAVIDsTEA独自にブレンドされた茶葉や、カロリーフリーのクリスマスクッキーが入ったルイボス茶などの季節限定コレクションなど数えだすとキリがない程の茶葉を用意している。
それぞれの茶葉に20〜30の種類があり、抹茶だけでも10種類揃えている。さらに、リラックス、デトックス効果、オーガニックなど健康・美容に気を使った茶葉も扱っている。この種類の豊富さ、テイスト、そしてブレンドされたユニークな材料がDAVIDsTEAの強みである。
それに加えて様々な茶葉がセットになったギフトや、ティーマグ、水筒、タンブラー、スプーン、インフューザーなど、お茶を飲む上で欠かせない製品をシンプルなデザインから花柄の可愛らしいもの、さらに季節やホリデーに合わたデザインまでそれぞれの消費者に合うようにたくさんの種類を用意している。
■店舗のこだわり
ショッピングセンター内にある店舗は基本的に75〜78平方メートル、通りに面した店舗はお手洗いなどの設備のために約92平方メートルの広さが理想とするなど、各店舗置かれた場所が違ってもこだわりがある。
前CEOシルヴェイン・トゥターン氏によると、それぞれの店舗は消費者が様々な感覚を体験できるようにストアの環境を作り整えているという。
消費者がお店まで足を運ぶために費やした貴重な時間の分、何か価値のあるものを提供するために、茶葉の香りサンプルやお茶のテイスティング、ずらりと並んだたくさんの種類の茶葉やカップなどの製品、そしてフレンドリーでお茶に精通しているスタッフによるアドバイスなど五感を使ってDAVIDsTEA全てを楽しめるようになっている。これこそがDAVIDsTEAにとってお茶のパワーであり幻想的なリラックスできる空間だという。
店内では、茶葉やティー製品の購入だけでなくカフェのように実際にその場で淹れられたお茶を楽しむこともできる。テイクアウトはもちろん、店内で味わえるようテーブルと席が用意されている店舗もある。また、ストレートティー以外にもラテなどの飲み物、チョコレートやカップケーキなどの軽いスイーツも置かれている。
■ビジネス成功への鍵
また、大手ライバル社が数多く存在する飲料業界でさらにビジネスを展開していくために、プロダクト目線に加え顧客目線でもそのニーズに応え求めているものを会社が届けていく重要性も語っている。そこからマーケット調査、アンケートなどを行いデータ集め、新しいウェブサイトの稼働も始めた。
これによってDAVIDsTEAは、店舗からの直接購入だけでなく簡単にショッピングができるオンラインでのオーダーを開始しeコマースに拍車をかけていくことを決定。
しかし、マーケティング・eコマースのトップ、キャサリン・ラポルテ氏はお店で実際に体験できる楽しさやユニークさ、ハイクオリティのコンビネーションをオンラインショッピングで再現する難しさを顕にした。まず重要なのは誰が顧客なのか、ニーズは何か、そして彼らがどう行動するのかを見極めることだという。
そのためにも様々な方法を使ったデータ収集がeコマース、そして今後のさらなるDAVIDsTEA成功への鍵となる。そこから、特定されたデータを使ってDAVIDsTEAの〝ファン〟を知り理解するというビジネス戦略を進めている。
さらに、これからの望ましい顧客の特定にも力を入れている。ターゲットを絞りDAVIDsTEAの促進のためにもFacebookやInstagramなどのSNSを使う戦略だ。
また、顧客が店舗へ足を運ばなくなったりオンラインオーダーをしなくなったりしたらメディアを使ってメッセージを配信することできっかけを作る。実際にSNSの更新はほぼ毎日行われているほど活動的だ。
加えて、直接交流を通してWebページやオンラインショッピングも推進するなど店舗での直接のアプローチも大切だという。
■Me to Weとの連携を通じた社会貢献
2016年から革新的な社会企業Me to Weとタッグを組み、パイナップル、りんご、ハイビスカス、イチジクの実、クランベリーがブレンドされたノンカフェインティー「Me to We Tea」と、「Me to We Rafikiブレスレット」の販売を開始。
「Rafiki」とはスワヒリ語で「友人」という意味を指す。Me to Weは、環境に優しい服や本、アクセサリーなどのプロダクトやボランティアトリップなどの経験を提供することによって、消費者の毎日の消費選択や〝自分〟中心の考え方から〝私たち〟目線で行動するシフトチェンジをもたらすことによって世界を変え、社会全体に良い影響を与えていくことを目的としている団体である。
売り上げの半分はWe Charityに寄付され、このWe Charityが行う世界中の貧しい地域での学校建設、教育普及、水・衛生設備の設置プロジェクトなどチャリティー活動を通してコミュニティを活性化させ世界の貧困問題に取り組んでいる。
今回のDAVIDsTEAとMe to Weの連携を通じて、DAVIDs TEAは「Me to We Tea」と「Me to We Rafikiブレスレット」のそれぞれの売り上げ全てを使い綺麗で飲料可能な水を新興国コミュニティ、ケニヤのそれぞれの人に寄付している。
綺麗な水を提供することによって病気を減らし、子供が水を汲みに行くための時間が教育を受ける時間に代わることが、よりよい農業の促進に繋がるため、食糧へのアクセスが良くなるなど、コミュニティ全体の利益に貢献することができる。
昨年のクリスマスには期間限定ストアをオープンしMe to We Teaの売り上げに加え募金を寄付。現時点で4万人以上の人々に1年分の綺麗な水を提供することに成功し徐々に結果を見せている。
■今後のビジネス展開
2014年、DAVIDsTEA創設者のデービッド・シーガル氏とハーシェル・シーガル氏は会社を次のステップに導くためにアウトサイダーを内部に連れてくることを決定し、シルヴェイン・トゥターン氏が同年CEOに就任、現在はCEOにジョエル・シルバー氏が就任中である。
今後のビジネス展開としては、以前から様々なインタビュー内で、今後5年から10年のうちにカナダ国内で230店、アメリカに320店、合計約550店舗を獲得することを目標に語っている。
そのために都市・郊外・比較的小さい規模の町のアウトレットセンターやショッピングモール、ライフスタイルセンター、空港などにもさらにストアをオープンしていくことを検討している。
しかし一方で、海外進出はどんなに成長している企業でもそう簡単なことではない。2017年度の第二四半期は、アメリカ内の店舗で売り上げが伸びているにも関わらず赤字を出す結果となった。ジョエル・シルバー氏はアメリカのいくつかの弱まっているストアを閉じ、新しくオープンするストアについては戦略を練って慎重に選択していくことを語っている。
アメリカ進出に関してはまだ展開途中で改善プランは始まったばかりだと前向きだ。前CEOシルヴェイン・トゥターン氏は、カナダ国外のビジネス展開について、海外進出成功のためにまず一番初めに見極めないといけない重要なことはその国に関して何が分かっていないのかを理解することだと語った。
※統計資料・画像はDAVIDsTEA HP / IR資料より。