第94回 顔の見えるコミュニティー の話|トロントの多様性をクリエイティブに楽しむ
昨年末、プライベートで大きな変化があり、長年暮らした住まいを変えることになりました。
かつては、自分が住む環境や、近所に暮らす人々の生活に対してそれほど強い関心を抱いていたわけではありませんでした。しかし、年齢を重ねた今、ふとその土地が持つ歴史や固有の特徴、そしてそこで営まれる日々の暮らしそのものに、深い興味を惹かれるようになっています。
これは、誰もが内省を余儀なくされたコロナ禍を経てのパラダイムシフトかもしれません。あるいは、あらゆるものがデジタル化していくAI時代だからこそ、逆に「血の通った人間の気配や暮らし」を本能的に求めている証拠なのかもしれません。
自分の本業では、時に社会的なインパクトを伴う大きなプロジェクトを手掛けることもあります。それは非常にエキサイティングで、やりがいに満ちた刺激的な仕事です。しかしその一方で、「自分たちの手が届く小さなコミュニティーで、手作りのイベントを企画したい」という想いが、常に頭の片隅に小さく灯り続けています。
そんな場所をつくったところで、正直に言えば大きなビジネスになるわけではありません。それでも、せっかく縁あって暮らしている街だからこそ、周辺の歴史を知り、近隣住民の方々と「顔の見える関係」を築けるようなローカルイベントを立ち上げたいと思い立ちました。
幸いなことに、この想いに共感してくれたアソシエーションのメンバーには、大手デベロッパーで街づくりを先導するプロフェッショナルや、エンタメ業界の先輩、そして先進的な取り組みを支援してくれる企業の担当者など、心強い仲間が集まってくれました。最高のチームと共に、いよいよ新しい一歩を踏み出せそうです。
グローバルな大きい経済圏での挑戦を楽しみつつ、ローカルな小さい経済圏での温かい営みも大切にする。この二つの視点を軽やかに行き来しながら、自分たちの試みが、この街に暮らす誰かの小さな「新しいきっかけ」になればと願っています。















