第95回 ソウルへ。|トロントの多様性をクリエイティブに楽しむ
あるプロジェクトの一環で、海外の最先端エンタメを追うリサーチが続いています。今回の舞台は、韓国・ソウルでした。
目当てのひとつは、ニューヨークで一世を風靡したイマーシブシアター「Sleep No More」のソウル公演。結論から言えば、これは日本での再現が難しい類の作品です。演者は全裸での演技も厭わず、その覇気とクオリティは圧倒的。表現の許容範囲や安全基準を思えば、ここまでの没入感を国内で立ち上げるのは、そう簡単なことではないでしょう。
そして何より印象的だったのが、終演後です。観客はそれぞれ異なるルートを辿るため、同じ公演を観たはずなのに、記憶に残っている場面がまるで違う。だからこそ、参加者同士が自然と語り合い始めるのです。幕が下りた瞬間から、もうひとつの体験が静かに始まっている。そんな感覚がありました。
もうひとつの目的は、Gentle Monsterが手掛ける「HAUS NOWHERE SEOUL」に代表される、店舗そのものを飲み込むような巨大なインスタレーションの数々。アジアにおいて、韓国は依然として最も熱を放つ場所であり続けています。
今回は一日前乗りをして、韓国最大級のロックフェス「仁川ペンタポート・ロック・フェスティバル2026」にも足を運びました。会場設計そのものは、正直なところ日本と大きく変わりません。唯一、明確な差を感じたのが飲食ブースの決済キオスクです。注文と支払いが一箇所に集約され、購買データも同時に蓄積されていく。運営の意思決定を支える仕組みとして、実によくできていると感じました。
そしてもうひとつ。韓国の人々の愛想の良さ、いわゆるソフトサービスの質の高さです。テクノロジーで効率を極めながら、人の温度は決して手放さない。この両立こそが、フェス滞在の心地よさを底上げしていたように思います。
近ごろはフェスのオンサイト施策のプロデュースに携わる機会も増え、滞在中の空間設計やブランド体験のあり方を考える日々が続いています。場のあり方と、人と人とのコミュニケーション。それを軸に仕事をしてきた自分にとって、今回の旅は示唆に富むものでした。
隣国でありながら、政治も文化もまるで異なる。とりわけ近年は、アメリカ的とでも言うべきか、資本の匂いを色濃く感じます。そのすべてを模倣する必要はありません。ただ、優れた部分は貪欲に取り入れていきたいと思うのです。
















