中学3年生の時に日本から家族と共にトロントに移住。言葉の壁を乗り越えトロント大学を経て、4大会計事務所デロイトに入社し公認会計士となる
中学3年生の頃に日本から家族と共にトロントに移住してきた彼女が、トロントでの生活を通して、言葉の壁を乗り越え、トロント大学に入学し、4大会計事務所デロイトに入社し会計士となる。迷ったときは、自分が何をやりたいのか自問自答しながら、現在会計士としてビジネスの世界で走り始めた彼女の軌跡を追う。
■整理整頓が大好き。物事がロジカルに進むことを好み、小さな頃から数学が得意!
中学2年生まで日本の学校に通っていた私は、2006年に家族とともにトロントに移民してきました。中学3年生からはこちらの学校に通いました。最初は英語の問題などもありましたが、すぐに適応し、高校卒業後はトロント大学に入学しました。
もともと整理整頓や物事をロジカルに運ぶのが好きで数学も得意だったので、高校生になった頃には会計そのものに興味がありました。会計士を志す具体的なきっかけは、高校2年生の頃に会計のクラスを受講したことです。クラスの一環で、CPA(Chartered Professional Accountants of Canada)の会計協会の方が来てくださって、会計士の職業について色々とプレゼンをしてくれたのですが、その時に強く興味を持ちました。そしてそれから会計士になりたいと思うようになり、大学の専攻も会計学を専攻したので、今に至るまでは高校生の時の考えからそのまま一直線で進んできたという感じですね。
■会計士を目指しスマートに物事を進めてきたが、一度壁にぶつかり、自分を見つめ直し、本当に何がやりたいかをじっくり考えた。
私は幸運なことに卒業直後に就職できたので有難いなと今は思うのですが、大学3年生の時、みんながインターンシップを探し始めた時、私は会計事務所のインターンに一切受かりませんでした。これは今後インターンなどを探す方にも参考になると思うのですが、今振り返ると、おそらくそれまでのネットワーキングだとか、人事の方や各会社の社員の方と顔を合わせる機会をあまり設けてこなかったことが理由かなと思います。
やはり他の業界もそうだと思いますが、私が目指した会計・監査業界も人と人との繋がりがとても重要で、特にスターティング・ポジションはそこを重要視されます。リクルーティングの時期が3年生の初め9月頃なのですが、それからの1年間は自分を見つめ直して、自分が本当に何をやりたいのかというのをじっくり考えました。
■就職はカナダを選び、ストレートで会計士試験を合格。
就職に際しては、実は日本で働くことにも興味はありましたが、もうトロントに慣れていましたし、長く住むならトロントがいいなと思っていたので日本での就職活動は特に視野に入れませんでした。デロイトに就職を決めた理由は、大学のリクルート・サポートの一環で、いろいろな会計事務所の方とお話をする機会があったので、それぞれの会計事務所の社風やシステムなどの理解を深めることが結構できていました。その中でも社員の方と話をしていて1番話が弾み共感できたのが、デロイトでした。デロイトの方々と出会っていくうちに、仕事を真面目にこなしながら、素顔はユーモア溢れるキャラクターの方が多いなという印象を抱きました。
デロイトに入社した際には、人事の方に日本に行く機会や日系企業の仕事のチャレンジの可能性などを相談しました。その経緯で、ジャパン・サービス・グループの方々と関わり合いを持つことができ、今年は数ヶ月間、東京オフィスに出向し、働くことができました。上司や同僚の方はもちろん、クライアントの方もとても優しい方々だったので、本当に良い経験ができたなと思っています。
■入社・監査業務につき3年。常に意識を高く目標をもってきた彼女の今後。
現在はパブリック・カンパニー(株式公開企業)の監査業をしております。監査は一般的にあまり感謝されるお仕事ではないのですが、やはりなくてはならない業務だと思っています。必ずこれを必要としている方がいるので、その人たちの視点に立って、会社のプロセスが本当に正しいのか、エラーがないのかというのを見極めていくことにやりがいを感じます。
今後に関しては、現在3年目なのですが、少しずつ業務への理解が深まっていて、なおかつ周りの方の別の業務を見るにしたがって、どんなキャリアを積んでいこうかと本当に悩んでいます。日々、もう少し先を見据えて考えたいなとは思っているのですが、今は日々の忙しさに忙殺されているといいますか、なかなかじっくり考える機会がない状態ですね。
ただ、はっきりとしたタイムラインは決めていませんが、キャリアとしては仕事をしていてやりがいを感じなくなったときはきちんとそれを認めて次の策を企てないといけないとは思っています。なので、本当に自分がやる仕事は自分の中で楽しめるものでキャリアを積んでいきたいですね。それがずっと監査になるかもしれないし、別の業務になるかもしれません。今はまだ漠然としているのですが、自分の心の声に従って決めていきたいなと思っています。
■海外で就職・キャリア形成を目指す方にメッセージ。
1つ目は、基礎的な知識を得るための勉強は非常に大事だなと思うので、そういったものを怠らないようにした方がいいかなと思います。専門性の高い職業は、どんどん上に行けば行くほど自分の知識を問われると思うので、若い頃にしっかり勉強をして経験を積んでおかないと、後になって大変な思いをするなと最近気づきました。
2つ目は、自分がやっていて本当に楽しいのかというのを定期的に問いかけるのが大事なのではないかなと思います。例えば、憧れという気持ちがあって業界に入るというのは良いことだと思うのですが、自分がやっていてストレスを感じたら精神的に壊れてしまうと思うので、私は結構な頻度で自分と向き合っています。迷うときは、入社した当時の自分がなぜこの業界に入ったのかということ、そして自分の目標を思い直して、気持ちを切り替えています。自分のメンタルヘルスも気にかけてあげながら進路を選んでいってほしいと思います。
インタビュー後記
どんなに優秀な人でも悩む。悩んだときこそ自分と向き合い自問自答をする。
もともと勉強が良くできたであろうエミリーさんが、トロントに移住をしてきて、自分の得意とする分野に進路を決めていくというカナダの教育システムにフィットし、早い段階から会計士を目指せたことが、キャリア形成の成功の一因だろう。小柄ながらも凛とした風貌から分かるようにスマートな彼女でも日々たくさん悩みながら自問自答を繰り返す。きっとその自問自答の深さが、日々意識を高く持ち続けることにつながっているのだろう。