いつから使える? ~財産管理のための継続委任状|カナダで暮らす-エステート・プラニング入門【第36話】
弁護士による委任状のActivateとは?
委任状は弁護士がアクティベートできると銀行から言われることが多いようですが、実際のところ、銀行の担当者も勘違いしていることがよくあります。
まず、通常、銀行が求めているのは、委任状の原本を弁護士事務所に持っていき、認証コピー(Notarial Copy)を作成してもらうことです。読者の中にも、赤や金色のシールにノータリ-(Notary Public)の公証印が押された書類を見たことがある方もいるかもしれませんが、公証人は書類の原本を複製し、原本と同一のコピーであると認証することができます。この公証人が作成する認証コピーを受け取った銀行は、同書類の原本と同じように扱うことができます。ということで、実際には、ノータリーの公証印を押すことで、弁護士が委任状をアクティベートしているわけではありません。
なお、オンタリオ州では、現在、オンタリオ州法律家協会(Law Society of Ontario)に登録されている、有資格の弁護士とパラリーガル、及び、公証人の資格試験に合格した者に、公証人としての認証行為が許されています。委任状で任命されている代理人が委任者の代わりになって、財産管理を始める場合、まずは原本を銀行に持参し、その後、銀行から求められた場合には、公証人に認証コピーを作成してもらうとよいでしょう。
ちなみに、カナダには公証人が委任状の署名に立ち会わなければならない州もあるようです。
委任状はいつから使えるか?
財産管理の委任状は、委任者がいつからその効力を生じさせることができるか、作成するときに選ぶことができます。基本的には、次の二つのパターンがあります。
1.署名した日
(Effective immediately)
委任者が委任状にサインすると直ちに、委任状の効力が生じるとする委任状を作成することができます。この、「署名時に即発効」というタイプの利点としては、委任状を使い始めることが必要になった場合に、医師による判断力の鑑定などを得ずに、委任状をすぐに使い始めることができることです。一方、財産委任状は、投資や不動産なども含め、あなたの財産管理を第三者に委ね、非常にパワフルな書類です。そのため、即発効タイプの委任状をお持ちの方は、すぐに必要でない限り、代理人に原本を渡しておく場合は、十分に注意しておきましょう。
2.財産管理能力を失った日
(Conditional upon incapacity)
一方、財産管理のための委任状をサインしても、すぐに効力を生じさせないようにすることもできます。こちらは、委任者の財産管理能力が喪失したことを医師や判断力鑑定家(Capacity Assessor)が確認してから、効力が生じるという条件付きのタイプです。この場合、任命された代理人が、委任状の原本のみ銀行に持って行っても、すぐに使い始めることはできず、医師や専門家による書面での確認を得て、効力が生じたことを確認します。このタイプの最大の利点としては、委任状の濫用や不正使用を防ぐことができる点です。
一方で、すぐに必要な場合に、医師からの意見書を入手するのに苦労するかもしれないという難点があるのも事実です。
このように、委任者ご自身の作成時の健康状態、年齢、周りのサポート、現在の財産管理状況、そして代理人に任命されている人が置かれている状況などを考慮しながら、一人一人の状況に応じ、財産管理のための委任状をいつから使えるようにするべきか、作成する際に担当の弁護士に相談し、決めるのが良いでしょう。
[おことわり] このコラムは、オンタリオ州法に関する一般情報の提供のみを目的とし、著者による法的助言を意図したものではありません。また、本コラムの情報は、2022年6月時点での情報に基づいており、今後法改正により内容が変更する可能性があることをご理解ください。