東京オリンピック・ 空手アメリカ代表 國米 櫻さん(前編)|Hiroの部屋
2021年に開催された東京オリンピックで初の公式種目となった空手でアメリカ代表として初の女性選手として出場した國米さん。現在ここトロントでトレーニングに励む國米さんは、日本人の両親を持ちハワイで生まれた。14歳から米国の国旗を背負っている彼女の幼少期のエピソードや東京五輪について、そしてコロナ禍での体験や競技との向き合い方などについて話を伺った。
ヒロ:コロナが落ち着いてからは、トロントを練習拠点にされていますが、東京五輪が終わっても忙しそうですね。2024年のパリ五輪は残念ながら空手は公式種目から外れてしまったと聞きました。
國米:トロントにはコロナ禍に毎日電話をくれるなど信頼関係を築いたコーチがいて、ボーダーが開いてからはこちらに滞在しています。今はだいたい月に一度は海外で行われる世界大会のため、飛び回っている感じです。パリ五輪はがっかりしましたね。実は東京五輪出場に向けて試合をこなしている時にはすでにパリ五輪では種目から外されることを知りました。なので「最初で最後か…」という想いでトレーニングに取り組んできました。
ヒロ:それでも2028年のLA五輪は復活を期待したいところです。
國米:東京五輪はわたしにとっては年齢的なことも考えると運が良かったと思います。パリ五輪では空手がないことは、次の世代の選手のことを思うと悲しくなってきます。LA五輪はまだ可能性はあるものの、私たちができることはスポーツのアンバサダーとしてできることをやり、試合を頑張ることくらいしかないのでちょっと悔しいですね。
ヒロ:幸運にも僕も公私ともに様々な競技のアスリートの方々とのお付き合いがあるのですが、個人の力ではどうにもならないことや、時には理不尽な状況に置かれる姿を身近で見るとこちらも本当に心が痛くなります。
國米さんはホノルル生まれと伺いました。空手を始めるきっかけなどを教えてください。
國米:私がホノルルで空手を始めたのはYMCAのアフタースクールプログラムで母親が空手にサインアップしたのがきっかけです。その時の先生がとてもお気に入りでその先生の道場に移りました。その道場はハワイという土地柄、日系の方も多く世界チャンピオンを数人輩出しており、とくに女性が活躍しているところでした。全米大会に出場したりアメリカ代表になる道場のお姉さんたちを見てとてもかっこいいと思っていました。
ヒロ: 14歳という若さでアメリカ代表に選ばれていますが、幼い頃から飛び抜けた才能があったのでしょうか?
國米:14歳の時に全米大会に出場したまたま勝った後に周りからこれでアメリカ代表になったと聞きました。サッカーやバスケ、テニスといったスポーツは一通りやりましたが、空手という競技は運動神経がそこまで良くなくても努力すれば成長がわかりやすい競技なんです。私が特別に上手いというわけでは絶対になかったと思います。「言うことを聞く・言われたことをやる」といった道場の環境が静かで地味で言うことを聞いてコツコツやるという自分の性格に合っていたんだと思います。また、アメリカの大会や海外の試合では順調に成績を残しましたが、レベルの高い日本では悔しい思いもたくさんした経験もあります。
ヒロ:それでもアメリカ代表になるということ、さらにオリンピックという舞台になるといろいろと心構えも変わってくるんじゃないですか?
國米:14歳から国旗を背負って試合に出ていたのでアメリカ代表としての心構えは備わっていると思いますが、それでもオリンピックという大舞台で国代表として出場するとなると自分を見つめ直す機会にもなりました。大学卒業後、日本で社会人として働きながらトレーニングを積んでいたわけですが、東京五輪に空手が正式種目に選ばれたことによって、やるなら高いところを目指したいと思うようになり仕事を辞めました。
ヒロ:不安などはなかったですか?
國米:最初の頃は「形」という私の種目が五輪競技に含まれているか分からない状況だったり、そもそも空手のオリンピック選手が過去にいないため、前例が何もないという環境でした。さらに、空手という競技は8種目あって1種目あたり10人しか出れません。他の競技のように国が枠を持っているわけではないのです。枠を持っているのは主催国の日本だけになるので、つまり9つの出場枠のスポットを世界何百カ国の選手たちが争っていくことになります。
ヒロ:まず全米大会で一位になってナショナルチームに入り、さらにアメリカ代表ではあるものの、自分で出場枠を勝ち取っていかなければならないというわけですね。
國米:アメリカ代表として世界20各国以上の世界大会に出場し、オリンピックの出場権を掴み取っていくわけですが、今考えるとその場にいる皆とてもハードな状況だったと思いますよ。そして2020年3月に世界空手連盟が出場権を獲得した選手を発表していくわけですが、世界は新型コロナウイルス感染拡大という未曾有のパンデミックに突入していくことになります。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
國米櫻さん
14歳で米国ジュニア代表。2012年、フランスのパリで開催された世界空手道選手権大会の個人形種目で銅メダルを獲得。2013年、ロシアのサンクトペテルブルクで開催されたワールドコンバットゲームズの女子形種目で銅メダルを獲得した。2019年、ペルーで開催されたパンアメリカンゲームズで優勝。2020年3月、女子形の部においてアメリカ代表として出場することが決定。東京オリンピックは5位。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
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