「夫の夢が、今の私の夢に…」トロント・ブルージェイズ・菊池雄星選手の妻で元アナウンサー深津瑠美さん(中編)|Hiroの部屋
アナウンサーとして活躍後、メジャーリーガーである菊池雄星投手と結婚し昨年からトロントで生活している深津瑠美さん。「仕事は青春だった」というほど刺激的なキャリアを歩んでいたが、結婚してからは夫の夢を横で一緒に追いかけながらサポートし続けている。
ヒロ: アナウンサーの夢を叶えた後、ご結婚を機に仕事はセーブされていますよね。ご結婚とキャリアの選択で悩まれませんでしたか?
深津: 簡単な決断ではありませんでした。野球選手と結婚したアナウンサーの友人もいたので、選手をサポートするのは大変そうなイメージがありましたし、華やかな世界の裏側は実際に経験しないと分からないことが多いですよね。これまで努力して築いてきたものを一気に手放すのは私にとって決して容易なことではありませんでした。夫の夢や目標を聞いていくうちに、自分のキャリアを一旦止めてでも支えたい、彼の夢を優先したいと思うようになりました。
ヒロ:それを決断するのは本当に凄くて、とても勇気がいることですよね。瑠美さんが、幼少期から努力して掴んだ夢。それを一旦、止めてでもご主人をサポートしたい。野球選手の妻として、どのようなサポートをされていますか?
深津:ブルージェイズがメジャーリーグ30球団の中で唯一カナダのチームで、キャンプ地はアメリカ・フロリダになります。まだ息子が幼いため移動には何かと神経を使いますが、小児科、獣医へのレコードの送付から始まり、生活に必要な荷物を仕分けしてパッキングするのも私が担っていることの一つです。キャンプ終了後は再びトロントに戻るため、いつも手続きや荷造りと荷解きをしているような感覚です。その他にも、例えば夫が後輩と一緒に自主トレをするとなればスタッフの分も含め、全員分の食事を作るので、オフシーズン中も全力疾走を続けているような生活ですね。
ヒロ:きっとお食事も、作ればいいというわけではないですよね。
深津:そうですね、すごく気を遣いますね。日本だったら食材はどこででも手に入りますが、海外だとオーガニック系のスーパー、お魚屋さん、お肉屋さん、アジア系の食材が手に入るところと別で行くことが多いので買い物にも結構時間を費やしています。私の作業内容を列挙したらキリがないかもしれません。(笑)
ヒロ: 瑠美さんと初対面の際も、いろいろなお話をしてくださり「お一人で何人分をされているのだろう」と思いましたよ(笑)
ヒロ: ご結婚してアメリカに行かれました。生活環境が大きく変わり、大変だったかと思います。
深津:私が妊娠中に夫がメジャーに行くことが決まったのですが、どこで出産するのかわからない状況でした。とりあえず日本の家を引き払って一度荷物を詰めて、どの球団に行くのか決まればすぐ動けるようスタンバイしていました。当時はマリナーズにご縁があり、マリナーズの開幕戦は東京ドームでの開催でしたね。イチローさんの引退発表もありましたし、現地で夫のメジャーデビューを見届けたい気持ちがありましたが、自分の欲は一旦抑え、私は母に付き添ってもらいながら先にシアトルへ行きました。当時は妊娠7ヶ月になるところだったので大きなお腹を抱えながら新しい家具や生活用品、食材を揃え、荷解きが完了した状態で夫の帰りを待っていました。
ヒロ:菊池投手はイチローさんの現役最終年に同じマリナーズに入団。瑠美さんご自身が大野球ファンですから、ご主人のメジャー初開幕戦であり、イチローさんの引退試合だった東京ドーム。凄く行きたい気持ちも抑えたわけですよね。
深津:抑えましたね。ただ、シアトルで夫を待つ間なにが一番大変だったかというと、引っ越し作業はもちろん、海外生活の手続きが夫なしではできなかったことです。契約主が夫だったので、彼がいないとできない手続きばかりで困りましたね。携帯電話の契約すらできないので日本の携帯電話で過ごすしかなかったです。そんな中で助産師さんたちや地元の方々は、知り合いも頼れる人もいない出産間近の私のことをたくさんサポートしてくださいました。本当に感謝しています。
ヒロ:先日、瑠美さんが古巣の日本のMLB番組にご復帰出演されたとき、菊池投手から「今回は俺が応援する番だ!」という言葉をかけられたそうですね。そのストーリーがすごく素敵です。
深津:我が家の場合は、家のことは基本的に全て私が担当することになっていて、それを日々見ている夫としては私を仕事に戻してあげたいとか、自分が活動を制限してしまっているんじゃないかという気持ちがあったみたいです。だから「ありがとう」と言って復帰に背中を押してくれました。
ヒロ:瑠美さんがお家のことを全部されるのは、菊池投手が野球により集中できるようにですよね。
深津:もちろんそうです。夫婦で家事を分担する家庭もあればうちのようなスタイルもあって、いろんな夫婦のあり方がありますよね。我が家は夫が野球に集中していて、そもそも月に2週間以上家にいないのが当たり前です。トロントにいたとしても朝から球場に行くので、1日5分でも会えたらいいという生活スタイル。そういう事情もあって、私が家のことを担っています。
ヒロ:菊池家の夫婦円満の秘訣はなんだと思いますか?
深津:お互いを尊重し、思いやることではないでしょうか。大変さのレベルは人それぞれなので、その人にとって何が大変なのかを理解することは大事だと思います。以前ジムでトレーナーさんから、「瑠美は優しくて礼儀正しくて、これが日本人なのね」と言われたことがあります。全く意識していませんでしたがそう見られているんだと知り、生活の中でお互いを気遣い思いやるのは大事なことなのかなと思いました。育児や仕事でも、人が大変なときには周りが見えなくなりがちですよね。そういうときこそ冷静になって周りを見る、大変そうな人に手を差し伸べることの大切さをテレビの仕事から学びました。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
深津瑠美さん(Fukatsu Rumi)
地方テレビ局にアナウンサーとして入局後、2010年よりフリーへ転向。主にニュース番組を担当し、バラエティやラジオでも活躍。NHKの生放送番組「ワールドスポーツMLB」では月曜~金曜までメインのスポーツキャスターを担当した。2016年に菊池雄星投手と結婚。菊池選手のメジャー挑戦に伴い2019年からアメリカ・シアトルへ拠点を移し、同年現地で長男を出産。2022年よりトロント在住。1986年生まれ。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
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