「楽しく過ごせる時間が長く続けばいい」杉 和史さん(後編)|Hiroの部屋
学生時代の起業経験や日本テレビでの事業企画経験を活かし、トロントでマーケティング会社のCOOを務める起業家の杉和史さん。「生き急いでいる」と周りから言われるほど常にスピード感を持って歩み続ける杉さんは、どんな今を生き、どんな未来を描いているのだろうか。
過去の経験で得た〝俯瞰する力〟
ヒロ: カズ君は日本でビジネス経験があるわけですが、その経験が今のビジネスに生きているなと感じる部分はありますか?
杉: たくさんありますね。日本で起業した時は社員3人でスタートしたので、モノを作る、売る、お金が回るというビジネスの全ての流れを俯瞰して見る必要がありました。日本テレビで働いた時は、社長がなぜこの事業にOKしてくれたのか、なぜこれだけのお金を出してくれたのかが次第にわかるようになりました。新卒で普通に会社勤めするだけでは身につかないことを早くに経験したからこそ、今の世界のマーケットを見ても自分の立ち位置や自分に不足しているものを俯瞰して考えられる力が身についたと思っています。
ヒロ: カズ君はビジネスときちんと向き合ってきたんだなというのがわかりますね。僕は髪の毛には向き合ってきたけど、ビジネスには興味がわかなくて、しっかりと向き合ってこなかったです(笑)
杉: でもタイプの違いだと思います。美容師は手に職をつけるプレーヤーだし、何十年もやり続けて自分のテリトリーが生まれるじゃないですか。僕はビジネスパーソンなので、手に職というものはないんですよね。
ヒロ: プレーヤーというところでいうと、カズ君自身がポッドキャストやTikTokに出たりもしていますよね
杉: 個人にパワーがないと勝てない時代になってしまったと思っているので、個人として前に出る必要もあると考えて始めました。これまであまりカメラの前に立つのは好きじゃなかったんですが、「出なさい」と周りの人からも言われて、セルフブランディングの意図もあって続けています。自分を出す、どう映るか考えるというのも1つのビジネススキルだと思うので、まだまだ勉強しないといけないなと思っています。
可能性を秘めた日本のモノを世界へ
ヒロ: 今の会社ではどんなことをしているんですか?
杉: 日本の良いモノを世界に広められたらと思って事業を進めています。日本の人は良いモノを作っているけど、それを世界に上手く売ることができない現状があると感じていて、じゃあ僕たちがそれを橋渡ししようというのが大きなビジョンです。
ヒロ: なるほど。日本食は1つの例かと思いますが、他にもどういったものを世界に出していけると思いますか?
杉: 大量にあると思っていて、車、コンテンツ、漫画なんかは当然ですし、伝統工芸は世界で需要が多いと感じます。海外でビジネスをしようと思えば、いろんなモノに相当大きな可能性があると思いますね。
ヒロ: そうですね。伝統工芸や日本食はもちろん、美容師を考えても、日本人は細かい作業が得意と思えます。だけど、世界に向けての流行や、アピールは、まだ得意でないと思います。ところで、ビジネスではお金は切っても切り離せないものだと思いますが、カズ君にとって「お金」とは?
杉: 人のために使うものとしか考えていません。だから本当に物欲もないです。でも人のために使うお金がなくなってきたらすごく嫌だなと思うので、そのためには稼ぐしかない。家族や自分が自由に暮らすためにある程度お金は必要だと感じていますし、それくらいは稼ぎたいですね。
10年後の未来も楽しく
杉: 逆に僕からヒロさんに聞きたいことがあるんですが、若い世代に対してどう感じているのか気になります。
ヒロ: 一言で言えば…「頑張れぇ~」(笑)。例えば、若い方がその同世代の凄い人を知って、刺激を受けた方が良いじゃないですか。だから、カズ君みたいな人に、どんどん次世代を引っ張っていって下さいと、本当に思いますよ。
杉: じゃあ僕は「頑張ろう」ですね(笑)。僕は今インフルエンサーみたいな活動を少しずつ始めて、いろんな意見を言われます。誰しもやらなきゃいけない、しなきゃいけないことがあると自分自身で感じているし知っているけど、実際にそれを行動に移せる人はあまりいないと思うんです。前に進むために何をしないといけないのか考えて、やってみるべきだと思います。
ヒロ: カズ君はすごいスピードで〝生き急いでいる〟と思いますが、5年後、10年後と将来のビジョンをどう考えていますか?
杉: これまでは10年後の未来予想図もありましたけど、人との出会いや時間を共有することが大切だと気づいてから、楽しく生きていければいいなと思うようになりました。究極のところ、今死んでもいいなと思うようにもなりましたね。トロントでたくさん出会って、その人たちと楽しく生きる時間が長く続けばいいなと思うくらいです。理想の生活としては場所に縛られずに生きていきたいですしそのためにはお金を稼がないといけないという考えはありますが、そのくらいの感覚で生きていますし、そうやって生きていきたいです。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
杉和史さん 「KOE」COO
三重県出身。15歳で高専に入学し理系学問に没頭。在学中、工学/医学の研究に励む傍ら、スタートアップ企業でCMOを担う。大阪大学大学院を修了した後、日本テレビ放送網(株)の社長室に入社し、最年少最速で事業オーナーとなる。現在はトロントでマーケティング会社のCOO/創業者を担い、日本ブランドを世界へというビジョンの元、精力的に活動中。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
Instagram: HAYASHI.HIRO
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