「トロント・ミシュランスターに輝く2つの有名ローカルレストランで活躍する日本人女性シェフ」芥川 奈緒さん(前編)|Hiroの部屋
学生時代に気に入ったトロントの街で、ミシュランにも選ばれた有名店のシェフとして働く芥川奈緒さん。カレッジで調理を学んだ後、カナダでも指折りのフレンチレストランでインターンを経て社員となり、その後ミシュラン一つ星でもあるメキシコ料理店に移った経歴を持つ。前編となる今号では、「どうしてもここで働きたい」という強い思いをインターンシップからが実現し、そのまま就職し、ワークビザそして永住権とつなげたストーリーに迫ってみた。
学の地、トロントに戻ってきたかった。熱意が伝わり掴んだチャンス
ヒロ: 奈緒さんはカナダに来られてから料理の世界に入ったと伺いましたが、どうしてトロントに来られることに?
芥川: 大学時代は東京外国語大学のポーランド語科に通っていたのですが、きちんと英語を勉強したいなと思って3年生の時に1年間休学してトロントに来たのが最初です。トロントのマルチカルチャーな感じがとても気に入って、またここトロントに住みたいなという思いが生まれました。
ヒロ: 日本帰国後の後はどうやってトロントに戻られたのですか?
芥川: 留学後に日本に帰って大学を卒業し、2014年にトロントに戻ってきました。空港に降り立った時は、「ついに戻ってきたな」という感じがしましたね。最初の1年間はワーキングホリデーでしたが、その後ジョージブラウンカレッジのカリナリー(調理)コースで2年間学びました。最後のセメスターはインターンシップをしなければならなくて、そこで「alo」というカナダでも数々の賞をもつ有名フレンチレストランの門を叩きました。
ヒロ: 僕もトロントでの英語留学とワーホリ後に、日本帰国やグアテマラに住んだこともあるのですが、このトロントに戻ってきた時は、「ついに再開したな」という気持ちになりました。
直談判から決まったインターン
ヒロ: 「alo」はミシュランにも選ばれるなど、昔からカリスマシェフがいる有名店ですが、インターンになることも珍しかったのではないですか?
芥川: カレッジが提携しているレストランがいくつかあるんですが、実は「alo」は提携レストランではありませんでした。でも私、どうしても一流店と言われる「alo」でインターンがしたかったんです。だから直接レジュメを持って行って、「やらせてもらえませんか」と店に話をしに行きました。それで熱意が認められたのかわかりませんが、採用してもらえました。
ヒロ: 素晴らしいですね。しかもインターンから始めて、さらにフルタイムで就職するも稀ですよね?
芥川: そうだと思います。私の場合はちょっとストーリーがあって。ある日1人のシェフがサービス中の忙しい時に何かしらのミスをして、その場でクビになってしまったんですね。その時に、サービスの手伝いをしていた私のところにトップのシェフが来て、「今シェフが1人辞めたんだけど、うちで働かないか」と話され、私もその場で「働きます!」と即答してそのままワークビザをサポートしてもらえることになりました。
ヒロ: ローカルの環境で働くことへの戸惑い、仕事への臨み方、特別な意識などは最初にありましたか?
芥川: 戸惑いはあまりなかったですね。基本的に私はそのシチュエーションや環境に合わせるのが得意なんだと思います。でも言語の面では苦労しました。話せば周りの人は私の話を聞いてくれるけど、私自身が自分の英語に自信がないから「これ言っていいのかな?」と思うことは結構あって、最初は大変だったことを覚えています。
ヒロ: 僕も最初は英語で苦労しました。目の前のお客さんとカウンセリングが必要ですから、自分の英語力の低さに失望落胆して、何度も自信を失いましたね。でも、落ち込んでいる暇もなく、とりあえず努力を続けるしかなかったです。
芥川: 私の場合、働いた店はオープンキッチンだったのでカウンター越しにお客さんにたまに話しかけられることもありました。すごく戸惑うこともあったので、ヒロさんの話にすごく共感しました。
違う料理の形を学ぶための転職
芥川: 転職を考え始めた時に、ちょうど「Quetzal」がラインクックを募集していました。まず1日トライアルに参加したんですけど、私自身も良いなと感じましたし、シェフも私を気に入ってくれたみたいで働くことが決まりました。メキシカンという触れたことのないジャンルだったこともあって、もっと新しいことを学びたいという自分の意思にすごくピッタリだなとも感じました。
ヒロ: 実際に働いて、どうですか?
芥川: 最初は正直、働くとしても1年くらいかなと思っていたのですが、働くうちにどんどんおもしろくなってきました。「Quetzal」は、レストランのキッチンにガスがないんですよ。全部ウッドファイヤーで料理するので火の調整ですら難しい反面、私にはすごく楽しくて、気づいたら2年経ってしまいました。
次回は、転職のオファーを受けて新たな挑戦として「日本食レストラン」で働く決意をしたお話についても聞いていく。お楽しみに。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
芥川奈緒さん
東京外国語大学卒業、そして卒業とほぼ同時に渡加。トロント内の有名レストランを転々、さらに、市内のGeorge Brown Collegeで二年調理について勉強した後、ミシュラン店であるalo、Quetzalで計七年近く働いている。カナダ内のCulinary Competitionにも数回出場した。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
Instagram: HAYASHI.HIRO
PV: "Hiro salon bespoke"と動画検索