「20代はがむしゃらに頑張り、仕事と子育てのバランスをうまく取りたいと思った30代」ネイルサロン・オーナー 木澤マリカさん(中編)|Hiroの部屋
トロントで日本のネイル文化を広めるサロンオーナー、木澤マリカさん。20代には寝る間も惜しんで技術と集客に励み、30代では子育てと仕事の両立を模索する中で、自分らしい働き方を確立した。「働く母親の姿を子供に見せたい」と語り、サロンを「キャッスル」と呼ぶ家族との絆も大切にしているという。
適材適所
マリカ: オーナー業をしながらお客様の施術にも入るプレイングマネージャーとして、ずっと打席に立ち続けるのも大変ですよね。
ヒロ: 美容師や特別講師としてのプレイヤーを続けれる事を、皆さんに本当に感謝してます。マリカさんは、オーナーとして日本人ネイリストの社会的地位や市場価値の向上を考えてスタッフへの直接的なサポートをされるスタイル。僕の場合は微力ながらも間接的に、自分のサロン勤務、授業担当、ボランティア、このTORJAの連載などの活動を通して、美容師を含めた特に次世代の日本人に刺激やアイデア等が伝われば嬉しいとは、常に考えてます。
マリカ: 私は、たまに昔から来てくださるお客様から施術に入らないの?と聞かれます。
もちろんお客様とお話しながらネイルをすることが大好きなので、施術をしていたい気持ちはありますが、そこは海外でネイルをするという夢を持って来ているスタッフに席を譲り、今の私がオーナーとしてやるべき仕事は裏方にまわりスタッフが輝けるステージを用意し整えていくことだと思っています。
二度の産休もあって現場を離れる機会も多かったので、すでに私よりも毎日打席に立ち続けているスタッフの方が上手ですし、子供の事情で急なご予約調整などもお客様に申し訳ないので、それなら私が信頼するスタッフにお客様をご案内した方が良いと今は考えています。
ヒロ:ライフステージによって、働き方も変化しますよね
マリカ: 本当にそうですね。トロントに来たばかりの20代の時は、寝る間も惜しんでやるぞって、とにかくネイルで自分をアピールできるように、デザインも技術も上手くなろうと頑張りました。人として成長するために絶対に必要な時間だったと思います。
ヒロ: ネイリストとして、人として、女性として、そしてオーナーとしての成長ですね。
マリカ: 20代は、がむしゃらに頑張るべき。その時に、頑張れないならいつ頑張れるの?と思います。出産後は、子育てに使いたい時間も増えたのですが、100%子育てになるのも私の中では違和感があって、仕事と子育てを上手にバランスとるのがいいと思ったのが30代ですね。
働いているお母さんの姿を見せる
マリカ: 子供には、ネイルサロンをキャッスルと呼ばせています(笑)。マミーはキャッスルに行ってくるよと。子供が大きくなった時、お母さんはちゃんとお店を持って仕事していたと分かってほしいから、たまにサロンにも連れていくし、働きながら子育てをしていた姿は見せたいと思っているんです。
ヒロ: すごく素敵ですね。ウチのサロンも女性が働きやすい環境です。共同経営者の女性3人中、2人は子供がいます。急な子供の病気や怪我、そして休校時などお互いに助け合えています。必要な際は、サロンに子供を連れてくることもあります。僕は出張を兼ねて日本帰国を年2回させてもらいますが、「ヒロは日本に親もいるし」と協力的です。ファミリーファーストは、欧米の素晴らしさですね。
共同経営のヒロさん、ひとりで経営をするマリカさん
マリカ: 経営スタイルにも紐づいてくるかもしれませんね。
ヒロ:一般的に共同経営は賛否両論あります。ウチは独立前、8年間も同僚として各々の売上、給与形態、指名顧客様などが明確だったのは大きいですね。お陰様で、大きな揉め事は一度もないです。
マリカさんも共同経営の話なんかはあったりするのですか?
マリカ: 「投資したい」とのオファーは結構あります。2店舗目の時にも提案されて、ビジネスプランを詰めていくと、自分でやった方がいいなと思いました。ただ事業拡大したいのではなく、スタッフに満足してもらいながら自分も楽しいと思えるサロン経営がしたかったので、ネイルのことが無知な人に、投資したからということで意見されるのも、私的に違うと思いました。
トロントで日系のお店が増えるのはいいこと
ヒロ: そろそろ、マリカさんのサロンでも独立したい人が出て来るんじゃないですか?
マリカ: そうですね。そういう相談は大歓迎ですね。経営者としてはサロンに残ってほしいと思う一方で、ネイリストとして自分のお店を持つのはひとつのゴールだと思うので、一人ひとりの決意を受け入れたいと思います。それに、トロントで日系のお店が増えるのはいいことですし、サロン出店の際、私が教えれることがあれば教えたいと思ってます。
ヒロ: 素晴らしいですね。マリカさんのサロンから、どんな経営者が巣立つのか今後も楽しみですね。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
木澤マリカさん
大学在学中にNYにてネイルスペシャリストのライセンスを取得。帰国後は東京表参道でネイルアーティストとしてお客様施術はもちろん、テレビや雑誌での経験を積み、2016年満を持してトロントにFrom M-tokyo-を設立、2024年には2店舗目となるSOLiS-tokyo-をオープン。多くの日本人スタッフと共に日本の素晴らしいネイル文化を発信している。
From M -tokyo-
70 Yorkville Ave 2F / 647-745-6245
Instagram: @from.m_tokyo_
SOLiS -tokyo-
166 Ossington Ave 2F / 437-460-6245
Instagram: @solis_tokyo_
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
Instagram: HAYASHI.HIRO
PV: "Hiro salon bespoke"と動画検索