おとなの箱根旅(1)|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第108回
箱根の発展
箱根の原点は奈良時代に僧侶によって開かれた湯本温泉。江戸時代、明治時代に次々と温泉開発が進み、箱根七湯に始まって現在箱根には17の異なった温泉がある。源泉の数で言えば364箇所、湧出量は毎分約2万3千リットルというからいい湯を求めて客が集まらないわけがない。戦国時代には兵士たちのために温泉が活用され、豊臣秀吉も小田原征伐でこの地の温泉を使ったことで一躍箱根の温泉が広く知られるようになったという。
江戸時代に東海道が整備されると人の往来も増え、幕府は箱根に関所をもうけ防衛や監視拠点とした。幹線道路の開通とともに関所が撤去され、箱根の観光開発は一気に進展し今では海外からの訪問者の目的地:東京―京都―大阪―箱根、と大都市と肩を並べてトップ4位に入っている。昔ながらの観光地や温泉場が荒廃していくなか、箱根は「世界の持続可能な観光地TOP100選」でも世界1位だ。確かに外国人観光客が多い。それでも日本人なら一生に一度や二度は箱根を訪れその根性を見ておくのもいい。
箱根へどうやって行くか?
東京から箱根湯本までは約85㎞と近い。車で1時間15分、JR新幹線で小田原駅まで行って箱根登山電車に乗り換えると約1時間、新宿駅から小田急線の特急ロマンスカーで箱根湯本駅は約1時間半。小田急線駅で割引周遊券(箱根フリーパス)を一緒に求めると、箱根登山電車、箱根登山ケーブルカー、箱根ロープウェイ、箱根海賊船、箱根登山バス(指定区間)、観光施設巡りバス、小田急ハイウェイバス(指定区間)、東海バス(指定区間)の8つの交通機関が使える。
箱根は小田急電鉄の縄張りのようなところなので、どこにでも行けるこのパスはあると便利。ショッピングの好きな人は御殿場プレミアム・アウトレット行きのバスもこのパスが使える。SUICAやPASMOも使えるがその都度支払いが必要。すべての時刻表は前もってネットでゲットしておくと移動に無駄がない。
近代産業遺産―箱根登山電車

元は明治の馬車鉄道だったのが大正初期に日本初の本格的山岳鉄道として開発され、1919年開業。箱根湯本駅と標高約550mの強羅駅を結んでいる。スイスの登山電車技術を導入し、日本の最高勾配80度を3連結の可愛い車両がスイッチバックという線路の切り替えで急カーブと急勾配の高低差340mの斜面をジグザグしながら登っていく。日本の土木遺産、近代産業遺産に指定されていて、6月には「あじさい電車」として線路沿いに咲く青やピンクの紫陽花の斜面をゆっくり走行する。日本の遺産になっているこの歴史的箱根登山電車を体験しよう。
箱根海賊船?

1958年に小田急箱根の社長がディズニーランドを視察して思いついたのが観光用の海賊船だ。1964年から芦ノ湖を往復。現在3隻が就航しており一番華やかなのが令和元年(2019年)にできた「クイーン芦ノ湖」号。2023年までの海賊船はヨーロッパの戦列艦をモデルにして作られたが、「クイーン芦ノ湖」は日本人がデザインした船。日本の国旗が4階デッキの船尾にヒラヒラ、内装は九州の伝統工芸品(大川組子)や箱根の伝統工芸(寄木細工)の絢爛豪華なデザインで海賊にはエレガントすぎる。外の景色よりも内装の美しさに私は感動する。デッキの若い海外の観光客らはこの日本の伝統工芸に気が付くのだろうか。

海賊船「クイーン芦ノ湖号」の船内
海賊船は箱根ロープウェイの終着点、桃源台駅から芦ノ湖の最長線上にある元箱根港を往復している。元箱根のホテルに一泊宿を取り、色とりどりのご馳走に私はすこぶるご満足。

箱根のどこを巡るか?

アメリア人アーテイスト、デイル・チフーリ作のガラスの花
家族旅、ペア旅、一人旅、ご案内旅、と巡り方は異なると思うが、初めて行く箱根とリピート旅ではまた行き先が変わる。東京から近いといっても一泊の旅では回り切れない。

初回は「箱根ガラスの森美術館」「箱根ラリック美術館」「ポーラ美術館」などを一通り見て歩く。新旧合わせて欧米の超傑作の数々が箱根でもお目にかかれる。「箱根湿生花園」にはカナダのジャスパーと箱根の姉妹都市記念碑も建っている。広い敷地の緑に囲まれ、マイナスイオンのウオーキングで英気を養う。

20年ぶりに、私は1回目は二人旅、2度目はソロで巡ってみた。なお箱根は海外と日本の文化の両方が楽しめる和洋折衷の、歴史あってモダンな場所。だから内外ともに大人気なのだろう。

石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、『久遠に逢う』東京・熊本、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”。PPOC認定会員、日本写真協会会員、AFP、ESL教師。www.makikoishiharaphotography.com
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