オンタリオの宝庫:ブルース半島 Bruce Peninsula(1)|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第116回
ブルース半島(Bruce Peninsula)ってどこ?

オンタリオ州に何十年も住んでいてもここを知らない人が結構多い。アウトドアの活動に興味がなければ知らなくて当然かもしれない。そんな友と一緒に2泊3日の旅にでた。位置的にはオーウェンサウンド(Owen Sound)市が半島のネックにあたると言えば分かりやすいだろうか。トロントからノンストップで走れば4時間だが、朝10時に出発した私たちは休憩時間をいれ、スピード制限を厳守して走ったので北端にあるブルース半島国立公園には午後の3時過ぎに着いた。東にジョージアンベイ(Georgian Bay)、西にヒューロン湖(Lake Huron)、確実にナイアガラ断崖地域にいる。懐かしい場所に帰ってきた。
ナイアガラ断崖(Niagara Escarpment)ってなに?

日本語でescarpmentは「断崖」と訳されているが、その断崖が1050㎞も続いているといえば、我々が想像する断崖とは違うのがわかる。ブルース半島もそこに含まれる。地図上でいうと断崖はブルース半島から水中を通り北部のマニトウーリン島(Manitoulin Island)で弧を描くようにカーブしながら、対岸のミシガン湖(Lake Michigan、Wisconsin)をフチ取るように伸びている。ブルース半島の南部は断崖の一番高い地点にあたるオンタリオのスキー場で有名なコリンウッド(Collingwood、510m)を通って、ナイアガラの滝へと続く。一番低いところはナイアガラの滝に近いニューヨーク州のローチェスター(Rochester, New York, 183m)だ。745㎞(71%)がカナダ側にある。

水の流れで言うと五大湖の一番高度の高いスペリオル湖から下のヒューロン湖に水が注がれ、何億年もの侵食をへて断層による段差を作りブルース半島から南にかけて大きな滝を幾つも形成し、それら多くの滝から落ちた水は南の最終地点、ナイアガラの巨大な滝(Niagara Falls)で合流、さらに低いオンタリオ湖(Lake Ontario)に入り、セントローレンス川を通って大西洋にでる。だからナイアガラ断崖は水の通り道とも言えるわけだ。
ブルース半島国立公園 (Bruce Peninsuna National Park)

カナダ全土には連邦政府管轄の国立公園が37個あり、その一つがオンタリオ州のブルース半島国立公園。340あるオンタリオ州立公園(Provincial Park)とは違う。公園内の駐車パーミットもネットで事前に簡単にとれた。駐車場は場所ごとにパーミットが必要で時期(最終9月7日、10月31日)も時間(4と6時間)も異なるので要注意。予約終了2時間前までには入っていなければならない。私たちは6時間のパーミットだったので3時に着いても時間は十分にあった。公園の中のみどころはグロット(Grotto洞窟)とハーフウェイ・ログ・ダンプ(Halfway Log Dump昔の木材搬出入場)だが、どちらも駐車場から徒歩約1㎞の距離。始めは平坦だが、次第に石だらけの不安定な坂道になるので歩きやすい靴はマスト。私たちは後者に絞った。

ハーフウェイ・ログ・ダンプは風化した石灰岩で敷き詰められた白のビーチ。でもその先には板のように真っ直ぐに割れるマグネシウム豊富なドロマイト(dolomite堆積岩)のゴツゴツした自然の岬。上部の硬い石灰岩やドロマイトの下には泥が蓄積してできた軟らかいシェール岩の層がある。ナイアガラ断崖の地質の特徴だ。シェール岩が削り取られると硬い岩が空中に突き出だされ、次第に重さに耐えられなくなって落ちる。こうして何百年、何千年も前に落ちた大きな岩がビーチのあちこちに点在する。板状の岩の隙間から可憐な雑草が咲いているかと思えば、久遠の歳月を経て岩のキャンバスに描かれたカラフルな苔の抽象画にハッと驚かされる。

トバモリー(Tobermory)

トバモリーはブルース半島では一番観光地化した街で、半島を訪れる人は殆ど皆ここへくる。沈む夕日がフェリー、チチマウン号(Chi-Cheemaun)に反射して美しい。仕事をおえた乗組員の一人がタバコを吸いながら自分の部屋の写真を見せてくれた。もう40年も船の生活だという。今回はマニトウーリン島行きのフェリーに乗らなかったがチチマウン号はいつ見てもなぜか郷愁をそそる。私たちは湾を望む部屋にチェツクインし、夕食はFish and Chips(魚のフライと芋)。地元の魚とタラがある。食後の散歩はフェリー乗り場の対岸にあるブロードウォークからの眺めがよく気持ちがいい。

翌朝は観光船でフラワーポットアイランド(Flowerpot Islandハイキング可)や今でもまだ朽ちることなく水の底から静かに観光客を迎えている木造船の残骸を見学。

帰りはフルスピードで走る観光船の水飛沫をいつまでも飽きずにボーッと眺め、午前のスケジュールを終える。

石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、『久遠に逢う』東京・熊本、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”。PPOC認定会員、日本写真協会会員、AFP、ESL教師。www.makikoishiharaphotography.com
https://makiko-ishihara.pixels.com
https://nagatsuramovie.com














