世界自然遺産― 屋久島(1)ってどんなところ?|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第85回
憧れの屋久島
数年前の7月、屋久島へ行く計画をしていた。ところが台風が来て鹿児島―屋久島間は海路も空路も全て閉鎖。やむなく鹿児島で土砂降りの旅をした。そういうわけで2023年5月の屋久島行きは私のリベンジ旅行でもある。今回5月を選んだ理由は屋久島の「いなか浜」にアカウミガメが産卵にやって来るからだ。それを自分の目でみておきたかった。それと世界自然遺産の屋久島は縄文杉で有名なのでそれも、とは思ったがそこへ行くには往復22㎞、9時間以上の登山が必要。長時間歩ける自信が自分になかったのと一年前に股関節の手術をした友人と一緒だったので体力に合ったコースを選ぶことにした。歩いてみてわかったのは至る所に巨大な杉の古木があり、縄文杉までいかなくとも十分に満喫できるということだ。
屋久島の行き方と島内交通機関
重要拠点の宮之浦港、屋久島空港、安房港は空港を真ん中にそれぞれ7~8㎞離れて東海岸に並んでいる。私たちは片道35分の空路を選んだ。JALのプロペラ機だ。高速船トッピーだと鹿児島港―宮之浦港間が直行で1時間45分、フェリーは4時間を要する。周囲130㎞(西部林道を含む)のメインストリートから分岐して島の内部に入るにはバスもあるがハイキングに要する時間が予測できないのと、慌てたくないのでレンタカーを使った。前もって予約すると、鹿児島本土から車が手配される仕組みだ。私たちは5泊6日ののんびり旅行だったので、屋久島のめぼしいところをほぼ余すことなく走った。要注意点は、どこにでもレストランやカフェがあるわけではない。出発前に水分の確保やお弁当屋に寄って食料を積み込んでおいた方が安心だ。
西部林道
幅が狭くてカーブの多い26.5㎞の西部林道が西側にある。雨が降れば閉鎖になる。5月は天気に恵まれ、私たちは北回りでなく、南回りで来たので西の「いなか浜」へ行くのに効率的なルートだった。途中山猿たちが道端で人間を警戒する様子もなくファミリータイムを楽しんでいた。林道には4時半までには入るように進められている。もしここを走るなら、天気のいい日、明るいうちがいい。ちなみに私たちは完璧な雨具の用意をしていったが旅行中一度も使わずに済んだのはラッキーだった。
宿泊施設
高齢化の影響で必ずしもインターネット上に出ている施設が営業中とは限らない。事実、写真で見て泊まりたいと思った宿は継ぐ人がいなくて休業中と後で知った。またホテルの最近の評判で好ましくないのは経営者の交代で質が落ちたと考えられる。どこでも眠れる若い旅行者やバックパッカーなどは昭和チックな旅館や民宿がいいかもしれない。私たちが泊まった一軒も他に選択肢がなかったので共同洗面所のある、修学旅行がよみがえるような宿だった。フランスから来た若い女性に会ったのも朝の洗面だった。
車で移動するなら南の「尾之間」にある、いわさきホテルや東シナ海側の宿、マリンブルーが居心地良く、思い出深い宿だ。食事に一度はトビウオが出てくる。
トビウオは骨が多く身が少ないが島独特の海産物だ。美味しい出汁、アゴだしはこの魚を乾燥して粉にしたもの。
天気に左右される屋久島巡り
屋久島観光は天候に左右されやすい。予定していたハイキングルートも雨が降れば閉鎖になる可能性がある。ホテルのスタッフから情報を常に収集し天気予報と万が一のために帰りの本土行きの船や飛行機のスケジュールを知っておくと安心だ。実際に身に起きたことだが、私たちが帰る前日に次の日の悪天候の予報が伝わり、全て欠航予定になった。早めに情報が入ったので、宮之浦港へ走ったところ、待合室は本土に戻ろうとする観光客の行列。ここでは乗れる予定がいつになるかわからず、急遽、安房港へ車を飛ばした。宮之浦港より小さく、待合室に人はほとんどいなかった。すぐに切符を買い、レンタカーを返却し1日繰り上げて鹿児島に戻ることができた。屋久島の旅は臨機応変が鉄則だ。(次号へつづく)
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石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”は全国巡回記念DVDを2018年にリリース。PPOC正会員、日本FP協会会員。www.makikoishiharaphotography.com
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