日本文学を世界へ届ける 翻訳者達の舞台裏|ジャパンファンデーション
7月13日、国際交流基金トロント文化センター(以下、JFT)は、日本文学の英語翻訳に焦点を当てたトークイベント「The Canadian Connection: How literary translators bring Japanese voices to the world」を開催した。満員となったイベントホールでは、英語文芸誌『MONKEY : New Writing from Japan』編集者・Meg Taylor氏の進行により、カナダを拠点に活動する3名の翻訳者が登壇した。

登壇者の翻訳作品の朗読からスタートした、本イベント。Sonja Arntzen氏(トロント大学名誉教授)は10世紀の文学「Lady of the Low Chamber(落窪物語)」を、Chris Corker氏(ヨーク大学博士課程)は詩人・和合亮一の作品「I Become a Moth(蛾になる)」を、そしてTed Goossen氏(ヨーク大学名誉教授)は川上弘美の短編小説「Old Home(ふるさとの生家)」をそれぞれ朗読し、異なるジャンルの文学の世界観に会場は盛り上がった。
その後、登壇者は翻訳活動を取り巻く環境について対話を繰り広げた。『MONKEY』に創刊当初から関わるGoossen氏やTaylor氏は、創刊当時の2010年前後は今より翻訳者が少なく、今でこそ世界中で人気を集める作家の作品は日本国外での認知度が低かったと述べた。今では翻訳者の数が増え、MONKEYが日本文学の振興のみならず翻訳者の育成にも寄与してきたことが語られた。特に、2言語を公用語に持つカナダでは、翻訳という行為自体が社会の中に自ずと組み込まれていることや、移民国家で異文化交流が盛んなことから、翻訳文学への関心が他国以上に高いという。また、Arntzen氏は、日本の中世・近代文学については欧米で学術研究の対象として扱われてきた傾向にあり、「落窪物語」は一般読者に届けたいという願いで出版準備を進めていると語った。
質疑応答では、翻訳の難しさや翻訳者の認知度向上について話題が及んだ。登壇者はそれぞれ、直訳することは作品の魅力を損なうと話し、原作を読んだ読者が受ける印象や感覚を翻訳で再現するために、作品を読み込んで世界観を徹底的に想像することが重要だと述べた。Corker氏は、AIなどの新たな技術が翻訳・出版業界に大きな影響を及ぼす今、翻訳者の文章力が問われているとも話した。近年では翻訳作品を扱う小規模出版社が欧米圏で増え、表紙に翻訳者名が記されるなど、少しずつ翻訳に対する認知が高まっているという。出版不況と呼ばれる時代の最中、各出版社は娯楽性や知名度の高い作家の作品の翻訳を積極的に出版することで市場を維持し、翻訳文学への関心が高まっているのではないかと分析した。なお、トークの様子は、国際交流基金トロント文化センターの公式YouTubeチャンネル(@jftoronto)にて公開予定である。














