カナダから見た世界情勢 -第4回 Japan Now 講演会- 東アジアの安全保障における日米韓の役割に関する講演会開催
2月9日、トロント大学マンク国際問題研究所日本研究センターと在トロント日本領事館が共催するJapan Now講演会シリーズの第4回目となる講演会がトロント大学マンク国際研究所にて開催された。今回の講演会では緊迫する北朝鮮情勢を踏まえ、東アジアの安全保障のために日本、韓国、米国の役割や協力、課題について講演とパネルディスカッションが行われた。
今回はゲストスピーカーとして米国からはデューク大学政治学部のピーター・フィーバー教授、国際大学の熊谷奈緒子准教授らが招かれ、トロント大学からは講師のスンヒョン・リー氏、トロント大学日本研究センター客員主任教授のデイビッド・ウェルチ教授が加わった。開催地であるトロント大学マンク国際問題研究所には在トロント韓国総領事館の領事を始め、多くの方が足を運び、講演会テーマに対する関心の高さが伺えた。
2018年最初のJapan Now講演会シリーズ
冒頭では伊藤恭子総領事の挨拶があり、登壇者と来場者に謝辞を述べた後、G7サミットをカナダがホストする今年、トロントでこのテーマについての講演があることはとても重要な意味があるとした。現在の北朝鮮の核実験や拉致被害により緊迫する現状に対し、同じ危機意識と価値観を抱える日米韓各国の役割、協力体制、そしてその障害になり得ることを講演を通して学び、登壇者の考える現状を打破する方法を聞くことに期待を寄せた。また、2018年は日加修好90周年の節目の年であることから今後も両国が相互理解を促進していくための活動を積極的に続けていきたいと語った。
北朝鮮問題のわずかな部分だけしかカバーできていない
最初のプレゼンを行ったフィーバー教授は、北朝鮮情勢のアメリカの役割を中心に講演を行った。現在、アメリカは自国の軍事力と対抗する国は出てこない、現行の軍事費だけで世界トップの軍事力を維持できる、という予測が外れたことやアジア地域での中国の急速な発展のため、アメリカの世界及び東アジアにおける役割は不明瞭であり、北朝鮮問題のわずかな部分だけしかカバーできていない状態であると言及した。
各国サイドの見方をもっと良くお互いに知るべき
次の登壇者である熊谷准教授は、主に韓国と日本の間にある慰安婦問題について言及した。韓国と日本の両国関係の問題が、安保協力の妨げになっていると問題視し、その中でアメリカは韓国と日本の二ヶ国間をつなぐ重要な役割を担っていると語った。各国サイドの見方をもっと良くお互いに知るべきであると同時に、慰安婦問題は国家間の政治や論争として見られているため慰安婦は置き去りにされている状態であり、本当に慰安婦たちが求めていることに耳を傾けるのが大切なのではないかと述べた。
歴史的背景の根本的な問題を共通化させる必要がある
リー氏は、認識が異なる各国の歴史的背景が安全保障の妨げとなっていると指摘した。
日本の過去、韓国の過去は両国間の関係を続けていく上では切っても切り離せないものであり、お互いが歴史的真実を歪められていると不公平に感じあう部分も少なからずあることは今日のメディアを見れば一目瞭然ではあるが、この解決には長い年月をかけて両国間の歴史的背景の根本的な問題を共通化させる必要があると言及した。
講演後にはパネルディスカッションが行われ、参加者からは多くの質問が寄せられた。
最後に日本研究センター暫定所長ルイス・ポーリー教授は「今講演会では難しいテーマを取り扱ったが丁寧に、且つできるだけ公平に意見交換ができたマンク大学日本研究センターらしい素晴らしい会になった」と述べ、講演会は幕を閉じた。
今後も日本だけでなく世界情勢に目を向け、人々が理解を深めることのできる機会が増え続けていくことを期待する。