国際交流基金トロント日本文化センター「動きの感覚: 日本のスポーツ・ポスター展」2023年9月9日まで開催中|春のイベント特集「五感を刺激できる場所、トロント。」
DNP(大日本印刷)文化振興財団・国際交流基金トロント日本文化センター共催
現在トロントのジャパンファウンデーションで開催されているスポーツ・ポスター展は、東京2020オリンピックを契機として、国際交流基金ロンドンが、パンデミック最中にオンライン開催した北沢永志氏の講演会がその礎となっている。ロンドンからの呼びかけに、国際交流基金の世界各地の出先が応えて、シドニーでの対人事業としての展覧会(2021年10月から翌年1月に開催)がまず実現し、同展は国際交流基金パリ日本文化会館への巡回(2022年12月から翌年3月に開催)を経て、今回のトロントでの展覧会に至った。
日本のグラフィックデザイナーのポスター展と長い縁を持つトロント事務所。今回出展作品68点の内、半数以上がトロントのために追加!
国際交流基金トロント日本文化センターでプログラム・オフィサーを務める青柳俊明氏は、「実は、展覧会受け入れを真っ先に表明したのはトロントの当センターで、コロナ禍の情勢が沈静するのを待ってトロントでの会期を延期している間、世界各地の基金同僚が持ち回りで本展覧会を育ててくれた。
当基金トロントでは、日本のグラフィックデザイナーのポスター展を、それも個展として1998年から連続開催した経緯がある。このポスター個展シリーズは日本デザインコミッティーの協力で実現し、戦後の日本のグラフィックデザインを代表する錚々たる面々を紹介できた。今回新たに、DNP文化振興財団との共催で、スポーツをテーマ(あるいは切り口)として、第二次大戦後の日本のグラフィックデザイン界を俯瞰して綺羅星のごとくに輝く才能を通観するのは一種爽快なものがある。
個展のシリーズでは、各デザイナー個人の業績を深く探ることができたが、今回のテーマ制のポスター展では、世代や世相によって異なる美意識の流れを見て捕ることができる。かつてポスター個展のシリーズでは、女性デザイナーは故石岡瑛子氏だけしか扱えなかった。本スポーツ・ポスター展には女性デザイナーは何人も含まれ、1960年代、70年代、80年代生まれの若い皆さんが含まれているのは、実に喜ばしい」と述べている。
“亀倉デザインの中核が1964年東京オリンピックの公式ポスターシリーズで、以後のグラフィックデザインの指標となったことが、本スポーツ・ポスター展全体を見渡しても感じ取ることができる〟
さらに青柳氏は、日本のグラフィックデザイン黎明期を牽引した巨匠としての故・亀倉雄策(1915-1997)の位置づけに異論をはさむ者はないと話す。「亀倉東京オリンピックポスターの、シンプルで明快、かつ雄渾で強靭な表現は、モダンデザインのメソッドにがっちり支えられ揺るぐところがない。全くの私見だが、今回の展覧会から、亀倉の後に続いたデザイナーたちは、ことスポーツに関する限り、亀倉作品を意識せずには仕事ができなかったのではとさえ思う。挑戦する者もあり、追従模倣する者もあり、敢えて否定する者もあり、真逆を行こうとする者あり…。21世紀に入って、ポップアートが入ってくるのも、それを女性が持ち込むのも、ポスト亀倉の歴史の流れとして、ある種の一貫性があると見られないだろうか。
今世紀の才能の作品は、パリまでの本スポーツ・ポスター展では希少だった。トロント巡回の出展作品68点の内半数以上がトロントのために追加された。その追加分の約半分が、BXと呼ばれる、通常のポスターのB1サイズの倍の大きさ。若い世代の才能を大画面でご堪能いただきたい。また、五輪ロゴの版権や掲載許可の関係が複雑でここでは画像でご紹介できない、亀倉東京オリンピック公式ポスターシリーズの力強さも、ぜひ展覧会場において生でご体感いただきたい」とその魅力を語ってくれた。
UENISHI Yuri
World Table Tennis Championships 2015
女性アートディレクター、グラフィックデザイナーの上西祐理が、2015年の世界卓球大会のテレビ番組を告知するために制作した4連作のポスター。
卓球は最速の球技と言われている。この作品は、競技中の選手たちが、一体どんな時間の中に身を置いているのかを創造しながら、勝敗の別れるその極限の一瞬を捕らえグラフィック化している。つまり、選手にとっては、身体感覚が研ぎ澄まされ、「球が止まって見える」みたいな瞬間でもある。
実はこの4点の連作は、レタッチ修正なしの一発撮りの写真。イラストレーションではない。この、動きの感覚を鋭く呼び起こす瞬間をとらえたグラフィックが、卓球の新しい世界感を切り開いた。また、選手がいない、卓球の道具のみにフォーカスすることによって、卓球の緊張感、ストイックさ、シビアさも同時に表現している。
KASAI Kaoru
「World Sports Fair ‘85」1985 / 葛西薫
アスリートの躍動感と美しさがあふれるビジュアルとなっているスポーツ・フェアのイベントポスター。
YOKOO Tadanori
The 61st Nippon Derby GI 1998
横尾忠則 / 日本ダービーの告知ポスター。横尾スタイル満載のグラフィックデザインで、葛飾北斎の作品の波の部分等が引用され、奥行きのある作品に仕上がっている。1998
松永真
第53回国民体育大会1
国民スポーツフェスティヴァルは、日本で毎年開催されるスポーツの祭典。スポーツ庁が主催。「広く国民の間にスポーツを普及し、国民の体力向上を図るとともに、地方スポーツの振興と地方文化の発展に寄与すること」が目的。人間をモチーフに、シンプルで鋭い衝撃力を持つデザインになっている。
Katsumi Asaba
The 41st World Table Tennis Championship 1991 L
浅葉克己 / 日本の伝統美術をモチーフに制作された卓球大会のポスター。日本画家中村貞以(なかむらていい: 1900-1982)の美人図(1933年)をそのまま使用している。
NAGAI Hiroaki
PRGR Tobby eggman 2013
永井裕明 / プロギアの企業理念が面白い。「広告には嘘が溢れている。プロギアの広告は、商品の宣伝はしない」。聞捨てならない言葉だが、永井がこの大胆な企業理念に直球で答えた、斬新で力強いイメージ広告になっている。これはプロギアのゴルフクラブのポスター。アンチンボルドの果物のだまし絵風に、ゴルフクラブを組み合わせて造形した異色のポスター。2013
名亀倉雄策 / 青葉益輝 / 浅葉克己 / 上西祐理 / 佐藤卓 / 横尾忠則 / 福田繁雄 / 葛西薫 / 田中一光 / 佐野研二郎 / 副田高行 / 永井裕明 / 野田凪 / 松永真 / 渡邉良重 / 石岡瑛子 / 榮良太 / 細谷巖 / 窪田新 / 小杉幸一 / 服部一成 / 野田紗代(博報堂)/ 吉田カツ / GROOVISIONS
開館日: 火曜、木曜、金曜、土曜
11:30‒16:30、木曜夜間延長 18:30まで
休館日: 日曜、月曜、水曜
国際交流基金トロント日本文化センター
The Japan Foundation, Toronto 2 Bloor St E
Hudson’s Bay Centre, 3rd floor
Above Royal Bank of Canada
https://tr.jpf.go.jp/416-966-1600 x229
入場無料(予約推奨)
https://www.eventbrite.ca/e/a-sense-of-movement-japanese-sports-posters-exhibition-tickets-591722948267