第二回 偶然か必然か。人との出会いに助けられました!|「子育て&教育」カエデのトライリンガル子育てコラム

Photo by Jude Beck on Unsplash

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 前回のコラムでは、私たち親子が多文化主義を掲げる移民先進国カナダのトロントというマルチカルチャー都市に住んでいたこと、そしてそこに池端ナーサリーがあり、トロント補習校があり、公的英仏語バイリンガル教育のフレンチイマージョンがあったという学校環境が、我が家の2人の子どもたち(現在は成人)が日英仏語の高度トライリンガルになれた大きな要因だったとお話しました。

 そして今回は、学校環境だけでなく人との出会いが子どもたちをトライリンガルに導いてくれたことをお話しましょう。

ご近所さんとフレンチイマージョン

 2人の乳幼児を抱えて日本からカナダ人夫とトロント郊外に移住後、まもなくトロント市内に家を買って移り住むことにしました。その私たちが買った家の売り主夫婦と気が合い、彼らの引っ越し先が近所だったのでそのまま近所づきあいが始まりました。そしてご主人は私にカナダでの仕事も紹介してくださいました。

 ご夫婦の奥さんは当時フレンチイマージョン校の先生をしており、彼らの子どもたちもフレンチイマージョンに通っていました。私はフレンチイマージョンが何かさえその時は知りませんでした。ほどなく娘が学校へ上がる年齢が近づきどの学校が良いか調べていると、奥さんがカナダのフレンチイマージョンはとても良いから入れたらいいと熱心に勧めてくれたのです。夫は自分が学生時代にフランス語をしっかり勉強しなかったことを悔いており、「タダでフランス語が話せるようになるならラッキー!」とたいへん乗り気でした。

移民はフレンチイマージョンは無理だと諦める

 最初、私はその話を聞いてもあまり興味が湧きませんでした。子どもたちの第2言語は日本語にすると決めていたので言葉を3つも教えることは無理ではないかと考えたからです。カナダのグローブアンドメール紙に、高等教育を受け、社会的及び経済的地位が高い両親共にカナダ生まれの家庭が子どもをフレンチイマージョンに通わせる傾向があるという記事(1)があります。

 一方移民は最も大事な英語習得に悪影響が出ると困るからと民族の言葉の継承にさえ消極的になりやすく、 子どもに継承語で話すことさえ封印する親は、日本人だけでなくその他民族コミュニティにもたくさんいます。移民の中でも日本からの新移住者は、高い教育を受け経済的にも恵まれた人が多いように見受けられますが、それでも第3言語は無理と端から諦める傾向があるようで、当時私の日本人の知人で子どもをフレンチイマージョンに通わせた人はいませんでした。
 
 しかし実は、バイリンガル話者は言語や文法的なルールに対する分析力が高いので、3つ目や4つ目の言語を速く習得できるのです。よって2言語話せるのなら3つ目の言語を習わないともったいないと言えるでしょう。私は夫の「無理だったら英語プログラムに替えればいいから」という言葉で娘をフレンチイマージョンに通わせることに同意しました。

中島和子先生とバイリンガル教育理論

 私たち夫婦は最高の環境で子どもたちのトライリンガル教育を始めることができましたが、それでも当初私のバイリンガル教育についての知識は限られていました。しかし、娘が小学2年、息子が幼稚園年長の時、トロント日系文化会館で、現在はトロント大学名誉教授であり日本のバイリンガル教育第一人者である中島和子先生の講演を偶然聞き、それがバイリンガル教育理論を独学で勉強するきっかけとなりました。私は先生の著書やバイリンガル教育関連記事を読み漁り自分の子育てに取り入れました。

 そして10年後、先生がトロント補習校高等部の校長になられたことで再会することとなりました。先生は3言語で読み書きまでできる我が家の子どもたちに感心して、「お母さん、よく頑張りましたね」とねぎらってくださり、また、先日ある国際フォーラムでご一緒させていただいた時には、参加者の皆さんに、「このお母さんはすごいんです!」と紹介していただきました。

 バイリンガル教育理論を理解した上で子どもに複数言語教育をすることは、それを知らずに教育の方法を決めることに比べてたいへん有効で結果が大きく違ってきます。バイリンガル教育の成功は子どもの言語形成期と密接に関係しており、言葉を自然に覚える乳幼児期から12歳までが勝負となります(2)。特に乳幼児期の言葉のインプットは重要です。しかし、育児や生活に追われていると、その間に大事な時期が過ぎてしまうかも知れません。まず早い段階で親がバイリンガル教育を理解することをお勧めします。

 このように偶然か必然か、子どもたちの多言語教育にとって大事な人たちとの出会いがありました。彼らの意見や理論を子育てに取り入れたことによって我が家の子どもたちは高度トライリンガルになったのです。

参考:
(1)Globe and Mail, French Immersion causes two-tier school system, data shows(November 6, 2019)
(2)中島和子「完全改訂版 バイリンガル教育の方法」(2016年、アルク)

ワーマン・カエデ

 カナダでワーママしながらバイリンガル教育論を独学で勉強し、カナダ人夫の協力を得て2人の子どもの日英仏3か国語子育てに成功した。現在成人した子どもたちは3か国語すべてで話し読み書ける高度トライリンガル。筆者本人も第3言語であるフランス語を勉強中。
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