第79回「人工知能(AI)は本当に環境に悪いの?」|カエデの多言語はぐくみ通信
ChatGPTやGeminiをはじめとするAIは、世界中の企業が作業効率化対策に積極的に活用しており成果が出ています。一方で、巨大データセンターを稼働させるための電気や冷却用水の大量消費が環境に多大な負担を与えているとされています。AIの実態を改めて調べてみました。
AI技術と利用の実体
AI技術: 現在、米国と中国が激しい覇権争いを展開しており、両者のAIの性能に差はほぼないそうです。米国は5427カ所(2026年スタンフォード大資料)と世界最多のAIデータセンターを擁し、その半導体の大部分は台湾のTSMCが製造しています。
AI利用内容: IT業界では、コーディングやソフト開発にAIを利用して、26%生産性が上がったと回答しています。マーケティングでは顧客分析や市場予測、資料作成で50%アウトプットが増加、顧客サポートでは14~15%生産性が上がったそうです。カナダでは、カスタマーサービスに電話をするとまずAIを相手に話す(またはボタンを押す)ことが常態化し、時々イライラしますが、やはり、目に見えて効率化ができているようです。
AI導入率: 組織や個人のAIの導入は歴史的な速さで拡大しており、生成AIの普及率は3年で人口の53%に達しました。この普及ペースは1人当たりのGDPと強い相関関係があり、シンガポール(61%)やアラブ首長国連邦(64%)が高い普及率を示す一方で、お膝元の米国では普及率は29%です。世界を見渡すと、企業や組織による生成AI導入率は88%に達し、大学生の5人に4人が利用しています。
日本での利用率: 一方、日本では普及は進んでおらず、日本企業の8割以上が、業務におけるAIの活用が限定的か全く活用していないようです。回答企業の16%が社内全体で利用、60%が一部または限定的な用途で利用、18%はAI導入は未定、6%は検討さえしていないそうです(*2026年8月12日付ロイター記事。日経リサーチが510社に調査し219社から回答)。
消費電力・水・排出CO₂
AIは世界中でどれだけの電力や水を使い、CO₂を排出しているのでしょうか。
国連大学水・環境・健康研究所(UNU-INWEH)によると、データセンターの2025年の電力消費量は448テラワット時で、サウジアラビア全体の電力消費量を上回り、 2030年までには945テラワット時となり、日本全体の電力消費量と同等になると予測されています。
冷却用水の消費量は、2025年では4兆5000億リットルで、サハラ砂漠以南のアフリカの6億人を超える需要に匹敵しており、2030年には9兆3000億リットルになります。CO₂排出量は、2025年の1億8900万トンが2030年には3億9900万トンに増えると予測されます。その中でAIが占める割合は、2025年にはデータセンター電力消費量の25%、2030年までには40%に達する見通しです。やはり、AI利用は環境に影響を与えているようですね。
環境への影響を抑えるには

環境への負荷をできるだけ抑える努力もされているようです。
- AI半導体の省電力化: グーグルはAI向けTPU(AI用プロセッサ)の世代更新により、AI処理の炭素効率を3.7倍に改善したと報告しています。速く処理ができるとそれだけ電力消費を抑え炭素の排出を抑えられます。
- 水と電力使用量削減: データセンターが出す熱を冷やすために、水が大量に消費されているというイメージがありましたが、実は現在でも「空冷」が主流らしいです。空冷は空調で冷やすために電力が使われ、且つ、効率がよいわけではないらしいのです。水を含めた「液体」で冷やす方法が効率では上回るが、熱による蒸発で水が失われます。どう冷やすかの効率化も求められており、マイクロソフトの新しいAIデータセンターでは水が蒸発しないループ液冷を利用していて、年間1億2500万リットル以上の水利用を削減できるとしています。
- 再生可能エネルギーの利用: 風力や太陽光などをデータセンターの消費電力に利用する動きもあります。KDDIが全世界のデータセンターで再生可能エネルギー利用100%達成したというニュースを目にしました。IEA(国際エネルギー機関)によると、2030年までにデータセンター向け追加電力需要のほぼ半分を再生可能エネルギーで賄われると予測されるが、従来型の天然ガスや原子力の利用も増加します。
- 熱エネルギー再利用: データセンターが出す熱を、周辺の建物の暖房や給湯などに再利用する動きも見られます。
- AIによる効率化対策: AIは資源を消費するだけでなく、AIの知能を使って発電・送電、製造、物流、空調などを効率化し、社会全体のエネルギー消費やCO₂排出量を削減できる可能性もあります。
AIは環境にマイナス?プラス?
AIは大量の電力を消費し、大気や水資源への負荷を生んでいます。企業は、AIを利用しないと経済に乗り遅れるという勢いで利用を後押ししています。右を見ても左を見てもAI一色に塗り替えられた感があります。
一方で、AIにはエネルギー消費を効率化し、社会全体のエネルギー消費やCO₂排出量を削減できる可能性もあります。ですので、AIそのものが環境に良い・悪いと単純に決めにくいところがあります。
ただ、分かっているのは、今後AIの利用拡大を止めることはできないでしょう。ならば、いかに環境への負荷を最小限に抑えるかが火急の問題ですね。
【参考】
ロイター「世界のデータセンター、30年に電力と水の消費が倍増へ=国連大報告」
https://jp.reuters.com/markets/commodities/JYEFRCFUEJNDRP37OJNMAJKYQY-2026-06-04/
スタンフォード大学 「The 2026 AI Index Report」
https://hai.stanford.edu/ai-index/2026-ai-index-report?utm_source=chatgpt.com
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