日本酒と多様な料理のコンビネーションを楽しんで「勝山酒造」代表取締役社長 伊澤平蔵さんインタビュー|メイドインジャパンでカナダを攻めろ!
日本食と共に知名度が上がってきている日本酒。300年以上の歴史を誇る日本の酒蔵「勝山酒造」は、2019年に世界最大規模のワインコンテストIWCのSAKE部門で世界一に輝くなど、国際的に高く評価されている。
同社の伊澤平蔵代表取締役社長と妻のジュリーさんは11月にトロントを訪れ、現地の人に日本酒を味わってもらったりソムリエに日本酒をレクチャーしたりと、日本酒をアピールした。勝山酒造の酒造りのこだわりはどこにあるのか、また日本酒の楽しみ方などについてお話を伺った。
時間をかけて生まれる最高の酒
―海外進出を積極的にされていると伺いました。
現在約25カ国にうちのお酒を出しています。シンガポールやマレーシアといった特に中華系富裕層に購入していただいている状況です。例えば2024年は辰年ということで、24金の金粉を入れた超高級酒を限定販売予定ですが、中華系の富裕層にはすでに関心を持っていただいています。カナダでも1月以降販売予定です。
―御社のお酒のこだわりは?
単に良いものを造るといっても手段や方法にはこだわりがあります。一般的に日本酒造りでは1日に1本タンクを仕込むのが普通ですが、このペースだとすることが多くて忙しくなるので手間隙をかけることが難しいんです。
造り手として納得ができる素晴らしい商品を目指すには、どうしても時間を作らないといけない。だから私たちはあえて生産量を落としています。日本でおそらく唯一だと思いますが、1週間に1本しか仕込みません。生産量を落としてでも良いものを造ろうとこだわっています。
伊達家御用達という誇り
―歴史の古い酒蔵ということで、あの伊達家御用達というのはすごいですね。
私たちは日本三大藩の1つである仙台藩の御用酒屋です。伊達政宗公の死後にはなりますが、藩のお侍様方にお酒を納めて来た歴史があります。藩自体はなくなっても伊達家18代目の伊達泰宗様が現在もいらっしゃいますので、私たちはまだ伊達家御用達と名乗れるんです。伊達家から了解をいただいて、家紋や軍旗をモチーフにしたラベルなども作っています。
―海外のお客さんにとって侍の歴史はとても魅力的に映るのでは?
実は映画『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーは、、伊達政宗公をモチーフにしているそうです。
映画ができる前に仙台市の博物館がジョージ・ルーカス監督のチームに政宗公の甲冑の資料を一式写真で送ったそうなんですが、そこからインスパイアされて生まれたのがダース・ベイダーだと聞いています。
伊達家の甲冑は全て黒ですし、うちもボトルを全部黒にしています。海外でダース・ベイダーが実はうちのお殿様をモデルにしていると話すと、とても盛り上がりますね。
旨味がペアリングの鍵
―御社のお酒をどんな料理と共に味わってほしいと思っていらっしゃいますか?
お酒は昔から基本的に純米で、お米のおいしさは旨味です。旨味は日本料理におけるキーワードですが、他の料理にだって存在するものです。
例えば香港や台湾では、中華料理と日本酒をペアリングしています。マレーシアではインド料理と日本酒を合わせてみたいという声もいただいていますし、うちの古い蔵をリノベーションして今年開店したレストラン「Shozan」ではフレンチに日本酒を合わせて提供しています。
どの料理にも旨味はあるわけなので、意外に日本酒に合う料理って多いんです。
レストランに食事をしに行くのは、別にお腹いっぱいになるためだけではなくて驚きや楽しみ、新体験や発見を得るためという意味もあると思います。だからこそ、お酒がお客様の食の時間をより豊かなものにする一助になればと思っています。
トロントでは高級日本食レストランに卸しているだけですが、これからカナダも高級酒市場になってくると思っているので、もう少し現地のみなさんの食のシーンに入り込めるよう他の料理とペアリングできたらいいですね。
―日本やトロントにいる読者にメッセージをお願いします。
日本酒はまさに日本文化なので海外のご友人に日本酒の魅力を伝えてもらえたら嬉しいですが、単にお酒だけ出すよりも、おいしいお食事と一緒に日本酒を飲む機会を設けてみてください。おいしいお酒がおいしい料理と一緒だとよりおいしさを体感していただけると思います。
【プロフィール】
伊澤平蔵(いさわ・へいぞう)
1983年 東北学院大学経済学部卒
1986年 アメリカ合衆国 国際大学大学院経営学科を卒業
1987年 勝山企業株式会社入社 専務取締役
2000年 勝山企業株式会社 代表取締役社長に就任
2002年 勝山酒造12代目蔵元に就任
2018年 仙台伊澤家 勝山酒造 株式会社 代表取締役社長に就任
2022年 宮城県酒造組合 会長に就任