睦び月|金継ぎ開拓民のお茶休憩
新年あけましておめでとうございます。一月の異名は「睦月」といい、その由来はお正月に親族や友人たちが集まり、仲睦まじく過ごす「睦び月」なのだそうですね。カナダに住んでいると、慌ただしい暮れのあと、旧年に区切りをつけて皆で新年を迎えるあの高揚感が少し懐かしく思えます。
さて、金継ぎは単に破片と破片を繋ぐだけでなく、人と人を繋ぎ、さらに親交を深めるものでもあると感じています。
器には、作り手、売り手、持ち主の思いが重なり、古い器には更に先祖の思いや歴史、文化に込められた思いが重なり、それらが次世代へ託されてゆくことになります。金継ぎに関わる人々は、人、物とご縁をとても大切にされており、そういった心の在り方が、丁寧な人付き合いの広がりや深まりとなって現れるのかもしれません。
ある日、友人が割れてしまった湯呑みを金継ぎ教室に寄付してくれました。その湯呑みを練習台として選んだ生徒さんは、その作り手を調べて「夕立窯」に辿り着き、さらに新しい器を注文してトロントに取り寄せました。彼は度々、その湯呑みの元の持ち主や窯の所在地、窯の名前の意味などを他の生徒さんに紹介していました。湯呑みの金継ぎを終えた後も、取り寄せた器が入っていた桐箱に金継ぎ道具を入れているため、「素敵な箱ですね」と言われるたびに夕立窯について話題を広げています。
このように、当アトリエ「Kintsugica」は金継ぎを学ぶだけの場所ではなく、人、器、日本文化とのご縁が生まれ、それが深まってゆく良いコミュニティーとなっています。
常々、当アトリエは祖父母の家のようでありたいと考えてきました。田舎の祖父母の家へ行くと戸が開け放しになっていて、伝統工芸品がそこかしこにあり、昔ながらの風習に巻き込まれます。全てを理解していなくても日本文化や伝統工芸に自然と触れられ、その周辺領域を伺い知ることもできる、こぢんまりとしたコミュニティーの中心として理想的なスタイルなのです。
季節の掛け軸や水墨画が掛けられ、お香が漂い、お茶休憩やパーティでは和の器や漆器を使うので、現時点である程度環境を整えることはできています。
本年は更に、日本の季節のイベントやお茶や麹などのワークショップを開くことで、興味の探検の起点を提供し、カナダにいながらにして日本文化に染まれるよう少しずつ準備を進めています。
来年の今頃は、「睦び月」のようなアトリエになっていますように。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
https://introjapan.ca/inperson-classes/