伝統の道を拓く ②|金継ぎ開拓民のお茶休憩
漆芸全般に言えることですが、金継ぎの作品をひとつ仕上げるには少なくとも1ヶ月かかり、その作業風景は決して派手なものではありません。仮にトータルで20時間の作業があったとして、劇的な変化が訪れるのは破片を接着する瞬間と、最後に金粉を蒔くときだけ。それらもほんの10分ほどで終わってしまいます。つまり、作業の様子を見守っていても、基本的にわくわくするような出来事はほとんど起こらないのです。
それでも私は焦ることなく、毎日淡々とインスタグラムのライブ配信を立ち上げ、作業を行っていました。誰かが視聴を始めると、金継ぎや素材について説明し、今取り組んでいる工程について話します。誰かを楽しませるためのライブではなく、うっかり私のライブ画面を開いてしまった人に少しでも金継ぎのことを伝えられればいい。そんな気持ちで続けていました。
最初の頃はすぐに退出する人がほとんどでしたが、次第に金継ぎに興味を持って質問をしてくれる人が増え、雑談を交えながら長く滞在する人が目立つようになりました。そして気づけば、私の金継ぎ作業ライブは、ロックダウン下で行き場を失った人々のたまり場になっていました。
作業画面をじっと見守りながら会話を楽しむ人もいれば、作業音や私の声をBGMに仕事をしたり、編み物をしたり、本を読む人もいました。まるでバーチャルなコワーキングスペースのような空間が生まれ、視聴者同士の交流も広がっていきました。金継ぎを広めようと思って始めたことが、気がつけば人が繋がり、憩う場になっていたのです。試行錯誤の中で得たこの経験は、今の活動方針のひとつにもなっています。
今でも、「あのライブを見ていました」と声をかけていただくことがあります。見知らぬ国の、小さな部屋で、ひとりぼっちで続けていたことが、確かに誰かと繋がっていたのだと実感すると、とても嬉しくなります。そして、「よくサバイブしたな」と、あの頃の自分を少し褒めてあげたくもなるのです。
さて、有難いことに、このライブを通じて私を知ってくださった方々、特にMomo Teaさんから多くの方にご紹介いただき、ご縁がさらに広がりました。トロントやその周辺で日本文化に関わる方々とも交流が増え、そこで明らかになったのは、どうやら私はカナダ東部で唯一の金継ぎ師らしいということでした。








