【新連載】家庭医(かかりつけ医)|カナダと日本の医療制度の違い
初めまして。トロントセントマイケル病院の医師、ボビーヤナガワと川口保彦です。今回はカナダと日本の医療制度の違いを紹介しようと思います。
家庭医(かかりつけ医)
カナダにお住まいの皆さんはご存知と思いますが、病気になった時の最初の窓口は「Family Doctor」と呼ばれる家庭医になります。一般疾患全般を総合的に扱いますが、専門的な診療が必要になる場合は基本的に専門医に紹介をします。都市部から離れた地域では、自分の患者のお産のサポートから手術の介助までかなり幅広く手がける家庭医までいるようです。
専門医へ受診するためには基本的に家庭医からの紹介が必要になります。例えば、心臓の問題を抱えている様であれば、家庭医から循環器科(Cardiology)に紹介され超音波(エコー)検査など専門的な診療に進むことになります。
トロントでは家庭医が不足しており、オンタリオ州のホームページ(https://www.
ontario.ca/page/find-family-doctor-or-nurse-practitioner)からクリニックを検索もできますが、新規受付をしているところも限られ、選定までに非常に時間を要することもあり、車で30分かかる場所まで通院することも珍しくないようです。
これを補うべく、現在は診療看護師(Nurse Practitioner、専門的トレーニングを受けた看護師)が開設するクリニックもあり、どちらも同様の機能を果たしています。さらに、Walk-in Clinicといい、かかりつけではないものの飛び込みで診療を受け付けてくれるところでまかなう人も多いようです。
一方、日本も「かかりつけ医」と言い、同様の役割を果たす開業医がいますが、少し位置付けが異なる印象です。日本では、一昔前は「内科・小児科」などと標榜し、大人から子供まで風邪からちょっとした怪我や高血圧・糖尿病の管理まで何でも診てくれる開業医の先生が一般的でした。現在は少し傾向が変わり、患者の専門医指向が強いこともあり、自分の専門診療として循環器(心臓)、消化器(胃腸・肝臓膵臓)、呼吸器(肺)などを一通り終えた後に開業し、風邪など一般疾患の対応もしつつ専門診療も手掛けるクリニックが広く見受けられます。
持病が多岐に渡らなければ一箇所の通院で済むという意味では日本の方が融通がきく印象でしょうか。回を改めて説明しますが、これはおそらく我々医師のトレーニング制度の違いからくるものだと思われます。興味深いことに、日本では「家庭医」という専門性を認める傾向にあり、トレーニングプログラムが立ち上がり、近年では家庭医療の専門医資格が出来つつあるようです。